第23回  ☆Q&Aお悩み相談箱 これからの時代の教師像②「技能差を吸収するグループ学習のコツ:運動を苦手としている生徒を、活動の中にスムーズに入れるにはどうしたらいいですか?」

先月から始まりましたシリーズ「これからの時代の教師像」、今月は第2回となります。技能差を吸収するグループ学習のコツについてお届けします。小学校の先生に、ご寄稿頂きました。

 

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体育の授業が「好き」、または「大好き」という児童生徒が多い一方で、どの学級・学年にも「体育は苦手」「嫌い」と感じている児童生徒は必ずいるものです。体育を専門とする教師としては、そういった子どもたちをいかに楽しく学習に参加させることができるかが腕の見せ所だと思います。「運動は苦手」「体育の授業は嫌い」な児童生徒も、「今日の授業おもしろそうだな。」「やってみようかな。」と思えるようにするためにはどうしたらよいか、さらに、運動を楽しむことができる技能を身に付け、活動にスムーズに入ることができるようにするにはどうしたらよいかについて考えてみました。

 

①グルーピング:一人一人の実態把握と人間関係を考慮しよう

 体育の学習だけではなく、どの教科もまずは苦手意識をもつ児童生徒の実態把握が必要です。特に、体育の学習は、個人差が出やすい教科であるため、「できる」「できない」が明確に現れやすいものです。それが、子どもたちが運動をネガティブに捉えてしまう要因ではないかと思います。しかし、なぜ「苦手」で「嫌い」なのか、その理由は一人一人違うはずです。例えば、ハードル走では「一定のリズムでハードルを走り越すことができないから。」とリズムを理由に挙げる児童もいれば、「ハードルに当たるのが怖い。」「転んだことがある。」と恐怖心から苦手意識をもつ児童もいます。跳び箱運動でも同じです。台上前転が苦手な理由の多くは、「恐怖心」だと思いがちですが、「昨年、何回やっても台上で進路が曲がってしまうからいつになっても完成できなかった。」とか「そもそもマットの上で前転ができない。」といったケースもあります。まずは、一人一人の苦手意識やその理由を…(会員限定)。

 実態把握の仕方については、領域間で多少違いますが…(会員限定)。

 さらに、前述のとおり、体育学習は個人差が現れやすい教科であるため、運動が苦手な児童にとってはグループで学習することに抵抗を感じている児童は少なくありません。グルーピングは、技能差にかかわらず…(会員限定)。どんなに事前に考えてもどうしても負け込んでしまうチームが出てきてしまうこともありますが、児童が主体となって考えたグループ編成では、結果を前向きに捉えられることの方が多いように感じます。体育学習を学級経営に生かす、または、日頃の学級経営を体育学習に生かすことができれば、運動の「できる」「できない」だけにスポットを当てた思考は減っていくのではないかと思っています。

 

②スモールステップの場づくり:主運動につながる準備運動としての場・誰もができる場を工夫しよう

 どんなに教師が実態を把握して、グルーピングを工夫しても、学習の中で運動を苦手とする児童自身が満足感と達成感を味わうことができなければ意味がありません。わたしは、学習の始めに行う「主運動につながる準備運動」を充実させることが「今日の授業はおもしろうだな。」「自分にもできそうだな。」と運動を苦手とする児童をスムーズに活動に参加させるコツではないかと考えています。これも小学校では、どの教科にも共通していることだと思います。導入が命です。ただし、体育の学習なので、楽しいだけではいけません。主運動につながるような技能を身に付けさせ、それを高めつつ、運動量も確保できるような準備運動ができる場を考えていきます。学習指導要領解説の「運動(遊び)が苦手な児童への配慮の例」」や「運動(遊び)に意欲的でない児童への配慮の例」には、領域ごとの配慮の例が多く掲載されているのでそれを参照しています。

例えば、ベースボール型の学習でティーボールを行うときは…(会員限定)。「捕る」技能もまずは一人から始め、ペア、3人組、グループと人数を徐々に増やしていくことで、友達同士の教え合いなどの関わりが生まれます。その他にも、チーム対抗のベースランニングリレーや…(会員限定)。学習を重ねるごとにチームでの課題も見えてくるので、学習の中盤から後半は、主運動につながる運動をチームリーダーに考案してもらうこともあります。主運動の中でも、やさしい場から徐々に難易度を上げていくようなスモールステップの場づくりを行うようにしています。何より大切なのは、教師や友達の…(会員限定)

それぞれの領域の学習が終わった時に、運動の苦手な児童が「できるようになったかも…。」と、自分の成長が実感できたり、少しでも目指す自分の姿に近づいていることに気付くことができたりしたらうれしいです。そして、どの子も「ああ、今日の体育楽しかった!」と感じることができるような授業を今後も考えていきたいと思います。

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いかがでしたか?目の前の児童をよく観察して、下位教材や場を豊富に用意されている先生の授業風景が目に見えるようでした。来月は、シリーズ第3回「学級経営のコツ」について取り上げたいと思います。どうぞお愉しみに。

 

第23回担当:N.K.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「雲の向こうは、いつも青空。」There is always light behind the clouds.

(ルイーザ・メイ・オルコット/1832-1888、1868年に書かれた『若草物語』が代表作のアメリカの小説家)

☆天気は自分の力では変えられないですよね。厚い雲が覆っていても、その先には青空が広がっている、そんな様子を想像すると不思議と希望が沸いてきます。状況は必ず良くなる、凹んだときはそう思って、空を見上げるようにしています(A.N.)☆

第22回 ☆Q&Aお悩み相談箱 これからの時代の教師像①「頑張る心の育て方:苦手意識を持ちやってみようと言う気持ちが弱い子どもが楽しいと思える手立てはありますか?(器械運動編)」

今月から新シリーズ「これからの時代の教師像(全4回)」が始まりました。その記念として、皆様に全文をお届けします。

教師が教え込んでいた時代から変化し、令和の学校教育では子ども主体の学習を「支える」教師像が求められています。この「支える」教師の手立てが豊富であればあるほど、より多くの子どもたちが学びの楽しさを感じられるようになるのではないでしょうか。中には、湧き出る情熱を元に自ら学びを切り拓いていく子どももいるでしょう。しかし、その他多くの子どもたちにとっては、「頑張る心」にスイッチを入れる手立て(教師の手助け)が必要です。今回は、苦手意識が強く身体感覚に課題がある子どもたちに対するアイディアを主にご紹介します。

 

1 子どもなりの試行錯誤を引き出す

「頑張る心」にスイッチが入らないのには原因があります。その運動が苦手、課題が難しすぎる等々、表情が曇る子どもの言動から原因が透けて見えてくることがあります。この、運動が苦手という原因にも様々ありますが、やり方がわからない、身体がうまく動かせない子どもを例に考えてみたいと思います。逆立ちを例に挙げましょう。目をかいたカードを子どもの両手の間(両手を三角形の底辺として見たときの頂点)において、「逆立ちをする時は、はい、ここを見ましょう」と、ついつい合理的なやり方を直接的に教えたくなりますよね…(筆者も過去にやっていた一人)。困っていたら助けてあげたくなるのが教師の常。よかれと思って(子どもたちがわかりやすい、やりやすいだろうと思って)教具を作り用いているのですが、このように一律に「できる」という正解にまっすぐに向かわせるやり方だと子どもたちは試行錯誤をやめてしまいます。そして、暗黙的に「それができないとだめ」となり、結果的にやる気を削いでしまうことになるのです。ここでは、その子どもなりの身体感覚を耕すひと工夫が必要です。

① 腰があがっている子ども→顎を上げたり下げたりその角度を様々工夫させます。すると、手から足先までが一本の線のようにピンとなる「自分の身体が心地よい顎の位置」が見つかると思います(体格や身体の重心が様々なので、この時の目の位置も実に様々なのです)。

② 腰が十分にあがってこない腕支持が苦手な子ども→友達に足や腰を支えてもらいながら顎の位置を試行錯誤することは可能です。

③ そもそも腰があがるなんてとんでもないという、補助してもらう以前の子ども→自分でマットの上に両手・両足をつけて「くの字」になって(ヨガのダウンドッグ)、顎の高さを工夫させます。すると顎を入れると背中が丸くなり顎を上げると背中がピンとする身体感覚を得ることができるでしょう。

これらのように、その子なりのチャレンジ課題を用意すると試行錯誤が生まれ、「できる」に向かう運動の面白さを体感できるのではないでしょうか。

 

2 かかわり方(かける言葉とタイミング)を見極める

運動学では、運動ができるようになるまでに「原志向位相→探索位相→偶発位相→形態化位相→自在位相」といったプロセスをたどるとされています。全て漢字が並ぶと難しそうに見えますが、平たく言うと、初めての運動に出会い面白そう!やってみたい!と思う→やってみるけれどうまくできない…→なんでできないんだ!?と繰り返し試行錯誤→あるとき偶然ふっとできるようになる→二回・三回と再現性が高くなる→いつやっても同じようにできるようになる、こんな感じです。

授業では、いろんな子どもたちが別々の位相の中にいます。ですので、目の前の子どもがいまどの位相にいるのか見極め、適宜、的確な言葉をかけてあげることが求められます。

① 原志向位相から探索位相にいる子ども→うまくできずにもがいています。教師としては、こういう子どもを見ると放っておけずついつい即座に声をかけたくなるのですが…ストップ!実は、まさに自分の四肢や感覚を頼りに試行錯誤しているまっただ中なのです。そんな子どもに対して、「もっと足を高くしてごらん、腕はもっと遠く、目線は!」と矢継ぎ早に声をかけたらどうでしょう。ただでさえ身体も頭も混乱しているのに、外部から教師の言葉が入ってきたら大混乱です。少し見守ってあげて、どこに苦戦しているのか探してみましょう。そして、疲れが出てきたりにっちもさっちもいかなくなり困惑の色が隠せなくなってきたりしたら、「どこを見たらいいかな?」等と身体知を耕す言葉(発問)をかけてあげたいです。

② 偶発位相にいる子ども→あれ!?できちゃった!状態なので、「なぜできたのか」がまだ不明な状態です。ですので、「どのようにしたらその技ができたの?」「腕は?視線は?腰は?」などを具体的にできた時の感覚を振り返らせ着目させるようにすると、思考力が高まります。

③ 自在位相にいる子ども→技が完成形に到達しています。ここにいる子どもたちには「それを友達に教えるために、どこを見たら?どこに力を入れたらいいと思う?友達の気持ちになって技能ポイントや言葉を探してみて」など、ミニチュア先生を育成する手立てを講じると良いでしょう。

 

教え込まれて育った世代(筆者もその世代)が多い教育現場では、支える教育へのパラダイムシフトに苦戦していることもあるようです。ですが、時代は変われど、子どもたちのために豊かな学びを提供する、という教師の使命は変わりません。子どもたちの表情を見ながら、活きたやりとりを楽しみつつ、その子どもにとって相応しい手立てを試しつつ…。失敗をも力に変えていく力量がこれからの教育現場には益々必要になるのかもしれません。次回は、シリーズ第2回「技能差に着目したグループ学習」について取り上げます。どうぞお楽しみに。

 

第22回担当:A.N.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「何事も、成し遂げるまではいつも不可能に見える」

It always seems impossible until it’s done.

(ネルソン・マンデラ/1918-2013、南アフリカ共和国の政治家、弁護士。黒人解放運動の象徴的な指導者)

☆子どもたちととことん付き合う学校現場では、悔しいことやふがいないことが沢山押し寄せます。でも、うまくいかないことだらけと思っていても、ほんの一つうまくいったことが心の中に温かく残り続けるのが教育という営み。それがまた明日への活力につながるのです。さあ、また明日も頑張るか!(A.N.)☆

第21回  ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ⑥「体育授業におけるICT活用の具体例を教えて下さい〜中学校編〜」

今月はシリーズ最終回として体育科のICT活用について取り上げます。昭和63年の調査で全国の各学校に平均約2.5台のPCしかなかった時代から、児童・生徒一人一台のタブレットを持つ令和の時代に変わりました。当時も今も、時間が過ぎるスピードは同じはずなのですが、近年のデジタルテクノロジーの進化とそのスピード感はもう追いついていくのがやっとです。文部科学省からは、2024年度以降にデジタル教科書を主軸にした学校でのICT教育を本格的に導入する方向性も示されました。先んじて、国語、英語、社会などが続々と公表されていますが、発展途上の体育科も頑張って追随したいところです。今回は、中学校の体育授業でデジタルツールをどのように活用するのか、実際に授業活用されている先生にお話を伺いました。

 

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コロナ禍の約3年間で、教育現場の考え方が大きく変容したように感じます。学校ではデジタル環境が急ピッチで整備され、ICT利活用の流れが進んでいます。この間、用具を媒介したり直接的に協働したりする教科特性を持つ体育科では実践上の難しさも感じました。しかし他方で、体育科におけるICTの可能性や利便性が大きく広がったようにも思います。今回は、ICT活用の考え方と方法についてご紹介します。

そもそも、なぜ体育でICTを活用するのか。それは、誰に対しても運動やスポーツをより「わかりやすくする」ため。そして学びの根源となる「思考を深める」ためだと考えます。我々教員が陥りやすい失敗は、「ICTを活用して授業を考えなくてはならない」という呪縛のような思考になってしまうことです。GIGAスクール構想なども提示され、ICTをいかに使いこなして授業作りをするかという力を求められる昨今です。しかし、いくらタブレットを見ていても足が速くなる訳はありませんし、急に筋力が高まる訳でもありません。体育分野においてICTは、生徒が知識・技能を習得し、思考を深めるための補助教材であり、ICTを活用することで生徒の運動量や実践の機会が減らされることがないように注意しなければなりません。ただでさえ運動経験が少なく、技能の習得に時間のかかる生徒が多く見受けられます。自分がやるよりも見ている方が楽しいと感じる子も増えているように感じます。運動には様々な楽しみ方がありますが、小中学生の体育では実際に運動することが最も大切な時間であることを見失ってはいけないと思います。

 

〈ICT活用法〉

① 見本の提示

たとえばマット運動・ハードリングのフォームなど見本となる映像を生徒のタブレットに一斉配信をします。動きを局面ごとに解説することで理解が深まり、生徒に良いイメージ(合理的な運動の全体像)を持たせることができます。また、マット運動などはいろいろな技を生徒自身が検索できるようにしておくことで…(会員限定)。

 

② 運動動作の撮影

動画機能を使って、運動の様子を撮影することで自分の課題を見つけることができます。見本の動きと自分の動きを比較することで課題を見つけやすくなります。そして、授業の度に運動の様子を記録しておくことで、前時の自分と本時の自分の動きを比べて上達を実感し、自分の科学的に分析することにも繋がります。この見本の動画を、正しいアングルで収録しておくことも重要です。これにより、生徒達も正しいアングルで自然に撮るようになります。見本を用意せずに自由に撮らせると…(会員限定)。

 

③ 練習方法の提示

球技のチーム練習などの際には、チームの課題に沿った練習を考えさせたいところです。一斉指導で一律に練習方法を紹介するとどうしても時間がかかってしまい、各チームにあった練習を網羅できないことがあります。そのような時に課題別の練習方法が検索できるように、様々なパターンの動画を挙げておけば、生徒たちが主体的に課題に取り組めるようになります。しかし、選択肢があまりにも多いと…(会員限定)。

 

④ 学習カードのデジタル化

日々の課題や反省を記入する学習カードをデジタル化し、各自のタブレットから提出できるように設定します。紙のカードだと、提出してしまうと教師の手元に、返してしまうと生徒の手元に、とカードを共有することは困難です。しかしデジタルであれば…(会員限定)。

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いかがでしたか?タブレットやタブレット型PCは、パッと出して記録でき、動画を進めたり戻したり、友達と見せ合ったり等、指一本で自由に操作・共有できる手軽さがあります。外の実技では、砂やほこり、日光の明るさによるタブレット画面の見にくさなど、確かに障壁は大きいですが、体育学習の可能性を大きく広げる教育ツールであることは確かではないでしょうか。ただ…私は、対話する際に仲間の視線がタブレットに集中するのが心配どころ。確認をしたら、互いの目を見て意見を交換する、手と手でハイタッチをする等々、生きた身体が感じ取れる身体知を育むことを忘れずに賢く活用して欲しいと願っています。

次回から新シリーズ「これからの時代の教師像」が始まります。最初は、体育における頑張る心の育て方について取り上げます。どうぞお楽しみに。

 

第21回担当:A.Y.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「「失敗したら、どうしよう?」と考える前に自分に自信を持つことから始めてみよう。失敗は失敗で得られるものがあるから、悪いことではない。むしろ頻繁に失敗した方が得られるものが多いのだ。」

(ラリー・ペイジ/1973-、アメリカ出身のGoogle共同創業者)

☆世界展開するGoogleの創業者も、失敗を繰り返す中で大成したのですね。9月は新しいことを始めるのにもいい季節。失敗を恐れずに、何事にも前向きにチャレンジしてみたいものです。(A.N.)☆

第20回  ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ⑤「球技等のチーム編成のアイデアを教えてください。〜学年別の手立て・小学校編〜」

失敗から学ぶシリーズも終盤(来月でシリーズ最終)となってまいりました。今月の第5回は、「球技等におけるチーム編成の手立て」について取り上げます。球技等ではチーム編成が要です。ただ、そのとき最善だと思った編成をしても…、不思議なことに子供たちの間でchemistry(化学反応)が起こり、良くも悪くも予想外の結果になるものです。今回は、小学校の先生にご寄稿頂きました。子供たちの学年別“あるある”とそれに対応する具体的な手立てが満載で、中高生にも大いに参考になると思います。皆さんが日々関わられている児童・生徒達をイメージして、読み進めて頂ければ幸いです。

 

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 体育学習では、グループ活動を通して、作戦を話し合ったり、ゲームの勝利に向かって助け合ったりしながら学習を深めていきます。「チーム編成」は、ゲームを楽しむための大事な手立てになります。種目や学級の人数、用具の数などに応じて、4~6人程度で編成できるとよいと思います。では、これらについて、学年別に考えて行きたいと思います。

 

1 低学年のチーム編成

この学齢は、運動経験や体力、技能の差などがまだ少ないので、生活班(日常生活で関わりのある班)で行うこともあります。ここには「日常的に関わりがあることで安心して活動できる良さ」があります。過去の実践で、生活班で学習を進めた際、子供同士が分かり合えるようになっていった様子が見られました。ただ、1年生はまだゲーム経験が少ない児童も多いため、こういった生活班の活動でも、個の動きを楽しむことを重視しました。個が見えるため、実態を把握しやすくなり、活動をスムーズに行うことができました。

2年生の後半になると、運動量が増え、ボールゲームや鬼遊びの中での友達との関わりが多くなっていきます。よって、体育学習におけるボール操作や技能のバランスなどを考慮しながらグループを作るようにしていきます。グループで「一致団結」することが概念として理解でき、それに向かって取り組むこともできるようになるこの時期は…(会員限定)。

 

2 中学年のチーム編成

どの教科においてもできることが少しずつ増える中学年は、「自分達で選ぶこと」を意識してチーム編成するように心がけています。4年生を担任した実践では、リーダーとしてチームをまとめる力がある児童、教えるのが上手な児童、技能面などのバランスを考えて男女別のグループをまず教師が作りました。そしてその後、互いのグループを子供たちが選んで男女混合グループを作っていきました。その際に教師が介入しないと、人間関係や技能でメンバーが選ばれる傾向が強くなり、結果的にグループ全体の技能バランスが悪くなってしまう…なんていうことも。そのため、グループを組んだら…(会員限定)。

 

3 高学年のチーム編成

高学年で、自由にチーム編成を行わせると…。好きな子供同士が集まったり、自分の入りたいグループには入れなくて悲しい気持ちになる子供が出てきたりします。ただ、だからといって教師がグループのメンバーをすべて決めてしまうと主体性が育たず、さらにそのグループがうまくいかないと「あのチームは最初から強い。」などの不満につながり、学習意欲の低下につながることもあります。

6年生に上がったばかりで、子供たちの実態もよくわからずにリレーのチームを組んだ時のことです。当初、50m走のタイムで走力が均等になるように分けたのですが、カーブを走るのが上手な児童や、友達と競うことで速く走れる児童、バトンパスがスムーズにできる児童など、やってみると子供たちそれぞれの特徴が見えてきました。走力だけでは分からない偏りが出て、いつもダントツで負けてしまうチームが出てきました。子供たちから「負けてばかりでつまらない。勝負したい!」と言われました。次の時間は、ルールを工夫し、ワープコースを作り、チームで1人だけワープできるようにしてみましたが、他のチームと勝負できるほど差は縮まりませんでした。

これらは単元の半分が終わったあたりで見られましたが、後半は…(会員限定)。

こういった経験から、(学級の実態にもよりますが)子供たちにグループを決めさせることにしています。まず、最初に「誰もが気持ちよく運動できるチームを作るための約束」を必ず伝えます。

① 運動が得意な子供が集中しないようにする

② 教えるのが得意な人を入れる

③ 運動が得意な人も苦手な人も楽しめるチームにする

そして具体的に、子供たちが、男子だけのチーム、女子だけのチームを同じ数ずつ作ります。そして、女子のチームに男子のチームが力のバランスを考えて入ります。最後に…(会員限定)。

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いかがでしたか。子供たちに寄り添いながら少しだけレールを引いてあげる先生の日頃の様子が垣間見えたように思います。学校の「体育」は、こういった温かみのある手立てが欠かせません。球技だけでなく、日頃の授業から子供たちに浸透させていきたいですね。来月のシリーズ最終回は、体育科のICTについて取り上げる予定です。どうぞお楽しみに。

 

第20回担当:M.O.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「一人一人が自分の仕事をきちっとこなすこと。この個人プレーの連携が、真のチームプレーなのだ。」(松尾 雄治/ 1954- 東京都出身の元ラグビーユニオン選手、スポーツキャスター)

☆集団に埋もれるのではなく、個が引き立つ集団。一人一人が自分の責任を背負う意識が大切ですね。(A.N.) ☆

 

第19回  ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ④「生徒が育つ部活のあり方について教えてください〜主体性を伸ばす運営のあり方〜」

4月からお届けしている失敗から学ぶシリーズ。第4回の今月は「部活動指導のあり方」について取り上げます(先月の予告から変更)。令和5〜7年度末が「部活動地域移行」の改革集中期間とされており、スポーツ庁から委託された全国の拠点校で目下検証実践が進んでいるところです。こういった動向も気になるところではありますが…、今回は学校の中で生徒たちとしっかりと向き合って主体性を育む部活動を目指していらっしゃる高等学校の先生をご紹介します。バレーボール部の顧問をされており、なんとこのコラムのために生徒たちへの聴き取りもしてくださいました。過去の失敗を振り返り、方向性を模索し続けているご本人の言葉に合わせて、生徒たちからの生の声もお届けしたいと思います。

 

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高等学校の運動部活動運営について、私は大きく以下の二つが大切だと思っています。

①主体的に取り組む生徒の育成

②考えさせて伸ばす指導

では、これらについて、詳しく考えて行きたいと思います。

 

①主体的に取り組む生徒の育成

運動部活動の活動目的は、大会に出場し良い結果を出すことですが、その目的だけで部活動を運営していくことは厳しい状況です。「何を目的として活動し、どこを目標にするのか」これを選手にも理解させることが必要です。それによって得られるものが何なのかを選手に対して伝え続けることが、我々指導者の役割なのではないでしょうか。

運動部活動を通して身につけることができる力は、競技力だけではありません。先日引退した今年度の3年生に、「部活動を通して身につけた力」を聞くと、「コミュニケーション能力・自信・最後までやり抜く力・責任感・協調性」とさまざまな答えが返ってきました。また、「部活動を続けたことが自身の将来にどのように良い影響を及ぼすと思うか」と聞いたところ、全ての選手が「辛くても諦めずに続ける力が身についたので、今後辛いことがあっても諦めずにやり抜くことができると思う」といった趣旨の答えが返ってきました。さらに、「主体性を身につけることができたか」に対しては、「少ない人数でやるには工夫が必要であり、その中で自ら動くことや、自分の意見を積極的に相手に伝えることを意識的に行ったことで自主性を身につけることができた」と答えました。このことからも、他者の力を借りながら様々な人と対話し協力し合う場面が多ければ多いほど、自ら工夫する姿勢や粘り強さが身につき自主性が育つのではないかと考えます。

今年度の3年生は3名と少なく、単独でチームが組めない状況でした。しかし、関係者に声をかけ合同チームを組むなどして、諦めずに活動を続けました。最終成績は高校総体県ベスト32。共に駆け抜けてきた彼女たちの思いを知ることができて、顧問としての寄り添い方が見えてきたように思います。

 

②考えさせて伸ばす指導

失敗したことに対して、叱るのではなく、その失敗の原因は何か?同じ失敗を起こさないために何が必要なのか?それらのことを考えさせる環境づくりを、指導者が行うことが大切だと思います。

人間の行動には、意識があり、意図があります。私は「なぜその行動をとろうと思ったのか、自分自身の行動はどのような意図があって行われたのかを、自分自身に問う」ように…(会員専用、残り540字)。

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いかがでしたか?先生の目の前で、しっかりと考えている生徒たちの真剣な表情、そして活気のある部活動の様子が目に見えるようです。先生にただただ叱られる、そんな部活では、生徒たちの思考が停止してしまいます。自ら考え仲間のために行動に移す生徒達。温かな輪が繋がっていく…そんな部活動を目指したいものです。次回はシリーズ第5回(全6回)、体育授業における「グループ決め」についての手立てを考えて行きます。どうぞお楽しみに。

 

第19回担当:K.S.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「諦めない奴に誰も勝てっこない」(Babe Ruth/ 1895-1948 アメリカ合衆国・メリーランド州ボルチモア出身のプロ野球選手)

 

☆諦めずに取り組んでいくことで、いつか必ず突破口が見えてくると信じています。それを誰かが見ていて、助けてくれることも。これを実体験から学べるスポーツ(運動)は、やはり素敵です。(A.N.) ☆

 

第18回 ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ③「体験不足等が原因で創造性が低い子どもが多いように感じます。引き出す手立てはありますか?」

いよいよ第三回になりました「失敗から学ぶ」シリーズ。今月は、目に見えないものや体験したことがないものを想像したり創造することが難しいと感じる子どもが多い、という教育現場の声を取り上げその手立てについて考えてみます。

コロナ禍が続いたことにより、外出する機会も減少。子ども達の身体活動が減ったことも影響しているように思います。今回も校長先生にご執筆頂きました。表現運動の例ですが、みなさんの学校種にあてはめて、読み進めて頂ければと思います。

 

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1 導入編「みんなが安心、みんなが知っているものから」

  表現の学習の導入(ダンスウォーミングアップ)は、子供たちのやる気スイッチを入れる大事なところです。ですが、教師の肩に力が入り過ぎてしまわないように、指導者自身も子供たちと楽しみながら進めましょう。導入では心と体を十分に解放し、表現の学習の空間・雰囲気づくりをします。体育学習のいずれの単元も同様ですが、単元の目標はもちろんのこと、子供たちのこれまでの学習状況、単元を通して身に付けたい力、なりたい姿という子供の願いや思いを把握しておくことが大切です。これまでの学習経験や生活経験が異なる場合もあります。意欲や技能、思考面でも個人差があるかもしれません。そうした状況にある子供たちに、まずは、「自分でもできそう」「やってみたら意外と簡単」「あの動きでも大丈夫なんだ」という安心感をもたせたいです。

導入での雰囲気づくりは、次の学習活動へつながっていきます。では、導入はどんな活動からスタートするとよいでしょうか。

 

①みんなが知っている、どの子も無理なく、「できる」が積み重なる、易しい動きや活動から始めてみます。

②先生の動きを見てすぐ真似ができる動きを繰り返すことで、子供から子供へと動きは伝わっていきます。

③「動きがかわるところ見逃さないで!」と励まし、子供たちの息づかいを感じながら、簡単な動きを音楽にのって、次々と変化させていきます。

 

①〜③のプロセスで、「自分の体ってこんなに動くんだ」「首や背中、かかともみんな動くのって気持ちいい」「~さんの表情もすてきだね」と声をかけていくことで、表現の学習ならではの楽しさに触れさせていきましょう。単元の始めや表現の学習に慣れていない実態の場合は、ダンスウォーミングアップの時間を長めに設定し徐々にその時間を短くするとよいでしょう。ダンスウォーミングアップの中で、定型のものだけでなく、これまで先生・みんなと一緒の活動で増えてきた動きの財産を組み合わせる、つなげる活動を取り入れていくと次の思いつくままに踊る活動につながっていきます。

 

2 展開編「思いつくままに踊る楽しさを イメージから動きへ」

子供たちの心と体や学習の雰囲気がほぐれたところで、次に大切にしたいのは、題材について様々なイメージを思いつくままに踊る活動です。学習のねらいの確認をするときも、ほぐれた雰囲気を大切にさっと集合させて、本時の学習や自分の課題を確認するようにしましょう。思いつくままに踊る活動では、想像力が要に。友達とのかかわりあいを積極的にさせながら、イメージの世界に没入させ即興的に踊る楽しさを存分に味わわせていくとよいでしょう。この時、題材から想起されるイメージをもたせておくことが大切です。例えば…(以降は会員限定・残り570字)

 

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いかがでしたか?想像力と創造性を引き出すには、子ども達同士を豊かに交流させ「心ほぐし」「仲間ほぐし」「安心感」が大切なことがわかりました。朝顔の芽が出た!花火が大きくあがったよ!等々、日常のあちこちに創造性を育む材料があります。教師自身がそれに目を向けて、子ども達に気づかせることも大切かもしれません。来月は、「水泳指導」について取り上げる予定です。お楽しみに。

 

第18回担当:I.O.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「結果が出なかった時 そこからがスタート」(石川佳純/ 1993- 山口県出身の元女子卓球選手)

 

☆5月18日の引退会見で、記者からの質問「選手生活で大切にしてきたこと」に対して応えた言葉。石川さんは「『頑張って努力をした結果、いい成績が出る』ということばがありますが、なかなかそう思えないこともあって、頑張ってもなかなか結果が出なかった時、そこからがスタートなのかなと思ったこともありました。続けることの大切さ『何回でもチャレンジ』ということばに励まされましたし、大切なのはそこかなと思って活動してきました」と話していました。華やかなスポーツの裏には、きれい事だけでは語れない選手達の絶え間ない努力があります。未来を見ている彼女の瞳は透き通っていてとても印象的でした。(A.N.) ☆

 

第17回 ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ②「学級開きから一ヶ月が経ちました。これからの学級づくりはどうしたらいいですか?」

先月から始まった「失敗から学ぶ」シリーズ。第2回は、現職の小学校の先生にご寄稿頂きました。ドキドキの学級開きから早1か月、そろそろ子どもたちの実態も見えてくる頃です。どうすればより良い学級づくりができるでしょうか。以下に、ご紹介します。

 

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1 ぶれない指導と温かい指導の両輪を大切にする

まず、「先生が叱るとき」を知らせます。私の場合は、「友達をばかにするなどいじめにつながる行為をしたとき・危険なことをしたとき・きまりを守らないとき」です。だめと言ったことは、だめ。誰に対しても同じ対応や指導をすることで、信頼を生みます。学習規律・規範意識の確立という言葉に堅苦しさを感じる人もいるかもしれません。しかし、これらは、大事な土台だと思います。子どもたちをきちんとさせるためではなく、子ども一人一人が安心して生活したり、学習に参加したりするためのものであると考えます。ぶれない指導と同時に、温かい指導も大切にしています。一人一人の「言動」に着目してよさ見つけ、たくさん褒めます。みんなの前で褒めることもありますが、その子だけに、こそっと褒めることも多いです。内緒話のように。子どもは、自分を分かってくれると思うのではないでしょうか。

―以前、異動してすぐに6年生の担任になり、自分が思い描くようにいかず、ちょうど今頃、自信を失い、毎日、重い心でいたことがありました。しかし、自分を励まし、指導のスタンスを変えずにいたことで、子どもたちが徐々に変わっていきました。

 

2 子ども同士のかかわりの場を演出する

学校生活で一番長いのは、授業の時間。だから、授業では、ペアやグループ活動をたくさん取り入れます。少し離れたところでそれを見て、「このグループは、みんなの頭がよくくっついていたね。チームワークがいいね。」などと評価していきます。ときには、すべてのグループに「よく話し合っていたで賞」「質問が上手だったで賞」「とりかかりがはやかったで賞」など、そのグループの関わりのよさを「賞」として、伝えることもあります。一人一人の苦手なことをオープンにするということも心がけています。「苦手なこと=だめなこと」ではなく、「のびしろがあること」とします。この「のびしろ」を、みんなで共有し合います。「○さんは、お話を聞くことはとっても上手。でも、みんなの前で話すときは、緊張して声が小さくなっちゃうんだよね。それが、○年生が終わるまでにいちばん遠くの人によく聞こえる声でお話できたらいいね」などと。すると、その子が発言する前に「いちばん遠くの子に…」とこっそり応援する子・大きい声で話せたときに拍手をする子が出てきます。そういった態度をほめて、クラス全体に広げていきます。お互いがお互いの応援団のようになる。そうなったら、子どもたちにとって居心地のよいクラスになるのでしょうね。 

 

3 自律した集団に育てていく

いろいろなことに気付いてみんなに声掛けをしてくれるリーダー的存在の子がいます。自主的な学級組織にするためには…(会員限定)。

 

学級担任をしていると、うまくいかず、落ち込んだり、ときにはイライラしたりすることも少なくないと思います。自分の思い、子どもの実態、子どもの思いをもう1度、見つめ直してみてはどうでしょう。もしかしたら、そこにずれがあるのかもしれません。 しかし、「うまくいかない」ということは、マイナスのことばかりではありません。うまくいかなかった経験が、数年たって、自分の力になっていたと実感することがたくさんあるからです。

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いかがでしたか?一人一人の「のびしろ」を認め合う学級。とても素敵ですよね。そんな学級にいる子ども達は、自分の居場所を感じられるのではないでしょうか。来月は、「子供の創造性の育て方」について取り上げます。お楽しみに。

 

第17回担当:T.M.(文責:A.N.)

 

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「Failure teaches success.(失敗は成功のもと)」(エジソン/1847-1931 アメリカ合衆国の発明家)※出典は諸説在ります

 

☆失敗は、落ち込むけれど、自分を見つめなおすきっかけともなります。そして、落ち込むだけでなく、もう一度、作戦を考え、仕切り直すことで、よい方向へ進んでいけると考えます。(T.M.) ☆

 

第16回 ☆Q&Aお悩み相談箱 失敗から学ぶ①「どうすれば主体的な学習の見取ることができますか?〜学級開きのコツとノウハウ小学校中学年編〜」

今月から「失敗から学ぶ」シリーズが始まります。現職の小学校の先生に、ご寄稿頂きました。目前に迫る学級開き。本コラムが、先生方がイメージを膨らませるきっかけになりましたら幸いです。新学期記念号として、皆さんに全文をお届けします。

 

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心弾み、期待と不安で迎える新学期。どんな友達がいるのかな、うまく話せるかな、友達出来なかったらどうしよう…様々な思いをもつ子どもの心に寄り添いながら、担任は新しい学級をスタートさせなければなりません。長い間、マスクの中にしまっていた表情を表に出すことに、不安を感じている子どもも少なくはないはずです。子どもたちが楽しみながら運動に取り組み、認め合いながら活動を進めていく。新しい学級の始まり、体育の1時間目として、体ほぐしの運動(体つくり運動)はおすすめです。

 

・授業で取り入れる運動の精選と組み立て

体ほぐしの運動については多くの資料や映像があります。どれも楽しそうですぐにできそうなものばかりです。ただ、あれもこれもと欲張ると、伸び伸びと活動ができず失敗に…。まずは欲張らないで、1時間に3つ程度の誰にでもできそうな運動を選びます。以下例として挙げます。初めにやや活動的な運動(円形座でリズム打ちや体ジャンケンなど)、次にゆったりと静的な運動(2人組で交流できるストレッチなど)、最後にみんなで活動的な運動(まねっこダンスや伝承遊びなど)と進めていきます。用意するものは音楽。今はヘイ!とかOK!とか呼びかけるだけでぴったりな曲が流れてくるので便利ですね。アップテンポな曲とゆったりとした曲を用意しておくといいでしょう。 

 

・教師のリードと言葉かけ 

学級編成(クラス替え)をしてすぐですから、前学年の経験も差があります。鬼ごっこのようなやや活動的な運動を与えっぱなしにすると、子ども同士のいざこざが生まるなんてことも…。運動を与えっぱなしにせず、教師が中心になって動き子どもたちに真似させることから始めます。(わざと失敗したかのように音楽に乗り遅れ、リズムを崩して見せたりもしながら進め)乗りのよい子どもがいたらリーダーにしていきます。掛け声を出したり、手拍子を打ったりすると盛り上がります。ゆったりと静的な運動で2人組を作るときには、「同じクラスになったことのない人」や「今日まだおはようって言えてない人」とペアを組むのも新しい友達作りにつながるかもしれません。ペアを作れない子どもに「だれか誘ってくれるかな」と声をかけることも忘れずに。

 

・感じる時間の確保

運動の区切りに、自分の気持ちや体の変化を考える言葉かけや質問をします。これも多くの資料が出ています。教師がどんな考えも受け入れる姿勢を見せることで、よい雰囲気が生まれます。否定的な言葉が出たときには、始めが肝心と厳しく指導したくなる気持ちも生まれがちですが、学級開きでは抑えて、一旦認めながらも、次にどうしたら楽しく(気持ちよく)できるかアドバイスします。

 

・変化がわかる学習カード

学習カードの項目を欲張り、授業内に書ききれないなんてことありませんか。短時間で書きやすくわかりやすいものにしましょう。体の調子や心の変化に気付かせたい項目を作り(楽しさ、体の感じ、友達との交流や協力、安全他)、○に色塗りをした数で比べたりするのもわかりやすいです。自由記述をするときは、他教科でも使う「わたがしや(綿菓子屋) わかったこと たのしかったこと がんばったこと 知りたいこと やってみたいこと」について書くように声掛けをすると、見取りやすくなります。

 

今回は、「主体的な学習をどうやって見取るか」というテーマで、学級開きの活動をいくつか例示しました。学習指導要領では(2)態度、また評価においては「主体的に取り組む態度」にあたると考えます。技能面の見取りはわかりやすいですが、主体的な取り組みは見取りが難しいと考える方も多いと思います。特に技能の習得や向上をねらいとしない体ほぐしの運動では、主体的な学習の見取りは見取り(評価)の中で大きな部分を占めます。学年の始まりだからこそ、運動量を確保して、いろいろな動きにふれさせて!と、思いが溢れて自ら積極的に動き授業を行い、終わってみたらどの子も楽しかったと大喜び、教師は「進んで取り組む姿」をどう評価しようかと悩む…。体ほぐし運動を始めた頃の私の失敗談です。無理なく組み立てた授業の中で、子どもたちとの対話や反応を観察し、学習カードをチェックしていく、これらを重ねながら進んで取り組む姿を見取っていきましょう。一人の感じ方や動き方をみんなで受け入れられる学級集団がスタートするといいですね。

 

参考 引用文献:小学校指導要領解説体育

学校体育実技指導資料第7集「体つくり運動」 (改訂版)

小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック中学年教師用指導資料

 

第16回担当:M.K.(文責:A.N.)

 

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「夢を見るから、人生は輝く」(ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/1756−1791 オーストリアの作曲家・演奏家)

☆新学期は、新しいことを想い、始めるのに最適な時ですよね。夢を抱くと不思議とエネルギーもわいてくるものです。みなさんはどんな一年間にしますか。(A.N.) ☆

第15回 ☆Q&Aお悩み相談箱 体育科における評価④「 球技(ボール運動)において思考力・判断力・表現力を高めるための手立ては何ですか?」2023年3月1日

今月はシリーズ最終回の第4回として「球技(ボール運動)」の「思考力・判断力・表現力」の評価について、高校の保健体育科の先生に伺った内容をお届けします。コラムは、高校一年生の選択制、男女共修の授業をイメージしていただければと思いますが、小中学校の授業にも応用可能な内容となっています。以下、どうぞご参照下さい。

 

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クローズドスキル(個人技能)とオープンスキル(集団技能)が交錯し、刻々と戦況が変化する球技。この授業で生徒達の学びをどう評価するか、悩みはつきません。

今回は、授業のねらいを「攻防などの自己のチームの課題を発見し、合理的な解決に向けて運動の取り組み方を工夫するとともに、自己や仲間の考えたことを他者に伝えること」として、実践の一部をご紹介します。

 

(1)ゲーム中の評価規準

次々に状況が変わるゲームでは、「攻防やボール操作及びボールを持たないときの動きなどの思考・判断の改善(様子)を実際の生徒達の動き方を見ることで評価する」ように努めています。例えば、以下のような取り組みがあります。

①仲間と距離をとっているか(味方とくっつきすぎず、離れすぎず)

★評価のKey Point!⇒目の前のものだけでなく、視野をうまく使っているかを見取ります。

②次にボールがくる場所を予想し、自分がいるべき位置に移動しているか。

★評価のKey Point!⇒体の向きや手の動きを観察し、生徒の思考を想定する。

③仲間の動くべき位置を、指示しているか。

★評価のKey Point!⇒…(会員専用)

 

(2)合理的な解決に向けた運動の取り組み方

国政研の評価に関する方針にもあるように、間違っていることをひたすら頑張るのではなく、運動や技術・戦術の解決に向けて“理にかなっている(合理的な)”言動を見取るようにします。例えば、以下のような取り組みがあります。

①ミスした人、ポイントした人など仲間に具体的な声をかけているか

★評価のKey Point!⇒球技は「勝敗を競う種目特性」があるため、それに向けて何が良いか、またどうしたらより良いか声をかけている生徒を見取ります。

②運動が苦手な子も活躍できるような場を作っているか(パスを回す、シュートの機会を作るなど)

★評価のKey Point!⇒…(会員専用)

 

(3)自己や仲間の考えたことを伝え合う

戦術の理解と実践が関わる球技では、レベルの異なる生徒達が戦術を核にしてそれぞれの考え方(思考・判断)を伝え合う活動(表現)が重要です。例えば、以下のような取り組みがあります。

①時間を取るのは大変かもしれないが、チームで分担した役割に関する成果や改善すべきポイントについて、話合いの時間を作る。

★評価のKey Point!⇒勝ったか負けたかではなく、自分たちの役割が果たせたかどうかについて積極的に発言しているか、聴いているかを評価します。

②みなが楽しめるルールを考えて提案するのも良い。

★評価のKey Point!⇒…(会員専用)

 

 生徒達の思考・判断・表現の実態を捉えるためには、個人カードも有効でしょう。自分の役割が果たせたかどうか、実現可能な課題の設定や挑戦ができたか、みなが楽しめるようなルールや環境を作ることなどが記入できていると、思考力・判断力・表現力の高まりが評価できます。ただ、個人カードに書いていることと実が伴わない生徒がいる場合もあります。授業中の取り組みと個人カードを併せて、生徒達の頑張りを評価したいところです。

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いかがでしたか?「思考力・判断力・表現力」を評価するのには、教師の観察眼が肝要です。子供達の表情などにも注目しながら、彼らの取り組みを見取ってあげたいですね。次回は「学級の立ち上げと体育」をトピックにお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

 

第15回担当:S.T.(文責:A.N.)

 

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「The great gift of human beings is that we have the power of empathy. (人間が授かった大いなる才能、それは共感する力です)」

(メリル・ストリープ/1949〜 アメリカ合衆国の女優)

☆人と対面する機会が徐々に戻ってきました。嬉しいことや哀しいこと…その場にいるその人に共感する時、温かい時間を共有することができます。忙しい毎日の中でも、相手の言葉に耳を傾ける心の余裕を持ちたいです。(A.N.) ☆

 

第14回 ☆Q&Aお悩み相談箱 体育科における評価③「 陸上運動において思考力・判断力・表現力を高めるための手立ては何ですか?」2023年2月1日

昨年12月から評価に関連したコラムをシリーズでお届けしていますが、今月は第3回として「陸上運動」の「思考力・判断力・表現力」の評価につなげる学習の手立てについてお届けします。現在、小学校低学年を担任している現職の先生にお話を伺いました。具体的な資料を、併せて参照するとわかりやすいと思います。以下のリンク先から共有ファイルでご参照ください。

https://drive.google.com/file/d/1zBZeMZQOClBueyT3tq5ty1nb3TtGIaEv/view?usp=sharing

 

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2年生「跳の運動遊び」の実践をご紹介します。下線部が「思考力・判断力・表現力」を高めるための手立てで、「⇒児童」は実際に見られた子供達の様子です。

 

①学習過程の工夫(資料1)

〇学習の始めに主運動につながる動きを身に付け、活かせるように基本となる運動を行う。

〇今回の実践では、前半では、学習指導要領の内容に掲載されている(体育編P51~52)身に付けさせたい動きで十分に楽しめるような学習展開にし、後半では、グループで、前半で身に付けた動きが活用できるような遊び方や遊びの場を工夫する活動の学習展開にする。

⇒児童:どのような場ができたかは、②の方で詳細を記載

 

②学習の場の工夫(資料2)(資料3)

〇ストーリ-性をもたせ、遊びに夢中に取り組めるような環境作りをする。

今回は、「ぴょんぴょん島でジャンプパワーをゲットしよう」というストーリー性をもたせ、それぞれの場に「リズムよく連続でジャンプ」「遠くへジャンプ」「高くジャンプ」の3つの場を設定した。また、児童に親しみをもたせ、どんなジャンプをすればよいかをイメージしやすくするために…(会員限定)。

「リズムよく連続でジャンプ」→ウサギの森・・・(会員限定)

「遠くへジャンプ」→カンガルー川・・・(会員限定)

「高くジャンプ」→イルカ海・・・(会員限定)

⇒児童:「ウサギの森」では、用具の数を増やして、連続ジャンプがたくさんできるようにしたり、両端からじゃんけんリレーで楽しんだり、用具を組み合わせて、違ったリズムで跳んだりできるような場を作る様子が見られた。「カンガルー川」では、川の形を変えたり、川の間に島を入れたりして跳ぶ様子が見られた。また、跳び箱とマットの間に障害物を入れ、さらに前方へ跳ぼうとする様子も見られた。「イルカ海」では、ゴムの数を増やしたり、つるしてあるボールの大きさや高さを変えたりして楽しむ様子が見られた。

〇中学年や高学年においては、課題解決の場を準備し…(会員限定)で、自分のめあて・課題に合った場を選べているかで、見取りができるのかと思います。

 

③学習カードの工夫

〇学習を振り返ると同時に、活動しながら見つけた遊びのこつや、友達のよいところを簡単に書けるカードを…(会員限定)。

⇒児童:「踏み込みを強くすると高いジャンプや遠くへジャンプができる」「勢い(助走)をとめずにジャンプするといい」「リズムよく跳べると鋭いジャンプができる」など、跳ぶときのこつやポイントを学習カードに書く様子が見られた。「タッタッタッ、ピョーン」「トントン、ピョーン」など自分の跳び方に合わせたリズム言葉がたくさん出された。

 

④関わりをもたせるために、ペアやグループで活動させる。共有ボードの作成と活用。(資料4)

〇動きの行い方やポイント、アドバイスを互いに伝え合えるようペアやグループでの活動を行う。学習カードに書いたことを、共有できるように…(会員限定)。

⇒児童:ペアやグループで行うことで、友達の良いところを見つけて真似しようとしたり、一緒に跳んで比べたりして、自分のジャンプをより良くしていこうとする様子が見られた。また、うまく活動が進まないときに、ボードに書かれた、コツやポイントを確認し、活かそうとする様子も見られた。

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いかがでしたか?今月は、小学校の「思考力・判断力・表現力」を高める手立てについてご紹介いただきました。学校現場では「指導(学習内容)と評価の一体化」がさらに重要となってきています。「思考力・判断力・表現力」を評価するためには、その力を引き出す具体的な手立てが必要不可欠ですよね。次回は「ボール運動・球技」になります。どうぞお楽しみに。

 

第14回担当:A.S.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「成功は成し遂げた内容によって測られるのではない。その人が出くわした障害の大きさと、打ちのめされそうな困難に立ち向かって奮闘を続けた勇気によって測られるのである。」(チャールズ・リンドバーグ/1902-1974 アメリカ合衆国の飛行家)

☆「結果」ではなく「プロセス(過程で踏ん張った頑張り)」が大事。筆者が中学校教師だった時の運動会。担任をしていたクラスが、5組中4位になったことがありました。日頃尖った言葉を使う生徒達が、この日は互いのこれまでの頑張りを敬い涙しながら感謝を伝え合う終礼となり…彼らの成長に胸が熱くなったのを思い出します。「プロセス」は自他の心を耕し、たとえ将来逆境に出会っても自分を支える「自負の芽」を育ててくれると感じます。(A.N.)☆

第13回 ☆Q&Aお悩み相談箱 新春記念:体育科における評価②「 表現運動・ダンスの評価のポイントは何ですか?」2023年1月1日

定期便は昨年12月号から全4回のシリーズで「体育科の評価」について取り上げています。今月は「シリーズ②:表現運動・ダンスの評価」をテーマに、その考え方のポイントをお届けします。新春特別号は、会員・非会員の皆様全員に全文を配信させて頂きます。

 

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「表現運動・ダンスは評価が難しい」という声をよく聞きます。それは何故でしょうか。体育の他の運動領域と何が違うのでしょうか。

それは、「知識・技能」の学習目標の違いにあると考えます。学習指導要領を見ると、他領域では各種目特有の「基本的な技や動きができる、技能を身に付ける」ことが目標として示されています。したがって、一定の基本的な動きができるかどうかが評価の規準になります。

一方、表現運動・ダンスでは、「題材の特徴や表したいイメージを捉えて踊る(表現・創作ダンス)」「踊り方の特徴を捉えて踊る(フォークダンス)」「音楽のリズムを捉えて踊る(リズムダンス・現代的なリズムのダンス)」のように、何かを「捉える」ことが学習目標です。特に表現・創作ダンスやリズムダンス・現代的なリズムのダンスのような創作型のダンス学習における「捉える」対象は、児童・生徒の表したいイメージや多様な音楽のリズム・曲調であり、何を選ぶか、その特徴のどこをどのように捉え、どのように体の動きで表現するのかは児童・生徒ひとり一人の感性や意志に委ねられています。ですから、学習成果として現れる動き、技能の達成目標はひとり一人違います。この、それぞれ違う動きについてどのような規準で良し悪しを見分け、評価、フィードバックし、そして評定すればいいかが悩ましい、ということでしょう。

 

本稿では、表現運動・ダンスの「知識・技能」のうち、特に「技能評価」の方法について提案したいと思います。技能評価については、多様な表現に共通する具体的な技能目標を立て、児童・生徒と共有することをお薦めします。単元全体では、

・「精一杯大きくメリハリを付けて全身で踊る」

・「表したいイメージや音楽のリズムの特徴を捉えて体の動きで表す」

・「動きに変化を付けてひと流れの動きを作って踊る」

・「感じを込めてなりきって踊る」

このような目標(評価規準)にするとよいと思います。これらの目標を一度に掲げてしまうと今やるべきことが分かりにくくなりますから、毎時の授業では、その時間の学習題材に合わせて1時間に1つずつメインの目標「〇〇」を設定し、先生も児童・生徒もその目標が達成できているかどうかで評価するようにするとよいでしょう。メインの目標「〇〇」を板書して、授業中に何度も「今日の目標は何だっけ?」「○○ができているかな」と声かけすれば理解が高まりますし、先生が「○○」について評価、フィードバックすることで互いに動き・表現の良し悪しの評価規準を共有できると思います。

以下、その一例(アンダーライン)を示します。これはあくまで一例ですから、毎時のメインの目標(評価規準)を何にするかは学習者の準備状況や単元内の学習過程に合わせて適宜設定してください。

 

〇小学校低学年:表現遊び「楽しい動物ランド」

…いろいろな動物の特徴的な動きを見つけ、自分の好きな動物になりきって動く。

目標(評価)

①いろいろな動物を見つけ、なりきって動く。

②いろいろな動物の動きの違いを体感し、自分が選んだ動物の動きを工夫する。

③友だちと関わりながら動く。

 

〇小学校中学年:リズムダンス「じゃんけんダンス」

…2人組で体じゃんけんの組み合わせを工夫して踊る。

目標(評価)

①リズムに乗って全身で大きく弾んで踊る。

②自分なりの体グー・チョキ・パーの形を工夫する。

③友だちと一緒に踊って交流する。

 

〇小学校中学年:表現「忍者参上!」

…忍者の術や戦いの様子を試し、グループで好きな術や戦いをつなげて忍者になりきって踊る。

目標(評価)

①「忍者走り」で足音を立てずに素早く走り、ピタッと止まる。

②どんな術や戦いがあるかイメージを広げ、その動きを工夫し、忍者になりきって踊る。

③戦いの場面では、相手と感じあって対応して動く。

 

〇小学校高学年:表現「とびだす!」

…「とびだす!」からイメージを広げて表したいものを見つけ、特徴を捉えて動く。

目標(評価)

①多様なとびだす動きを見つける。

②指先まで使って激しく鋭く、全身で大きくとびだす。

③表したいものを見つけ、選んだイメージの特徴を捉えたとびだす動きを工夫する。      

 

〇中学高校:現代的なリズムのダンス「ロックのリズムで動く-止まる」

…リズムの取り方に変化を付け、普通速、2倍速、ストップモーションのひと流れを工夫して踊る。

目標(評価)

①軽快なロックのビートを捉えて、動きを刻んでキレキレに踊る。

②ノリノリで踊る中にストップモーションを加え、リズムに変化を付けて踊る。

③グループでオリジナルのフレーズを作り、ミニ発表会で見せ合う。

 

〇中学高校:創作ダンス「集まる-とび散る」

…グループで「集まる-とび散る」動きから連想するイメージでひとまとまりの表現を作り踊る。

目標(評価)

①ダイナミックに空間を変化させる。

②1人ではできない群の動きのおもしろさに気づき、それを活用した表現を作る。

③仲間と感じあって動く。

 

〇中学高校:創作ダンス「スポーツいろいろ」

…各種スポーツの特徴を捉え、特に強調したい動きや場面について誇張表現を工夫して踊る。

目標(評価)

①いろいろなスポーツのイメージを捉えてデッサンし、次々と即興で動く。

②選んだスポーツの特徴的な動きを見つけ、繰り返して大きくはっきり動く。

③デフォルメ(変形)で特徴を強調して、感動を伝える小作品にまとめて踊る。

 

これらの目標は、A十分満足できる、Bおおむね満足できる、C努力を要する、の3段階で判定します。例えば、「とびだす!」のとびだす動きを「精一杯大きく動く」ことができているかどうかは、授業中の教師の助言を受けて…

A指先まで伸ばして鋭く、全身で思い切り大きくジャンプできている

B指先まで力が入ってはいないが、ほぼ全力でジャンプしている

C全力でジャンプしていない、

このような評価基準になると思います。児童・生徒の体力・運動能力は異なりますから単純に動きの大きさ、ジャンプの高さなどの数値に置き換えて判定することはできませんが、先生方は日頃の体育での活動の様子から、その動きが本人にとって全力か、まだ余力を残しているかを見分けることができると思います。

 この評価基準で評価し、授業中に即、本人が今動いた感覚を覚えているうちに、その場でフィードバックすることが大切です。そうすれば、「こう動けば先生は褒めてくれる」「もう少し頑張れと言う」ことから、自分の動きの良し悪しを理解し、改善を図れます。クラス全員にフィードバックすることは無理ですが、友だちが「あの動き」を褒められた、頑張れと言われたのを見れば、求められている動きを理解できます。

 学習カードなどによる児童・生徒の自己評価においても、「精一杯大きく動いた」「イメージ・リズムの特徴を捉えて動けた」「変化のある動きを工夫できた」「なりきって踊れた」などの技能の観点を項目にしておくと、学習目標への理解が深まると思います。

 そして、毎時のメインの目標に対する評価を積み重ねることで、総合的に判断して評定につなげることができます。毎時の授業中の動きや、まとめの作品発表の動きなどから技能の判定はできますので、特に技能テストを設ける必要はないと思います。例えば、グループ作品発表の際に、グループ作品全体に対する評価(大きく、特徴を捉えて、変化を付けて、なりきって踊っているか)をします。それに加えて、グループの中で飛びぬけて大きく踊っている者、逆に十分に踊れていない者はすぐ目につきますから、加点減点するというのはいかがでしょうか。

 

 以上、主として技能評価について述べましたが、表現運動・ダンスの学習において何より大切なことは「楽しんで踊る」ことです。授業中に先生が「良い動き」を強調しすぎると児童・生徒は委縮して表現運動・ダンスを楽しめなくなります。まず、少しでも良い動きを見かけたらどんどん褒め、もう少しできるかな?と誘うようにして、自信とやりがいを感じさせたいものです。

 

第13回担当:K.N.(文責:A.N.)

 

○参考文献

1)全国ダンス・表現運動授業研究会編『みんなでトライ!表現運動の授業』大修館書店、2015.

2)全国ダンス・表現運動授業研究会編『改訂版 明日からトライ!ダンスの授業』大修館書店、2011.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「人と比較をして劣っているといっても、決して恥ずることではない。けれども、去年の自分と今年の自分とを比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことである。」( 松下幸之助 / 1894-1989     松下電器産業の創設者、発明家、著述家 )

☆今年はどんな一年にしよう…。お正月料理をいただきながら思いました。一歩でも二歩でも去年より前進できる、そんな一年にしたいです(A.N.)☆

第12回 ☆Q&Aお悩み相談箱 体育科における評価①「新しい評価の3観点、どうとらえればいいのですか?」2022年12月1日

今月からは、全4回のシリーズで「体育科の評価」について取り上げていきます。まず今月は「シリーズ①:3観点のとらえ方」として、現職の小学校の校長先生に伺った内容をお届けします。

 

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今回の改定に伴い、従来4観点であった「体育科の評価」が以下の3観点になりました。

「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」です(補足※)。

しかしながら、「じゃあ、実際何が変わるの?」「どうしたらいいの?」という、具体的でわかりやすい言葉が現場には必要なのだろうと考えます。

本来なら、文科省の教科調査官にご講義いただくのが、一番正確なのだろうと思いますが、従来のものとの違いを私見として書かせていただきます。現場の肌感覚では、今回の改訂で一番物議をかもしているのは、体育科の「知識・技能」ではないかと思いますので、今回はこれについて考えて行きます。

 

これまでは、「知識」は「保健領域」でとらえ、「技能」は「運動領域」でとらえていく方向性だったと考えています。今回の評価をこれまでと同様にとらえて、合わせ技のように割合を考えて、「知識・技能」をとらえていくことも可能でしょう。もちろん、保健領域での評価を今回の「知識・技能」の評価に入れていくことは必要だと思います。

では、運動領域では「知識」はないのでしょうか?「技能」だけで評価をしていいでしょうか?「技能」だけで運動領域の評価をすることには少し違和感が生まれます。

例えば、こんな子供はいませんか?(「Aさん」と仮定)

「運動神経がすごくよくて、何でも(あるいは一領域でも)技能がとても高い。高い段の跳び箱が跳べたり、簡単にヘッドスプリングができたり。でも、いとも簡単にできてしまうがゆえに…(会員専用)…友達に教えることにも積極的になれない。」

 

このAさん、この単元の「技能」はとても高い、これは間違いないでしょう。しかし「知識」があるとは言えないのではないでしょうか?こういう子供には、「知識としての技の見方」を指導しなければならないと考えます。指導には様々な方法があるでしょう。例えば、手本として演示させた後に、「どこがいいか?」「どうしてできるのか?」をみんなで考えることで、周りへの理解とともにAさんにも理解を促す。また、…(会員専用)。私は、「指導と評価の一体化」というのはこういうことだと考えます。調和の取れた学力の向上のためには、教師による意図的な導き(指導)が必要なのだと思います。

 

では、実際にこのような指導が、評価にどう生かせるのかという視点で考えてみます。

Aさんのような子供は、学習の初めのころは、「技能的にはA基準、知識的にはC基準」の状態だと考えられます。上記のように指導したところ…

①    学習の終わりのころには、「学習カードに技能についての的確な記述が見られたり、教え合いの場で友達に教えている技のコツやポイントが妥当である様子がたびたび見られたりするようになった。」

⇒「技能・知識ともに文句なくA基準」と言えるでしょう。場合によっては…(会員専用)。

②    「学習カードには技能についての的確な記述が見られるようになり、技についての知識もあると思われたが、教え合いの場では、技のポイントについての話などが出ていないまま、学習の終わりを迎えた。」

⇒こういう場合は、以下2通りの評価が考えられます。

a)    教え合いについては、十分ではないが…(会員専用)。

b)    教え合いに活かせない程度の知識は十分ではないとして…(会員専用)。

b)は、ちょっと厳しい評価に見えるかもしれませんが、日頃のAさんを見ている担任(担当)の先生なら、妥当な判断ができることでしょう。

こういった「技能的にはA基準」の子供をどう指導していけば、結果的に「知識・技能ともに文句なくA基準」にしてあげられるのか、ここが「指導の醍醐味」なのではないでしょうか。「評価=自分の指導が十分だったかどうかを子供の姿で判断すること」と捉えて、指導の質を改めて問い直していくチャンスになるかと思います。

 

さて、ここでは、B基準を「教え合いの場面での姿」で考えてみましたが、これも一例です。どこに評価の場を持ってくるのか、その単元が始まる前かはじめ辺りに決めておきたいところです。単元が少し進み子供の実態が分かったところで…(会員専用)ことが指導内容の明確化につながっていくのだと考えます。

 

「技能教科」と言われるような体育科では、結果・成果に至るまでの「取り組み方」も積極的に評価していきましょう。それは「学びに向かう力・人間性」に大いに関わってくることでしょう。ただ、できない技にいつまでも固執して…(会員専用)。よりよい思考の道筋を子供たちに示したり、共によりよい方法を考えたりしながら、「思考力・判断力」を高めていく指導が求められるのではないでしょうか。

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いかがでしたか?校長先生の、評価を自分の指導の結果ととらえる、という言葉には重みがあります。私も襟元を正し、自らの実践を振り返るとても良い機会になりました。シリーズ②からは、3つの運動領域における評価を取り上げていきます。お楽しみに。

 

(補足※)これらの経緯や内容は、「指導要領解説(体育編)」のP.6(1)体育改定の趣旨「② 改訂の基本的な考え方」やP.7「③ 改善の具体的事項」及び(2)体育科改定の要点(~P.10あたり)には、詳しく表記されています。

 

報告:11月30日(水)に、研究発表会を開催いたしました。二名の研究発表(小学校器械運動・中学校ネット型)をトピックに、多くの話題提供が行われました。追って連盟HPにも掲載しますので、どうぞご参照ください。

 

第12回担当:N.U.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「冬があり夏があり 昼と夜があり 晴れた日と雨の日があって ひとつの花が咲くように 悲しみも苦しみもあって 私が私になってゆく」(星野富弘/1946~日本の詩人・画家)

☆いろんな出来事があるからこそ、日々に彩りが生まれさあ頑張るか…と明日の糧にもなる。私たちの背中をそっと押してくれる、そんな詩に出会いました。(A.N.)☆

 

第11回 ☆Q&Aお悩み相談箱 表現・創作ダンスの動きづくり②「児童・生徒が動きを見つけやすい題材を教えてください(中学校)」2022年11月1日

先月から、学校現場で創作活動に関わっている先生の”知恵袋”をお借りして、表現・創作ダンスにおいて児童・生徒達が動きを見つけやすい題材について取り上げています。今月は「②中学校の実践例(題材編)」をお届けします。

 

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最初に、指導要領の「知識及び技能」を復習しておきましょう。

【1・2年生】の「創作ダンス」

「創作ダンスでは、多様なテーマから表したいイメージを捉え、動きに変化をつけて即興的に表現したり、変化のあるひとまとまりの表現にしたりして踊ること。」

【3年生】の「創作ダンス」

「創作ダンスでは、表したいテーマにふさわしいイメージを捉え、個や郡で緩急強弱のある動きや、空間の使い方で変化をつけて即興的に表現したり、簡単な作品にまとめたりして踊ること。」

 

このようにまとめると、必修の1・2年生、選択の3年生では、学習内容の深みが少し異なるのがわかります。では、具体的に、どのような題材が効果的なのか、またどのように題材を定めていくのか、Y.M.先生のこれまでの実践をご紹介していきます。

 

【中学校1・2年生】

題材・テーマと動きの例を見ると…。「変化と起伏のある「はじめーなかーおわり」のひとまとまりの動きを表現する」とあります。中学校1,2年生では変化と起伏のある流れをどのようにまとめるのか…まずどんな感じを踊りたいのか考えさせます。生徒の傾向としては「明るく楽しい感じ」「ドロドロと暗い感じ」などから表したいイメージを出し合い、題材が決まっていきます。

 

〔作品例〕

「警察と泥棒」

はじめ→警察に捕まり牢屋に入る  

なか→隙を見て逃げ出す・警察から必死で逃げる 

おわり→また逮捕され牢屋に入る 

などの流れをつくり進めていきます。指導のポイントとしては、変化と起伏を持たせるために、牢屋に入るときは静かな雰囲気の中、捕まってしまった泥棒がとぼとぼはいっていく。静けさの中・・牢屋の鍵が「ガチャ」と閉まる。そこから脱走を企て、逃げ出す。見つかってしまい、追いかけられる・・・もうここからはスピード感を出し逃げまくる。この中に、止まって隠れて(緩急)みたり集団(群)で逃げてみたり、バラバラ(個)に逃げてみたり、警察に挟まれ、追い詰められる様子を入れていく。そしてまた捕まりまた牢屋に・・・今度は更に頑丈な鍵で!などと条件を変化させると、もう楽しくなります。これに、テレビドラマなどで使われている伴奏音を効果的につけると、生徒の気持ちもどんどん入っていきます。

 

その他「busy morning」(会員限定)、「ハロウィンパーティー」「ゾンビ」などの題材から想像の世界ではありますが、情景を思い浮かべながら、変化と起伏を楽しみながら作品作りができるといいですね。

 

 

【中学校3年生】

題材・テーマと動きの例を見ると…。「表したいイメージを一層深めて表現する」「変化と起伏のある「はじめーなかーおわり」の簡単な作品にして表現する」とあります。3年生になると「環境問題」「戦争・平和」「ある人物の心情」を表現しようとグッと難しいテーマ設定をし始めます。教師も「メッセージ性があるもの」をテーマに作品の深まりを持たせるように、誘っていきます。

 

〔作品例〕

「紙飛行機」 

はじめ→公園で子どもが飛ばした紙飛行機を見て「特攻隊員」だった昔の自分を思い出す。

なか①→戦争に召集される手紙が届く。お国のために役に立ちたい気持ちと家族と一緒にいたい気持ちが交錯する。

なか②→決意を固め戦地へ行く。飛行機に乗る。特攻隊として敵に突っ込んでいく。しかし、特攻に失敗する。自分だけが生き残る。

おわり→平和への願いを込めて子どもに紙飛行機を手渡す。子どもが、もう一度紙飛行機を飛ばし、それを見上げる。

これに、伴奏音として映画「永遠の0サウンドトラック」や「硫黄島からの手紙」のサウンドトラックを用いると、世界観がぐっと広がります。

 

最後に、作品作りを進めていく上で生徒達が必ずぶつかる壁をどうやって突破していくかご紹介します。

△ダンス自体は楽しそうなのに作品作りになると行き詰まる…

⇒私は必ず作品の流れを再度確認させ、「どんなイメージだったか、何を表現したかったのか」に立ち戻らせます。そして作品に魂(感情)を…(会員限定)。

△動き作りに行き詰まる…

⇒こういう時は、全部の音に合わせて動きを作ろうとして苦しくなっている場合が多いです。逆に間を作ってみたり、静と動を効果的に使ってみたり…(会員限定)。

 

すべては「テーマ」といって過言ではないほど、「テーマ設定」は重要です。図書や教科書にも優れた題材があります。生徒とともに探していきたいですね。映画やドラマなどの伴奏音にも関心を。これがマッチすると、より気持ちが入りいい作品が生まれます。

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いかがでしたか?ここでご紹介した作品、筆者はいくつも拝見しています。生徒達が指先までしならせて表現している姿に胸が熱くなったのを覚えています。本稿を通して、その作品ができあがっていく過程で、先生が生徒の声に耳を傾け、力を引き上げていることを実感しました。創作ダンスには不思議な力があります。表現し終わった時、生徒達の身体は本当にきれいです。皆様も、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

※連絡:11月30日(水)に研究発表会を開催します。連盟HPに要項がアップロードされていますので、どうぞご参照ください。

 

第11回担当:Y.M.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「本を読むことが、読書なのではありません。自分の心のなかに失いたくない言葉の蓄え場所をつくりだすのが、読書です。」

☆読書の秋ですね。本を開くと、新しい言葉、新しい世界に出会えるように思います。児童書、小説、絵本…様々な出会いに感謝する日々です。(A.N.)☆

 

第10回 ☆Q&Aお悩み相談箱「表現・創作ダンスの動きづくり①「児童・生徒が動きを見つけやすい題材を教えてください(小学校)」2022年10月1日

今月からは、2回にわたり、表現・創作ダンスにおいて児童・生徒達が動きを見つけやすい題材についてお届けします。導入から展開では楽しそうに踊っているのに、いざ創作となると授業が停滞してしまう…よくありますよね。これは、児童・生徒達が題材の動きを具体的に想像しにくいからなのです。今月のコラムは、そんな時の強い味方になってくれると思います。今月も、実際に学校現場で子供達の創作活動に関わっている先生の“知恵袋”をお借りして、「小学校の実践例(題材編)」をお届けします。※来月は、「中高の実践例(題材編)」をお届けします。

 

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最初に、指導要領の「知識及び技能」を復習しておきましょう。

【1・2年生】の「表現遊び」

「表現遊びでは、その行い方を知るとともに、身近な題材の特徴を捉え、そのものになりきって全身で即興的に踊ること。」

【3・4年生】の「表現」

「表現では、その行い方を知るとともに、身近な生活などの題材から主な特徴や感じを捉え、表したい感じをひと流れの動きで即興的に踊ること。」

【5・6年生】の「表現」

「表現では、その行い方を理解するとともに、いろいろな題材からそれらの主な特徴を捉え、表したい感じやイメージをひと流れの動きで即興的に表現したり、グループで簡単なひとまとまりの動きにして表現したりすること。」

 

このように併記すると、学年進行とともに、「身近な題材」⇒「身近な生活など」⇒「いろいろな題材」と…(会員限定)。小学校は、低・中・高学年の6年間を通して、系統性をしっかりとらえて発達段階に応じた「題材」を選ぶことがポイントです。創作段階での授業の停滞を防ぐためには、「動きのイメージ」がすぐできる題材を選ぶことが効果的です。そして、児童の実態(これまでの学習経験)を把握することも大切です。前学年の技能(なりきって即興的に踊る)が身に付いていない場合は…(会員限定)。では、具体的に、どのような題材が効果的なのか、筆者のこれまでの実践で児童が楽しく学べた題材をご紹介していきます。

 

【低学年】

・身近で特徴のある具体的な動きを多く含む題材⇒動物(陸・海・空のいきもの)

◯ 動物(陸・海・空のいきもの)は、身近でイメージがしやすく動きも特徴的で、低学年児童にとっては取り組みやすい題材です。

×「乗り物」は、知らない乗り物や動きのイメージができない、単発の動きでおわってしまい、指導者も児童も「なりきる」ことがやや難しいです。

 

【中学年】

・想像力を駆り立て動きのイメージが具体的にできる題材⇒「空想の世界からの題材」(◯◯探検、忍者、戦い)

◯ジャングル探検、海中探検、向かい合う2人組での「対決」「戦い」は、動きのイメージもしやすい題材で、中学年の児童は大変好みます。中でも「戦い」は…(会員限定)。

△「クッキング」など、料理に関した題材は、取り上げる料理(例:納豆をかきまぜる、麺がゆであがる、ポップコーンがはじけるなど)を厳選しないと、似たような動きしか出てこない…(会員限定)。※学習経験も関連する。

 

【高学年】

高学年は、それまでの学習経験の状況により、効果的な題材が異なります。

☆これまでの学習経験が浅い場合(はじめの段階)

・イメージがしやすく、即興的な動きも出やすい題材⇒「対決!(激しい攻防、追いつ追われつの表現)」、2人組で向かい合う「対決」

◯ボクシングの攻防、ギャングとスパイ、忍者の戦いは…(会員限定)。

×「自然」や「わたしたちの地球」など、抽象的でイメージすることが難しい題材は…(会員限定)。

 

☆これまで学習経験がある場合(やや進んだ段階)

・激しい感じの題材、群が生きる題材、教科の学習と関連させた題材⇒わたしたちの地球、自然(自然現象含む)

◯自然などは…(会員限定)。

※指導者側が、児童が題材のイメージから動きを見つける過程や「ひと流れの動き」から「ひとまとまりの動き」にする過程で、適切な指導(動きのメリハリ、空間の使い方、群の使い方など)を入れていくことが大切です。

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いかがでしたか?筆者は、子供達が夢中になって表現している様子が目に浮かびました。きっと、皆様の明日からの実践にもお役立て頂けると思います。来月は、中高の実践例をご紹介します。どうぞお楽しみに。

 

※連絡:連盟の研究発表会を11月3日に開催予定です。今年は、小中学校の器械運動とネット型の研究発表を予定しています。皆さんのご参加をお待ちしております。詳細は、連盟HPをご参照ください。

 

第10回担当:R.S(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「 春の美しさも夏のそれも、秋のような気品はもっていない。」

(John Donne ジョン・ダン/  1572 - 1631 イングランドの詩人、著作家)

☆10月になると、スタンダードジャズ「Autumn leaves」の「♪枯れ葉散る〜、夕暮れよ〜」というあの有名なメロディーを思わず口ずさんでしまう筆者です。紅や黄色に色づく木々に、春先の新緑とはまたひと味違う奥深さを感じます(A.N.)☆

 

第9回 ☆Q&Aお悩み相談箱「魅せることを意識した表現運動・ダンスの隊形変化はどうすればいいですか?」2022年9月1日

秋は多くの学校で芸術に関わる発表会が開催されますよね。今月は、実際に学校現場で子供達の創作活動に関わっている先生の”知恵袋”をお借りして、表現運動・ダンス等の「まとまりのある作品」を仕上げていくときのお役立ちポイントをご紹介します。指導要領※も紹介しながら大事なキーワードを【 】で示していきますので、ぜひ今後の実践にお役立てください。

 

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生徒たちは、先に隊形を考えてから動き作りをしようとします。隊形が先でもよい時もありますが、基本的にはまず動きを考えさせ、その動きが活きてくる隊形を考えるとよいでしょう。その時、先生方の少しのアドバイスで動きも隊形も変わってくるのではないでしょうか。

 

〇祭りや太鼓、団結などエネルギッシュで迫力を出したいとき

※小学校高学年「激しい感じの題材」「群(集団)が生きる題材」、中学「群(集団)が生きる題材」 、高校「D群(集団の動き)」の参考に。

 

・3つの群の例

①    8呼間の動きを【カノン形式】で動く(8×3)

  同じ動きを一斉に行う(8×1)

       ↓ 8個間の動きを【カノン】にすることで(8×4)のフレーズに

  1つの【群】になり、正面を向いて動く

  【3つの群】から【1つの群】になることで迫力差を表す  

  皆が同じ動きを行う【ユニゾンの動き】または自由に太鼓をたたく

②    正面に1つの群、後ろ両サイドに2つの群(舞台に【三角形の位置取り】)

   正面のメインの群が16呼間の動き、残りの2つの群はポーズで

  静止かメインの動きを生かす動き(16×1)

       ↓ 3つの群が時計回りに移動(8×1)

  2つ目の群に入れ替わり…(会員限定)

 

〇対決の動き

※小学校高学年「多様な題材:対決」、中学校「多様な感じの題材」の参考に。

・個と個の場合は【分散】し(散らばり)、それぞれ即興で動く

・【個と群】の掛け合い

・【群と群】の掛け合い

・個-群・群-群の場合、横に向き合う形だと動きが平面になるので、【斜めに向き合う】ようにすることで…(会員限定)。

 

〇心の表現

※小学校「多様な題材」、中学「身近な生活や日常動作が題材:出会いと別れ」「多様な感じの題材:人間の感情」の参考に。

・悲しい時や恐怖を感じるとき⇒舞台(踊る場所)の【後ろの隅】に動く

・何かにすがりたい、助けを求めるとき⇒【密集して正面】へ

  この時【高低差】をつけるよりすがりたい気持ちが強調される

・希望を表すとき⇒【斜めの構図】、この時も【高低差】をつけると奥行きがでてくる

・悲しみを表すとき⇒…(会員限定)

・手を差し伸べる動き⇒…(会員限定)

・苦しみの場合⇒…(会員限定)

個は立って即興で苦しむ動き、その他は低い姿勢、ユニゾンで【個の動き】を際立出せる

 

〇作品の始め方

作品の【最初の始め方】は重要。見ている人に、この作品は「何をするのだろう」と思わせ前のめりで観させるか、観させないかを分ける“決め手”になります。

 

・作品名「天国と地獄」

地獄の様子:地獄の窯、湯気が立ち上るイメージで不気味さを出す

【高低差】をつけた【密集(群)】:湯気がぶわっと上がったり、窯がぐつぐついっているのを粘った動きで表現 

(他二作品、会員限定)

 

〇作品の終わり方

作ってきた動きの【余韻】を残した【静止の動き】で作品を締めます。最後にどのようなポーズにするかで、見ている人の心に残る「感動」の余韻が変わってきます。

 

・作品名「パンドラの箱」

箱の最後に出てきた「希望」に救われ、それにすがる人々の様子

「希望」に救いの手を差し伸べながら、追いかける人々

ステージ前面に4人×4人の密集で正座の状態でうつぶせる。

音に合わせて【高低差】をつけながらゆっくりと手のひらを開きながら両手(視線も)を天に(希望に向かって開いた指先に、力強さを込めて)

(他一作品、会員限定)

 

〇お勧めしない隊形

・円:生徒たちは好きですが、あまり使いたくない隊形。台風とか渦巻とかのテーマならいいですが、円で動くと見ている人にはお尻しか見えなく、表情も見えないのです。

 

以上、ご紹介してきましたが、【分散】で動く場面と【群】での動きをバランスよく取り入れることで、作品により【深みやメリハリ】が出てきて、見ごたえのある作品になると思います。

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いかがでしたか?「まずは動きを考えさせ、その動きが活きてくる隊形を考える」といった現場の先生の“知恵袋”。観ている者を作品の世界観に惹き込む手法が随所にありました。ぜひ、今後の創作活動に活かしてくださいね。

 

※報告:連盟の夏期研修会が8月9日、10日の二日間にわたり開催されました。オンライン開催とはなりましたが、参加者の皆さんの笑顔が弾み、充実した研修会になりました。詳細は公式HPにも掲載していますのでどうぞご覧下さい。(次の行事は、11月30日(水)の研究発表会となります)

 

第9回担当:Y.A.(文責:A.N.)

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「 There is a harmony in autumn, and a luster in its sky.」

「秋には調和があり、秋の空には光沢がある。」

(Percy Bysshe Shelley パーシー・ビッシュ・シェリー/ 1792 - 1822 イギリスの詩人)

☆秋は、果物のおいしい季節。夏の太陽をたっぷり浴びた秋の果実は、甘味、酸味、苦味等のバランスが良く、ブドウ栽培が盛んな故郷の山梨をいつも懐かしく想ってしまいます(A.N.)☆

 

第8回 ☆Q&Aお悩み相談箱「タブレットやスマホをつかった音楽製作ってどうやってやるのですか?」

先月からお届けしておりますICT特集ですが、今月はICTを活用した表現運動・ダンス授業の音源づくり(学校行事にも応用可)について取り上げていきます。

 

今回は特に、appleのiPadやiPhone(MacBookなども含む)などにプリインストールされて(元々入って)いるアプリ「GarageBand」についてご紹介します。このアプリは主に、

 

(1)既存のアーティストの楽曲を編集する

(2)オリジナル楽曲を製作する

これらの両方が可能です。(1)は、ダンス授業で児童・生徒達が「この音源で踊りたい!でもここをカットして違う曲とつなげたい!」等、<音源指定がある時>に主に活用します。クロスフェードや…(会員限定)。

(2)は、<オリジナル音源を作りたい時>に主に活用します。編集画面がシンプルすぎてどこに何が隠されているか見つけるのに少しコツがいるのですが、「かっこいい感じで、ちょっと都会的、楽器は電子ピアノを使いたいかな」などあたりをつけて、指一本で感覚的にボタンを押していくと、「ループ」という音楽パターンの箱が自動的に画面に出てきますので、それを指で押さえて(ドラッグして)編集画面上に落とす(ドロップする)だけ。他に…(会員限定)。

 

 以下はご紹介です。iPadやiPhoneなどにあるアプリを学校現場で活用する方法を、以下の無料プログラム「Apple Teacher」で詳細に学ぶことができます。icloudのアカウント登録(無料)が必要になりますが、「iPadを学校でも個人でも使っているけれど、操作方法をもっと知りたい」といった方は、参考になるのではないでしょうか。

写真、映像、音楽、ノートづくりなど…(会員限定)。

 

いかがでしたか?今回お届けしたノウハウは、保護者や参会者の人数制限により学校行事をYouTubeで公開する時などにもご活用頂けます。映像にBGMがあった方が、格段に児童・生徒達の躍動感が伝わります。しかし、ほとんどの楽曲は著作権で守られており、音源を載せた映像は即座にブロックされてしまいます。そんなときは迷わず、オリジナル音源を製作しましょう。GarageBandのオリジナル音源は、先生方だけでなく、児童・生徒も手元のタブレットやスマホでパッと取り組めてプロさながらの楽曲ができるため、様々なシーンで活躍してくれると思います。

 

第七波により、8月の講習会は残念ながらオンライン開催となりました。お手元で操作していただく演習から、映像配信型に変更となりましたが、皆さんにわかりやすい動画製作を心がけて配信いたしますので、どうぞご覧下さい。

 

第8回担当:A.N.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「It’s all about the journey, not the outcome.」

「すべては過程だ。結果ではない。」

(Carl Lewis カール・ルイス/ 1961〜 米国の元陸上競技選手)

☆テレビの向こうで、宙を飛ぶように跳ぶ彼の姿に釘付けになった幼少時代を思い出します。結果だけでなく、そこに至るまでにどのように取り組んだのか、過程を大切にした学校教育を目指したいですね。(A.N.)☆

 

第7回 ☆Q&Aお悩み相談箱「ダンスの授業でICTを活用するおすすめの実践はありますか?」

今月からの2ヶ月はICTをテーマにお届けします。ギガスクール構想が進み、各学校で一人一台のタブレットが浸透しつつありますよね。そんな流れを受けて、表現運動・ダンスの授業でのICT活用アイディアについて取り上げていきたいと思います。

 

◎アイディア1(ロイロノート活用術)(中学校の実践は見つけられませんでした…)

高1 体育 ダンス 現代的なリズムのダンス(創作)【実践事例】(水戸啓明高等学校)

小5 体育 オリジナルダンスを創ろう 表現 【授業案】勝山市立村岡小学校

 

全国で活用されているロイロノート。ロイロノート・スクールは、全国の小学校・中学校・高校・塾で導入されているクラウド型授業支援アプリで、現在、44都道府県283の市町教育委員会で導入実績があります。読者の皆さんが所属する学校でも、活用されているかもしれませんね。

筆者が授業研究の支援に入っているある県内公立中学2年生の授業公開に赴いた際も、生徒達がロイロノートを活用して現代的なリズムのダンスにチャレンジしていました。みんな真面目に一生懸命、画面上で正対するダンサーのとおりに決められたステップを踊ろうと頑張っていました。この活用方法は、生徒達が各グループで、ダンス映像を視聴しながら学習に取り組むため、教師が全体にスタジオレッスンのように教える一斉学習を避けるという点では一理あると思います。しかし、教師と生徒達の笑顔が弾け、ビートのあるリズム音楽という媒体を介して、みんなで心と体を弾ませていくあの躍動的な場面が授業に登場しません。全体として、授業は淡々と展開されていきました。

このいわば、「決められたステップに生徒を寄せていく」という習得型の学習方法は…(会員限定)。(会員限定)…とすると、一気に新しい学力観の「探究型」の授業に早変わりします。生徒達は様々な高さと距離を工夫し、あれやこれやと工夫し出すことでしょう。そしてそこには、友達同士の見合いや助言が自然に生まれます。

 

先のダンスの授業を探究型に変えていく方法を、ハードルの例を添えて、もう一度考えてみましょう。様々な高さ・距離はありつつもハードルという運動特性が持つ「跳ばなければならない障壁(基本技能)」を、現代的なリズムのダンスで習得する必要のある「ダンスのリズム(基本技能)」(ロック・ヒップホップのリズム)として考えます。そして、工夫できるハードルの高さとインターバルを、工夫できる「ダンスのステップを構成する動き」として捉えていくのです。言い換えると…(会員限定)。そうすると、ダンス教室で専門的に習っていない生徒にも、工夫の面白みや、踊れるかも…という期待が芽生え、創造的な教え合いも生まれるのです。「ワン、ツー、スリー、アンド、フォー…」とカウントして、「ポップコーン」という決められたステップを習得しようとしても、本当の意味でリズムに乗って踊ることが難しいため「できないな、芸能人みたいに格好良く踊れないや」となってしまいますし、ステップを習得したとしてもコピーダンスで終わりです。そうではなく、それを素材として創造・構築していくのです。この授業展開であれば、広がりも期待でき、専門が異なる先生にも授業展開が可能になりますよね。

 

ロイロノートは優れたアプリで、様々に活用できます。ダンス授業での賢い付き合い方としては、まずこの基本となるリズムの乗り方やステップをロイロノートで「知る」そして「やってみる」、その後、そのステップはどんな動きの…(会員限定)。そうなったら、パソコンと…(会員限定)創意工夫をしてみましょう。そうすると、ダンスの授業に躍動感が戻り豊かな対話も生まれるのではないでしょうか。

 

いかがでしたか?来月は、ICT活用術の「◎アイディア2」として、iPadやiPhoneに元々インストールされているGarageBandというアプリを使ったリズムダンスのオリジナル音源製作について取り上げます。8月の講習会では、参加者の皆さんのスマホやタブレットを使って世界に一つのリズム音楽を制作します。ご興味のある方は、講習会にふるってご参加ください。

 

第7回担当:A.N.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「Rest is not idleness, and to lie sometimes on the grass on a summer day listening to the murmur of water, or watching the clouds float across the sky, is hardly a waste of time.」

「休息は怠惰ではない。夏の日に草の上で横になって水のせせらぎを聞いたり、雲が空を横切るのを眺めたりすることは、時間の浪費ではない。」

(ジョン・ラボック/ 1834〜1913 /イギリスの生物学者・考古学者)

☆絵本「ルラルさんのだいくしごと」のように、時には忙しい歩みを止めて寝転び、夏の自然に身を委ねてみるのもいいかもしれません。地球っておっきい、自分の悩みってちっちゃい、って感じるものです(A.N.)☆

 

第6回 ☆Q&Aお悩み相談箱「ダンスの授業時の準備運動はどのようなものがいいでしょう?―子どもたちをその気にさせるダンス・ウォームアップ―」

今月は、以下のように、表現運動・ダンスの授業に入るときの、子ども達の心身の準備について取り上げていきます。みなさんの該当する学校種にあてはめて、読み進めて頂ければと思います。

 

◎該当質問

小学校:恥ずかしさで動きが小さくなってしまうことを打破するには?

中学校:ダンスの授業時の準備体操や補助運動は他の種目と同じようにやっていますか?

高校:ダンスの授業で生徒をその気(ダンスに入り込む、踊る気持ち)にさせる手立てが知りたい。

 

体育の授業では、怪我をしないため、運動しやすいように関節可動域を広げ、体を温めるための準備運動を行いますよね。多くの学校の授業を見学すると、1.2.3.4と号令をかけながら、どの種目でも同じ体操を行っている様子を見かけます。でも、各種目で行う運動は違うのに、同じ体操でいいのでしょうか?

その種目特有の運動をスムーズに行えるように、その種目ならではの準備運動をするべきだと思いませんか? 

東海大学の中村なおみ先生は体育授業の準備運動を「スリーアップ」にしようと提案しています1)。スリーアップとは、①ウォームアップ(自分との対話:動きやすい体づくり)、②コミュニケーションアップ(他者との対話:仲間との交流)、③スキルアップ(内容との対話:中核となる技能への接近)の3つの目的をもった授業の導入活動です。詳しくは第35回CJT定期便(2020年9月~2021年6月配信/HPにも掲載)をご覧ください。

 

特にダンス・表現運動の場合は、ダンスは苦手だな、みんなの前で上手に踊れないと恥ずかしいな、憂鬱だなと思いながら授業をはじめると、恥ずかしいから思い切って大きく動くことができない、自分のアイデアに自信がないから意見を言うことができない、心から楽しんで踊れない、仲間と打ち解けられない、つまらない、ダンスはやっぱり苦手だな、という悪循環に陥りがちです。

このような状況を改善するために、ダンス授業のはじめの準備運動では、特にコミュニケーションアップやモチベーションアップに重点を置き、簡単な動きで気軽にみんなと一緒に踊って交流し、心と体をほぐすダンス・ウォームアップがお薦めです。

 

ダンス・ウォームアップの具体例は第43回CJT定期便(2021年5月配信)にも掲載しました。今回は、楽しいダンス・ウォームアップを作る際、指導する際のポイントをお示しします。

 

①音楽の選曲

使用曲はJ-POPやアニメソングなど、子どもたちが良く知っている曲で、軽快なテンポで乗りが良く、明るい曲調のものを選びましょう。知っている曲だと歌を口ずさみながら楽しく踊れますし、曲の進行が分かるので次の動きの予測もつきます。号令で準備運動するのと違って、ノリノリで踊ると運動量が多くなるので、疲れすぎないように時間は短めに。先生ご自身も本気で踊ったら3分で息が上がると思いますよ。1曲全部踊らなくていいので、心と体がほぐれたころ合いで止めてもといいと思います。

お薦めのウォームアップ曲の例

♪Rising Sun/EXILE(127bpm)4’56”

(他四曲:会員専用)

 

②取り入れる動きの例

最初はいわゆる準備体操の動き、膝の屈伸やアキレス腱伸ばしを音楽のリズムに乗って行うだけでも楽しいです。これにリズムに合わせて歩く、走る、スキップする、跳ぶ、手をたたく、キックする、などの誰でもすぐにできる簡単な動きを加えてみましょう。

曲のザビの繰り返し部分などでは、音楽のフレーズに合わせて、8呼間×2や8呼間×4程度の簡単な動きの組合せを作り、繰り返して踊るようにすると…(会員専用)。…よりも自信をもって大きく踊れます。

 

③仲間との交流

整列して正面向きで先生を見ながら行う体操の隊形は、先生対子どもの一斉指導の隊形です。これでは子ども同士のコミュニケーションはできません。そこで、ダンス・ウォームアップでは整列をやめて、先生が子どもたちの中に入り、子どもたちの間を動き回るようにすると効果的です。先生が子どもたちの中に入ると、先生の先にクラスの友達が踊っている姿が目に入ります。みんなと一緒に踊っている感覚を味わえて、安心感が増します。あまり人数が多くないクラスなら、全員で輪になってみんなの姿を見ながら踊るのもいいでしょう。輪になる方が先生は全体を把握できて安心かもしれませんね。

 さらに直接的に子ども同士の交流を図るには、友達と向かい合って踊るのが…(会員専用)。…ハイタッチをするなどの仲間と触れ合う動きを取り入れると楽しいです。

非接触型なら、向かい合って互いに右足を斜め前に踏み込んで戻る(1.2で踏み込んでウェーイと胸を震わし、3.4で戻って手拍子ポンポン、右左繰り返す)、フォークダンスのステップのドー・シー・ドー(8呼間で時計回りに右肩から入って背中合わせにすれ違い左肩から戻る)や、曲の途中で2人組! 3人組! 4人組!と声をかけて集合ゲームの要領で小集団を作り…(会員専用)。

 

④かけ声をかける

 黙々と踊っているのでは楽しくありません。動きの変わり目やアクセントのある動きの時に「ハイ」などのかけ声を出すようにするとモチベーションアップ効果抜群です。

 

⑤先生が率先して楽しんで踊る

 ダンスに自信がなくて不安な子どもにとっては、先生が常に一緒に踊ってお手本を見せてくれていると安心できます。お手本と言っても上手に踊る必要は全くありません。むしろ先生が上手だと子どもは引け目を感じてしまうかもしれません。上手くなくていいから、精一杯大きく、元気に…(会員専用)くらいのお手本がベストです。

 

いかがでしたか?楽しいダンス・ウォームアップの実践例は、全国ダンス・表現運動授業研究会編の『改訂版 明日からトライ!ダンスの授業』2)や『みんなでトライ!表現運動の授業』3)にも掲載されていますのでご参照ください。

 

第6回担当:K.N.

 

1)鈴木直樹・中村なおみ・大熊誠二(2019)主体的・対話的で深い学びをつくる!体育授業「導入10分」の活動のアイデア.明治図書出版.

2)全国ダンス・表現運動授業研究会編(2021)改訂版 明日からトライ!ダンスの授業.大修館書店.

3)全国ダンス・表現運動授業研究会編(2015)みんなでトライ!表現運動の授業.大修館書店.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「人間が授かった大いなる才能、それは共感する力です」

(メリル・ストリープ/Meryl Streep, 1949~/アメリカ合衆国の女優)

☆自他の相違を受け入れつつ、相手を尊重する共感力。この双方向の営みは、自分の視野も広げてくれます(A.N.)☆

 

第5回 ☆Q&Aお悩み相談箱「運動会・体育祭で大盛り上がりの種目アイディアを教えて下さい!(中学校編)」

今月は運動会・体育祭準備号ということで、連盟スタッフ太鼓判の大盛り上がりの種目アイディアをお届けします。

 

【大玉障害物リレー】

○解説:大玉を使って障害物をクリア、リレー形式で行います。トラックの半円で紅白に分かれて実施。学年の人数により周回を調整したり、直線でやったりと様々にアレンジできます。大玉は、1m50cmの大きいものを使用します。これが、中学生の迫力につながり、男子も女子も本気でやるポイント。ちなみに、K中では、200人の男女混合で紅白に分かれ、1チーム100人で3周しました!

○方法:

 ①スタート:2人で大玉を転がして2番目の障害物の人にリレーします。

 ②障害物2:大人数で2列を作り大玉を送ります(落下したらその地点からやり直し)。列の最後の二人が3番目の障害物の人にリレーします。

 ③障害物3:大玉を2本の棒で挟み、4人で落ちないようにバランスをとって運びます。*注→大玉に手を触れてはいけません!

 ④障害物4:運ばれてきた大玉を受け取り、野球部で使用している防球ネットの上を、投げて通過させます。これは、大玉が高く上がり盛り上がりますが、コントロールとパワーがないと越えられません。

*注→ネットが倒れないようにしっかりと抑える人をつけましょう! 

 ⑤障害物5:コーンや旗などの周りをジグザグに2人で転がしてスタート地点に戻ります。スタート地点のタイヤに乗せてゴール!!

 

【段ボール宅配便】

○解説:フィールド中央の円内にバラバラにおいてある複数の段ボールを、クラスのみんなで協力してリレー形式で運びます。クラス対抗で、大盛り上がり!以下の②~⑤を二周してゴールです。段ボールは、二つ並べて両手で持てるくらい大きいものを使用すると面白いです。

○方法:(会員専用)

①スタート:段ボールの中から自分のクラス番号が書かれている箱を5つ見つけて、それをもってトラックにおいてある一輪車に乗せて落とさないように支えながらトラックを50m運びます。

②障害物2:(会員専用)

③障害物3:(会員専用)

④障害物4:(会員専用)

⑤障害物5:5つの段ボールを縦に積み上げ、1人で100mを走って運びます。傾きや風を考えてバランスを取りながら走ります。くずれたらその場で積みなおしてリスタート。

 

いかがでしたか?「段ボール宅配便」は、タイトルとストーリー仕立てなのが秀逸で、生徒達の歓声と笑い声がきこえてきそうです。身近なものを使って、すぐできるのもいいところですね。

ぜひ、運動会・体育祭の参考にされてください。

 

第5回担当:Y.K.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

人間性は樹木のようなものだ。指定された仕事を機械的に正確にやらされるわけではなく、あらゆる方向に伸び拡がらなければならない。

ジョン・スチュアート・ミル(イギリスの哲学者/1806-1873)

☆太い根を育てて、いろんな方向に学びを進められる豊かな人間性を育みたいですね。(A.N.)☆

 

第4回 ☆Q&Aお悩み相談箱「運動会のダンスをより良くするためのポイント・アイデアを教えてください!」

今月は「運動会」シーズンを迎える前にこれ教えて!というご要望に具体的にお応えする定期便をお届けします。4つのご質問に、連盟スタッフがお答えします。新学期特別号として、全ての皆様に全文をお届けいたします。

 

Q1 ダンスの振付を考えるのが大変なのですが…。

A:作品の最初から最後まで考えるのは大変ですよね。でも、すべて担当の先生が振り付けなくてもいいのです。例えば…

・クラスごとの創作を入れて、順に踊るパートを入れる。

・リズムに乗って、自由に弾んで踊るパートを入れる。

・わらべうたや子どもの遊び・応援合戦の動きをアレンジしてダンスに入れる。

    例えば…ケンケンパや体じゃんけん

    「だるまさんがころんだ」で走る―止まるの動き 

    三々七拍子をダンスっぽく赤白交替で踊る。

・はやりのお笑い芸人のリズムネタがあれば、ちょっと入れてもOK。また、曲のイメージを動きにしてもおもしろいです。例えば…

   ♪ノーダウト(official髭ダンディズム)  ⇒ 詐欺師・泥棒のイメージ

   ♪ネガティブファイター(Hey! Say! JUMP)⇒ 対決・ファイターのイメージ

       

Q2 メリハリのある動きにするには、どうしたらよいですか?

A:集団で魅せたいダンスですが、グラウンドのような広い場所で踊るときにはちょっとした工夫が必要。小さな動きよりも向きやスピードを変化させたり、コントラストのある動きを入れたりすると、見栄えしますよ。例えば…

・ノリノリで踊る⇔ぴたっととまる(4カウントごとにポーズを変化させても面白い)

・前向きで踊る⇔後ろ向き・後ろへ移動

・大きい動き⇔小さい動き

・即興表現にスローモーションを入れる。

(子どもの動きが大きくなり、見ている人に何をやっているのか伝わりやすくなります。)

 

Q3 ダンスを盛り上げるためのアイデアは?

A:みんなが楽しく精一杯ダンスに臨むためには、志気を高めたいところ。チーム対抗の応援合戦やダンス対決を入れると、盛り上がります。

・団長を前に出し、団長:「絶対勝つぞー!」 みんな:「おーっ!」など叫ぶ。

・応援団が団旗を持って走り、ウェーブを入れる。

  

Q4 作品のどこから練習して、練習ではどんなことに気を付ければいいですか?

A:数回の練習を計画的に進め、本番直前には仕上げ(躍り込み)の時間も取りたいものです。そのためには…

・虫食い状態でもOK・全習法で、1回目の練習から1曲踊る。そうすると、ダンスの全体像が見えます。

・子どもたちのダンスを見ていると、手先を意識することなく“漫然と踊っている”ことがあります。また、ストップモーションなどでぼ~っと見ていることもあります。「指先に力を入れて・指先をしっかり意識して」「前をしっかり見よう・目力!」などの声掛けをするだけでも、ダンス全体が引き締まります。

・動きはカウントではなく、イメージの言葉やオノマトペを使うと、楽しく覚えられます。

・隊形移動はない方が、練習時間は大幅に少なくなります。(隊形を整えるところが一番難しいので…)いわゆる「体操の隊形」のまま、「距離をとって」最後まで踊ってみてはどうでしょう。

 

いかがでしたか?運動会のダンスは、子どもたちも保護者も楽しみにしています。ぜひ、みんなの笑顔が輝く作品にしたいですね。

 

第4回担当:T.M.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「何より痛感したのは、『とにかくやってみる』ことの大切さ これが人間が成長するための最良で最大の方法と学んだ」

(増田宗昭1951~/TSUTAYA創業者)

☆新しい年度のスタート、心も新たに…みなさん、どうしようかと迷ったときには、「とにかくやってみましょう」(T.M.)☆

 

第3回 ☆Q&Aお悩み相談箱「リズムダンス・現代的なリズムのダンスで小・中学生にお薦めの音源は?」

今月は、読者の皆様からの「素敵な音源を知りたい!」というご要望にお応えして、主にリズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業に役立つ音源紹介をお届けします。

ダンス・表現運動では音楽の準備が必須で、その音源探しに苦労されている先生方も多いと思います。授業で使う曲の原則は、「子どもたちが知っている明るい曲・気分が上がる曲」であることが一番大事だと思います。知っている曲だとメロディや歌詞を口ずさみながら楽しく踊ることができます。反対に、どんなに素敵ないい曲でも初めて聞く曲だと曲の展開が予測できないので、思い切って動くことができません。また、歌の内容に引っ張られてしまうので、歌詞のない楽器のみの演奏曲の方がいいという考え方もあるかもしれませんが、あまり動き作りに慣れていない子どもたちは、歌詞を手がかりにイメージを広げて動きを作ることができますので、必ずしも歌詞は無い方がいいというわけではありません。むしろJ-popなどの馴染みのある歌がお薦めです。ただし、その際は歌詞の内容が教育的に好ましくないものは避けましょう。応援歌的な元気の出る曲はクラスの雰囲気も良くなるので有効だと思います。

 

次に、「基本のビートがとらえやすい曲」で、その時間の課題となる動きで「踊るのに適したテンポ」かどうかを確認しましょう。曲のテンポは基本となるビートが1分間に何拍か(拍/分=bpm:beats per minute)で表します。小中学生が動きやすいテンポは、120~150bpmくらい(歩いたり軽く弾んでジョギングしたりできる速さ)ですが、その時間の課題の動きによって、もっと遅い曲や速い曲が適している場合もあります。また、基本のビートの間に細かいビートが刻まれている曲なら、その細かいビートを捉えて踊ることもできますし、ともかく元気に動き回らせたいのであれば、もっとずっと速い曲もアリです。

子どもたちがよく知っている明るい曲を見つけたら、まずご自分でその曲に合わせて歩いたり走ったりしてみて、ビートが捉えやすいか動きやすいかを確認してみてください。

以下、J-popを中心にお薦めの曲をいくつか紹介させていただきますが、これがベストというわけではありません。子どもたちに「どんな曲が好き?」とリサーチするのが一番です。目の前の子どもたちに最適な曲を探してみてください。

 

♪We Will Rock You / Queen(83bpm)…ビートが明確、大きく弾んで体じゃんけんダンスに

♪ハピネス / AI(95bpm)…大きく揺れて踊るといい、かなり遅いので中高生向き

♪Won’t be Long/EXILE(106bpm)…ヒップホップ気分で踊れる、大きく弾んで踊ると良い

♪他12曲(会員限定)

 

音源リストを見て、メロディーを口ずさんだ方もいると思います。ぜひ、授業でご活用下さいね。来月は、運動会にお薦めの曲と構成をお届けします。お楽しみに。

 

第3回担当:K.N.

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「4年前の平昌五輪で私たちはそこで(ストーンの研磨後)大きな失敗をしてくれていた。なので、4年前の私たちの失敗がこの試合にすごく活きた。本当に無駄な経験なんて何ひとつないんだなって思った」

(ロコ・ソラーレ/日本の女子カーリングチーム.2018年平昌、2022年北京日本代表)

☆北京オリンピックで記念すべき銀メダルを獲得したカーリングチーム。彼女たちの諦めない姿勢とはじける笑顔に勇気づけられました(A.N.)☆

 

 

第2回 ☆Q&Aお悩み相談箱「研究発表会報告(第二弾)」

寅年からCJT定期便がリニューアルとなりました。本号はで、12月に開催された第51回体育指導者研究発表会の内容と質問(ダイジェスト版)の続きをお送りします。

 

個人研究部門として、石毛勝之先生(銚子市立明神小学校)は「誰もが得点をとる楽しさを味わうボール運動『ゴール型』の指導の在り方−タグラグビーのオフェンスに焦点を当てた指導を通して−」を発表してくださいました。石毛先生は、様々な手立てで、児童たちの技能差を吸収されていました。

例えば、教具。ラグビーボールを模したビーズクッションを使って、ラグビーボールの投補の難しさを吸収。そして、装着するタグの本数を二本に固定せず…(会員限定)。こういった柔らかい発想が随所に光る実践で、まさに、誰でもタグラグビーの醍醐味を楽しめる授業になっていました。

ゲーム中の状況判断能力やボールの軌跡分析、さらに技能下位児のタグの本数とトライ数の相関関係(一本だとトライできる)、トライと学習意欲の関係(トライできると意欲が高まる)など、分析項目は多岐にわたり、多くの成果と課題が発表されました。

児童たちが考えて成功した作戦例としなかったものも紹介され、もし今後実践するにあたり…(会員専用)。質疑の一部をご紹介します(会員はAも閲覧可)。

「Q:同じ学習内容を教えていて、B組は『楽しむ』が向上し、C組は『できる』が向上したようなのですが、なぜその違いが生まれたのでしょうか?」

「Q:タグを一本にしたことで、返って1人でトライしにいくようなワンマンプレーは生まれなかったですか?」

以上のようなやりとりが行われました。

 

プレゼンの中で、単元初めにタグを取られどうしたらよいかわからず立ち尽くす児童が、単元の最後に活き活きとトライをキメた様子(動画)が紹介され大変印象的でした。きっと、このトライはその児童の自信につながったはず。体育って楽しい!と思うきっかけになったのではないでしょうか。

連盟の会員専用ページには、当日配布された資料の全てが掲載されています。ご興味のある方は、事務局までお問い合わせください。

 

✰⋆。:今日のひと言゚・*:゚・⋆。✰

「僕は豊かな才能を持ったサッカー選手じゃない。だからこそ、人の何倍も努力しなければ、上へは行けない。僕から努力を取ったら何も残らない。」

(長友佑都(ながともゆうと、1986-)/日本の現役プロサッカー選手)

☆年齢を重ね体力的にはキツいはずですが…。彼が若手に負けずピッチを懸命に駆け回っている姿に励まされます。弱音を吐いている場合ではありませんね。(第2回担当:A.N)☆

 

第1回 ☆Q&Aお悩み相談箱「新春記念:研究発表会報告」

本号より、CJT定期便がリニューアルとなりました!「Q&Aお悩み相談箱」として、連盟行事の紹介に併せて参会者との質疑をご紹介したり、読者の皆様から連盟に寄せられた質問に連盟スタッフがお答えしたりするMLに変わります。今回は、新春記念号として、皆様に研究発表会の内容と質問(ダイジェスト版)を全文でお送りします。

 

第51回体育指導者研究発表会が、令和3年12月8日(水)14:00〜からZoomにより開催されました。市原ブロックの川口貴史先生(市原市立国分寺台中学校)は「主体的、対話的で深い学びの充実〜ICTを活用した予習型の学習カードを通して」を、石毛勝之先生(銚子市立明神小学校)は「誰もが得点をとる楽しさを味わうボール運動『ゴール型』の指導の在り方−タグラグビーのオフェンスに焦点を当てた指導を通して−」を発表してくださいました。

 

川口先生は、市原市で1人一台タブレットが配布された利点を活かし、授業中に試技動画を撮影する以外に効果的な方法はないか?と考え、事前に自宅で調べ学習を行い授業に臨む方法を考案されました。中学校2年生(男50名、女45名)を対象に、短距離走、リレー、マット運動、ハードル走、バレーボール単元で、授業の前に、種目の世界記録や日本記録、技能ポイント(専門用語等)を生徒達が自分で調べて、それらを授業に持ち寄って実際に試すという、いわゆる「反転学習」という授業方法でした。授業後のアンケートでは、90%越える生徒達が知識や技能が身につきやすくなったと回答していました。事前に学習する動きを想像してから臨むのでやりやすいといったプラス面や、ついでに色々調べるので物知りになれる、といった副産物も得られたようです。ただ、女子は、間違って覚えてしまった、調べたことのレベルが高すぎて不安を感じたなどのマイナス面もあったようです。

 

質疑の一部をご紹介します。

「Q:自分が調べたものと自分ができる技が合っていたのでしょうか。それはどのようにして調整したのですか?」

「A:確かに側方倒立回転しかできない生徒が、前方倒立回転跳びを調べてきたといったように、レベルが合わないものもありました。ただ、他に側方倒立回転を調べてきている生徒もいたので、仲間と情報のやりとりをする(対話学習をする)中で、自分に合った技を調べて挑戦できる様子が見られました」

 

「Q:調べてきた情報で生徒が間違ったやり方で取り組んでいるとき、先生はどのように対応しましたか?」

「A:バレーボールのオーバーハンドパスで、生徒達が三角形を作ろう、と盛んに言いながら練習をしていたのですが、実際はそれだとうまくできないんですよね。生徒達の事前学習を尊重しながらも、もう少し手を離したらどうなるかな?などと発問をして気づかせたりしました」

 

以上のようなやりとりが行われました。インターネットには情報が溢れていますので、調べる情報を限定して、「反転学習」がより効果的にできるように臨みたいですね。なお、連盟の会員専用ページには、当日配布された資料の全てが掲載されています。併せてご参照ください。

 

来月は、石毛先生の発表と質疑のダイジェストをお届けします。どうぞお楽しみに。

 

✰⋆。:・*今日のひと事*:゚⋆。✰

「どんなに的確な批評の言葉より、『おもしろい』の一言のほうが励まされるし、やる気も出るものです」

(星野源(ほしのげん、1981-)/日本のシンガーソングライター、俳優)

 

☆「肯定的な言葉かけ」は体育科の技能向上にも必須。悩んで立ち止まるときもありますが、寅年にあやかって、自分にもプラスの言葉を送りつつ、前向きに挑戦する心を持っていきたいと思いを新たにしています(第1回担当:A.N)☆

 

第50回(CJT定期便最終回) 「学習過程を重視するパフォーマンス課題と評価〜授業実践例〜(R3.12.2)

今月は、「パフォーマンス課題」を設定する手順と、その学習プロセスを実際に取り入れた教育現場の例をご紹介します。

「パフォーマンス課題」とは「様々な知識やスキルを総合して使いこなすことを求めるような複雑な課題」(西岡、2016)とされています。知識を「知っている」のではなく、様々な状況下で活用できる「実践力」へとつなげるための学習課題ということになります。これを設定する手順は、

① →単元の中核に位置する重点目標に見当をつける。

② →「本質的な問い」を明確にする。

③ →「本質的な問い」に対応して身に付けさせたい「永続的理解」を明文化する。

④ →「本質的な問い」を問わざるをえない文脈を想定し、パフォーマンス課題のシナリオを作る。

と示されています。では、具体的に見ていきましょう。

 

【小学校3年生の実践】※「倒立ができるようになろう」という目標ではないところに注目です。

○2020年1月、小学校 3 学年 4 学級計 142 名

○器械運動領域・マット運動「壁倒立」 全 6 時間実施

○パフォーマンス課題の手順

①→単元の重点目標:「手で体を支持して逆さになり、バランスをとりながら静止することができる」

②→本質的な問い:「どう逆さの姿勢を作るのか、どう逆さの姿勢を保持するのか。」

③→永続的理解の明文化:「手を肩幅に広げ、指を広げ、腕を伸ばして倒立の姿勢をつくる。倒立の姿勢では、指先付近を見て、腕や指、体幹部に適度に力を入れることで、まっすぐな倒立の姿勢を保つことができる。」

④→シナリオ:パフォーマンス課題へ挑戦した後に、「どこを頑張ったら、長い時間逆さになれるの?」と発問することで、パフォーマンス課題と「本質的な問い」をつなぎ、明文化された「永続的理解」の内容が学習内容として児童から引き出せるように設定。

○パフォーマンス評価→ルーブリック

この実践では、観点別ルーブリックの記述語を運動の感覚を表したオノマトペに変換し、「できない→ぐにゃ、ふにゃ」、「できる→グッ、ピン」、「安定してできる→ぎゅっ、ぴし」と設定したところが興味深いです。

 

研究の結果、オノマトペルーブリックを手がかりに学習を進めたことで「手をしっかりついて行う」等の運動の行い方の記述から「腕をピンと伸ばして、ギュッと力を入れて支える」等の運動の感覚に関する記述へと、児童の運動に関する理解が促されたことが明らかになりました。また、ルーブリックを用いたことにより、「運動の感覚を予想して、学習の目標設定を記述できる」ようになり、自己評価と次時への学習のつながりが見られるようになったのです。

学習の「結果」ではなく、学習の「プロセス」を重要視する学校教育へとパラダイムシフトが起こっています。そして、その「プロセス」を評価するために「ルーブリック」が注目されているのです。我々教師の教材観・教授観なども、同時に変わっていかなければいけないですね。

 

今回の第50回をもちまして、「CJT定期便」が終了となります。これまで四年二ヶ月と長期に渡り、講読してくださりどうもありがとうございました。

新年からは、新たな企画が始まります。どうぞお楽しみに。

 

今年も残り少なくなりました。忙しさに拍車がかかっていると思いますが、皆様のところに一つでも多くの幸せが訪れますよう祈っております。

本年もどうもありがとうございました。連盟も、先生方のお力になれるように、引き続き尽力して参りますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

第50回担当:A.N.

 

<参考>

結城光起・伊藤雅広・滝沢洋平・近藤智靖(2020)小学校3年生のマット運動における「運動に関する理解」についての検討:「オノマトペを用いたルーブリック」に着目して. 日本体育大学大学院教育学研究科紀要 4(1)pp.181-197

西岡加名恵(2016)教科と総合学習のカリキュラム設計 パフォーマンス評価をどう活かすか.図書文化.

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

人を信じよ、しかし、その百倍も自分を信じよ。

手塚治虫(日本の漫画家/1928 – 1989)

 

第49回 「学習過程を重視するパフォーマンス課題と評価〜知識・スキルを使いこなす能力を重視する授業実践〜(R3.11.1)

今月は、学習過程を重視する「パフォーマンス課題と評価」について取り上げます。2016年12月の中教審答申でも、「資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である」と示されました。ここに、評価の捉え方・行い方が変わってきていることを確認できます。これからの学校教育では、得た知識をどのように【活用する】か、そして活用した力をどのように【評価する】かが重要なのです。

 

では、「パフォーマンス課題」とは、一体何なのでしょうか。これは「リアルな文脈の中で、様々な知識やスキルを応用・総合しつつ何らかの実践を行うことを求める課題」と定義されています。ガスバーナーの操作法などを問う単純なスキルは…(会員限定)と呼ばれ、実験を計画・実施して結果と考察を…(会員限定)が「パフォーマンス課題」ということになります。

運転免許取得のプロセスを考えるとわかいすいでしょう。道路交通法などに関する知識を選択問題によって問うものが「学科試験」、いわゆる従来の学力テストです。これに併せて、獲得した知識を応用して運転手として実際の場面で技能発揮できるかを問うのが「路上検定」、これがパフォーマンス課題です。この二つの両輪がそろってようやくパフォーマンスの評価が可能になるのです。

 次号のCJT定期便最終号は、この「パフォーマンス課題」の4つの要素と、学習プロセスを実際に取り入れた教育現場の例をご紹介します。

 

第49回担当:A.N.

 

<参考>

EFORUM京都大学大学院教育学研究科

https://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/seika/glossary/#001 他

 

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

子どもっていうのは、可能性の生き物なんですよ。たくさんの選択肢を毎日持ってるんです。大人も実はそうなんですけどね。

宮崎駿(日本の映画監督、株式会社スタジオジブリ取締役/1941-)

 

第48回 「逆向き設計(backward design)で指導と評価のあり方を考える②実践編(R3.10.1)

先月配信しました第一弾、評価の「逆向き設計(backward design)」の概念、いかがでしたでしょうか。まず単元最後のゴールを設定し、それを達成するためのめあてや学習内容を遡って構築していくこの方法論は、「どのように学ぶか」つまり「質の高い学習過程」を保障するために注目されてきています。本号は、第二弾の実践編②としてお届けします。

 

この「逆向き設計」では、「本質的な問い」が重要です。以下のような問いを比較すると明確です。さて、どちらが「本質的な問い」でしょうか?

 

☆今日の日の出の時刻は何時? ⇔ ▽星は天球上をどのように動くのだろうか?

 

結果は…そう▽の方です。☆は単純な知識を尋ねていますよね、知っていたら○知らないと×です。▽は答えに広がりがあり、様々な想像が生まれることがわかります。

体育科・保健体育科の包括的な「本質的な問い」として、北原(2013)は「どうすれば自主的・継続的に心身の発達と健康の保持増進を図ることができるのか」と仮説的に提案しています。これは、各運動領域・分野に落として考えると…(会員限定)という「本質的な問い」になるのではないでしょうか。私たち教師は、目の前の単元だけに縛られるのではなく、包括的に、児童・生徒達のQOLを念頭に置きながら、各単元に臨む必要があるのです。

 

この「本質的な問い」の成果は、「パフォーマンス課題」により評価します。これは、○×では測れない…(会員限定)です。保健体育の例でいえば、「ある児童・生徒は、最近朝起きるのをしんどいと感じるようになってきました。体重は増えているのに、息が上がるし、集中力も続きません。この児童・生徒が健やかに生活していくための方法を検証してみましょう」みたいな感じです。この「パフォーマンス課題」はおそらく、体育分野と保健分野を網羅し関連させて、早寝早起き、日差しの身体に与える効果、睡眠の質、運動の量と質、摂取カロリーと運動のバランス、体力と学力の関係、自分の体にあったトレーニング方法等々、多くの知識をどのようにアウトプットするかということになるでしょう。授業では…(会員限定)。そして活動が終わったら、この活動がどうだったのか、教師と児童・生徒が一緒に目標と結果を照らし合わせ「何ができた?もっとチャレンジしたかったことは?次はどうする?」など、振り返りを行っていきます。

国政研は、「主体的に学習に取り組む態度」の評価イメージとして、「粘り強さ」と「学習の調整力」の二つを提案しています。ここには…(会員限定)。

 

「逆向き設計」の概念は少し難しいですが、体育授業の指導過程を少し工夫するだけでも近づけそうです。器械運動であれば、様々な技を関連付けてできるようになることをゴールに設定し、「自分の体が一番気持ちよい場所を見つけてみよう」などのめあてを掲げる、そして、手を着く位置、足の高さ、視線、背中の反り等を体験的に見つけさせていくのも良いでしょう。これであれば、各々が自分の身体と対話しながら様々な技を関連付けながら楽しめるはずです。例えば、算数で言うところの「1+1=?」のように、倒立の技能を「手はここについて目はここを見て倒立ができるかな?」と教えるのではなく、それぞれの体にあった場所を見つけさせていくとまた違った面白みが見えてくるように思います。(倒立したときにマットを見るのではなく顎を引かせるとおもしろいですよ、くるん!って回ってしまいます⇒倒立前転のできあがり!)

 

宣言は解除となりましたが、不安が消えない毎日です。皆様の目の前の児童・生徒たちが、そして何より先生方が笑顔でのびのびと豊かに生活できるようになる日を祈るばかりです。

 

第48回担当:A.N.

 

<参考>

西岡 加名恵(2013)「逆向き設計」論との出合い : 『理解をもたらすカリキュラム設計』を翻訳して. 教育方法の探究 (16), 1-8

北原琢也(2013)解説「E.FORUMスタンダード体育科・保健体育科(第1次案)」について 

https://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/files/kaisetu-taiiku-hotai.pdf

 

 

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「仕事は人生の大部分を占める。心からの満足を得る唯一の方法は、素晴らしいと思える仕事をすること。そして素晴らしい仕事をするには、自分がやっていることを愛することだ。それがまだ見つかっていないのなら、探し続けろ。」

スティーブ・ジョブス(Appleの共同設立者の一人/1995-2011)

 

第47回 「逆向き設計(backward design)で指導と評価のあり方を考える①(R3.9.1)

皆さん、「指導案を立案してそのとおりに授業を展開したけれど、評価がなおざりになってしまった、評価ができなかった、指導案に評価の観点を盛り込みすぎた…」こういった経験、ございませんか?今月は、より確実に「主体的な学び」につながる、評価の「逆向き設計(backward design)」についてご紹介したいと思います。本トピックは次回までの二回配信の予定で、本号は概念編①となります。

 

「逆向き設計」という概念は、ウィギンズとマクタイが書いた著書をカリキュラム研究が専門の西岡(2012)が訳本として出版し、我が国に入ってきました。「何を身につけさせたいか」という教育の成果から逆向きに授業を設計し…(会員限定)になっています。この「逆向き設計」は、“単元後や一年後などの学習後にこうなっていたい”という姿を明確に掲げ、それに向かって学習を展開することにより…(会員限定)。では、具体的にどのように授業を行っていくのでしょうか。

 この設計による授業では、「知識」を…(会員限定)。次回の実践編②でご紹介していきます。どうぞお楽しみに。

 

第47回担当:A.N.

 

<参考文献>

西岡 加名恵(2013)「逆向き設計」論との出合い : 『理解をもたらすカリキュラム設計』を翻訳して. 教育方法の探究 (16), 1-8

 

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「練習というのは時間より質が重要なので、『自分は今100%集中しているか?』と、常に自分に問いかけながら練習しています」

国枝慎吾(プロ車いすテニス選手/1984-)

 

第46回 「できる」と「できない」の間が楽しい〜“発達の再近接領域”を意識することの大切さ〜(R3.8.1)

今月は、心理学者ヴィゴツキーが提唱した「発達の再近接領域」に着目する体育授業実践についてご紹介します。

 

「発達の再近接領域」とは、以下の文献では…

「子どもが自力で可能な水準と大人の援助を受けて可能になる水準の間のこと(中川,2020p.27)」

「自分一人では到達できないものの、他者の支援があれば発達できる領域(梅澤,2018,p.145)」

と言及されています。これは言い換えると…(会員限定)。体育授業に限らずどの”学習”においても、このレベルをどのように定めるのかが、”主体的・対話的な学習”の質を定める要になると考えます。

 

梅澤(2018)は、中学校第1学年の「器械運動」の授業で「逆さで止まる感覚を楽しみ合おう」というねらいを設定して実践しました。その様子をご紹介しましょう。

まず以下の約束事を周知してから実践しました。

一つ目「できるとできないの間を楽しむこと」⇒できるとできないは、50対50の状態が最も面白いこと。

二つ目「安心感を与え合うこと」⇒仲間同士怪我をしない、させないという責任を互いに持ち寄ること。心の安心感を与え合うために、失敗をあざ笑うことは禁止。

 

梅澤は、このような条件下で…(会員限定)し、生徒達は探り合っていきます。

実際の授業では、

・体を反らせる子

・補助役に無理矢理脚を持ち上げられる子

・補助役まで脚が振りあがらない子

と、様々な「できない」が交錯しますが…(会員限定)。そして、「どのように支えて欲しい?どうしたら自分(友だち)が目指す姿(技)に近くなる?」と相手を慮る対話が生まれていきます。

 

主体的・対話的で深い学びを求めつつも、技能的達成の保障が求められる体育。どうしても、指導要領で目標とする「できる(技能)」目標に、最短・最速に近づけてあげたくなる私たち教師ですが…。こういった、「できる」と「できない」の間を楽しむ授業を基に、身体感覚を耕し、対話の中で運動自体を楽しめる児童・生徒達を育みたいものです。

 

 

第46回担当:A.N.

 

<参考文献>

中川 昌幸(2020)小学校体育授業における指導法の一考察 -子どもの主体性をはぐくむサポートとは-.平安女学院大学研究年報第21号.pp.23-32.

梅澤秋久(2018)体育における「学び合い」の理論と実践.大修館書店.東京

 

第45回 運動共感能力を高めるICT活用のアイディア(R3.7.2)

今回はトピックを変えて、体育におけるICT活用についてお届けしていきます。

 

皆さんどうしていますか?体育授業でのICT活用。筆者は、もどかしさを感じずにいられません。ダンス授業でのこと。目の前の小グループと後で動画を視聴して学びを深めようと、タブレットを手に学生達の作品を録画するのですが…。タブレットの画角に彼らを納めようとすると、自身の眼がタブレット画面に縛られ本人達の踊っている(躍動している)身体を観られず後悔すること多し。かといって本人達を観てしまうと自身の心の動きに併せてタブレットも動いてしまい、結果彼らが画角からいなくなってしまって後で使えない映像に…。それはそれで後悔なのです。

 

こういったことは、タブレットを活用する児童・生徒にも起こっているように思うのです。皆さん、タブレットを、児童・生徒達の手に持たせて互いの運動を録画させていませんか?

 

実はこれ、体育授業における“運動共感能力の育成”という視点では、“もったいない使い方”なのです。真の共感は「身体的共感」とも言われ…(会員限定)。これは、頭で理解する「認知的共感」とは異なります。渡辺(1993)は、マイネルの理論を用いながら、人は眼前に展開される運動の…(会員限定)。つまり、私たちは目の前で繰り広げられる運動が持つ運動リズムを…(会員限定)。先述した筆者のもどかしい経験は、“タブレットを通して”目の前の運動をデジタル的に観てしまうことにより、身体が本来持っている運動共感能力が阻害されていたからだと思います。確かにタブレットは…(会員限定)。ただ、使い方次第で、子どもたちの身体に元来備わっている運動共感能力を阻害することにもつながるように思います。タブレットでの録画は…(会員限定)。

ここからしばらく体育授業におけるICT活用について、取り上げていこうと思います。ぜひ日ごろの実践にお役立ていただければと思います。

 

第45回担当:A.N.

 

<参考文献>

渡辺悦男(1993)器械運動学習における児童の運動共感に関する基礎的研究.スポーツ教育学研究(13)pp.15-24.

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

「The sun after the rain is much beautiful than the sun before the rain.(雨あがりの日差しは、よりいっそう美しい)」

Mehmet Murat İldan(トルコの作家/1965-)

 

第44回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(7)水泳運動のアイデア(R3.6.2)

今月は水遊び・水泳運動・水泳のスリーアップ実践例をご紹介します。スリーアップ最終号となります。

 

◎小学校低学年 水遊び(もぐる・浮く運動遊び)のスリーアップ実践例1)

広島県廿日市市立四季が丘小学校の松田綾子先生は、水遊び(もぐる・浮く運動遊び)の導入として息継ぎの感覚「パッ!」を身に付けさせるための遊びを取り入れています。

<ポイント>

①少しずつ水に慣れさせるよう、初めはプールサイドで動きを試してから水中へ、2人組から徐々に人数を増やす、もぐる・浮く時間を徐々に長くするなど、スモールステップで進める。

②運動能力に差異のある2人組を作り、手をつないで動いたり、見せ合ってアドバイスを伝えたりして泳力のない子どもも安心して取り組めるようにする。

③自分たちで動きを工夫して、どのような動きがいいかを試させ、よりよい動きを見つけさせる。

活動1:水中電車ごっこ

前の人の肩に手をかけて連結し、みんなで楽しく歩いて進む。まずプールサイドで、大きく足を動かす、頭を水中に入れる動きを練習してから水の中へ。頭を水中に…(会員専用)。

活動2:いろいろな「パッ!」で遊ぼう!(息をすったり吐いたり止めたり)

息継ぎの「パッ!」とともに手を「パッ!」と広げたり、腕を伸ばしたり、全身で「パッ!」を表現してみる。プールサイドで試してから水中へ。水に潜ってバブリングから「パッ!」で遊ぶ。水を嫌って…(会員専用)。

活動3:いろいろな「パッ!」を創って遊ぼう!

2人で手をつないで浮き、「パッ!」で息継ぎする。つないだ腕を伸ばしたり、横に広げたり…(会員専用)。

 

◎小学校高学年 水泳運動のスリーアップ実践例2)

東京都港区立赤羽小学校の江原美沙先生は、水中で歩く遊びを楽しみながら水の圧力や浮力などの特性を感じ取り、泳ぐ動きの身体感覚や知的理解につなげる工夫をしています。

<ポイント>

①水中で歩いたり走ったりしたり、水の流れに逆らって歩いたりすることで、水圧を身体で感じ、水中で運動する感覚を味わわせる。

②2人組で追いかけっこをする中で、どうすればより速く動けるかを考えさせ、泳法の理解につなげる。

③腕で水をかく動きの大切さに気付かせ、クロールや平泳ぎの腕の動きにつなげる。

活動1:みんなで歩いて流れるプールを作る

プールの浅いところから入水し、一方向に周回して歩き…(会員専用)。

活動2:流れるプールの中で鬼ごっこ

2人組でランニング鬼ごっこ。はじめは流れに乗って、途中で向きを変え、流れに…(会員専用)。

活動3:リズムダンスをしながら歩く

音楽に合わせてリズミカルに動き、水に慣れる。弾む、沈む、浮く、歩く、水を…(会員専用)。

 

◎中学校 水泳のスリーアップ実践例3)

東京学芸大学の森山進一郎先生と同附属小金井中学校の上野佳代先生は、浮力、水圧、水温、抵抗という水の物質的特性を知識として理解するとともに、身体感覚で味わい、仲間と相談しながら動きの学習につなげる工夫をしています。

<ポイント>

①初回の授業では、水の性質についてICT等を用いて視覚的に理解させる。プールでは、水中と陸上で同じ動作を行い、水の抵抗などの特性を体感させる。

②水泳授業での到達目標が同じ者でグループを組み、課題解決に向けてのアプローチ方法を相談したり、互いの動きを見合ってアドバイスし合ったりさせる。

③毎時間、水の抵抗や浮き姿勢の確認を取り入れ、各種泳法の基礎技能の習得につなげる。

活動1:本時の学習活動をグループで相談する

本時の活動で何を目標にどのように練習するかをグループで相談して決める。話し合いの材料として…(会員専用)。

活動2:いろいろな浮き方に取り組む

うつ伏せ姿勢、仰向け姿勢、浮き具を使った浮き姿勢などを試し、グループで…(会員専用)。

活動3:手の形と水の抵抗・推進力の関係を試す

グ―、チョキ、パー、指を揃えた手など、形を変えてみたり、グループで様々な…(会員専用)。

 

水は地球上の生物の母胎であり、命を支えてくれる大切なものです。しかし時として水は生命を脅かす存在ともなります。水中での効率の良い動作の獲得は、子どもたちの命を守る上でも重要な学習課題です。楽しみながら、子どもたちが主体的に工夫しながら水中動作を学べるように計画された先生方の実践はどれも素晴らしいですね。このほか、『体育授業「導入10分」の活動アイデア』には「なんちゃってシンクロ」で前時までの学習を復習するなどのアイデアも紹介されています。この夏のプールで水遊び、水泳運動、水泳のスリーアップを是非お試しください。

マスクのできない水中運動。一日も早くコロナが収まって楽しい夏が来ることを祈ります。

 

第44回担当:K.N.

 

1) 松田綾子「心も体も笑顔もパッ!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

2) 江原美沙「プールに入ったらスイッチオン!心も体もウォーミングアップ」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

3)森山進一郎・上野佳代「水中ならではの特別な感覚を全身で感じよう!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

 

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

「君たち。君たちはつねに晴れあがった空のように、たかだかとした心を持たねばならない。同時に、ずっしりとたくましい足どりで、大地をふみしめつつ歩かねばならない」

司馬遼太郎( 日本の小説家、ノンフィクション作家、評論家/1923-1996)

 

 

第43回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(6)表現運動のアイデア(R3.5.2)

今月はダンス・表現運動のスリーアップ実践例をご紹介します。

 

◎小学校低学年 表現リズム遊び(表現遊び)のスリーアップ実践例1)

お茶の水女子大学附属小学校の栗原知子先生は、表現遊びの導入に鬼遊びや歌遊びを取り入れて、ピタッと止まる動きや、いろいろな物にすぐになりきって動く活動を体験させています。

<ポイント>

①あまり体験したことがないような動きに挑戦させ、動きの幅を広げる。最大限の力を出し切って動くことに挑戦させる。

②鬼の動きに対応したり友達の動きを真似したりして、仲間に合わせて動く力をつけさせる。

③いろいろな物のイメージですぐに動くように促す。その際、多様な動き(跳ぶ・転がる・捻じるなど)を含む題材を提示し、イメージと動きの幅を広げる。

活動1:いろいろ氷鬼

どこへ行くか判断し…(会員限定)。

活動2:トントントン、何の音?

鬼役の先生が…(会員限定)。

 

◎小学校中学年 表現運動(リズムダンス)のスリーアップ実践例2)

神奈川県葉山町立長柄小学校の青山慎二先生は、リズムダンスの導入に準備運動のような動きをリズムに乗せて動き、だんだん速くなるリズムに乗って簡単な動きを繰り返すだけでダンスになることを知らせて創作学習へとつなげています。

<ポイント>

①身体をぎりぎりまで大きく動かすように指導する。

②はじめは輪の中に先生が入って、グループでは輪になって互いを見ながら感じあって踊る。

③仲間の提案した動きをすぐに動いてみることで、積極的に相手を受け入れ合う。

活動1:先生と一緒に8421のリズムで踊る

最初に…(会員限定)。

活動2:グループでオリジナルの動きを取り入れる

4人組で…(会員限定)。

 

◎中学校 ダンス(創作ダンス)のスリーアップ実践例3)

大妻多摩中学高等学校の熊谷昌子先生は、創作ダンスの学習テーマに合わせて、題材の動きを取り入れたウォームアップを提案しています。例えば、学習テーマ「群(空間)の変化」の題材「集まる-跳び散る」の導入として、仲間と共に走ったり跳んだりという日常動作を繰り返し、踊ることへの抵抗感を下げ、安心して精一杯の動きができるように工夫しています。

<ポイント>

①精一杯の動きを体感できるように、全力で走る、力を溜めてから思い切りジャンプなどを含んだ一連の動きを曲に乗せて踊る。

②輪を作ることにより、仲間の様子が良く見えて安心できる。

③「走る-止まる」「ためる-跳ぶ」「集まる-跳び散る」などダンス創作学習の核となる動きを体験し、その後の主活動に抵抗なく入れるようにする。

活動1:決まったメンバーと思い切り動く

3~6人程度のグループで…(会員限定)。

活動2:いろいろな跳び方を試す

いろいろな…(会員限定)。

活動3:いろいろな仲間と

⑤で集まる時、太鼓の音の数で…(会員限定)。

 

◎中学校 ダンス(現代的なリズムのダンス)のスリーアップ実践例4)

現代的なリズムのダンスでは、音楽のリズムの特徴を捉えてリズムに乗って踊ることが学習目標ですので、その時間の主活動で使う曲のリズムに乗って簡単な動きで先生と一緒に踊ることから始めます。慣れてきたら、生徒が即興で自由に動きを工夫して踊る活動を取り入れると創作学習につながります。「ダンスって難しそう」「流行のアーティストの振付を覚えて踊ることがダンスだ」と思っている生徒に、どんな動きでもダンスになること、何でも思いついた動きをリズムに乗せて踊ればいいことを理解させ、動きづくりのヒントを提供します。生徒がよく知っている曲、単元の導入では陽気なサンバのリズムの曲が楽しく乗って踊れるのでお勧めです。

<ポイント>

①そっくり真似できなくても、どんな動きでもいいから、元気よく、のりのりで踊るよう声かけする。

②先生も生徒もいろいろな方向に自由に進んで踊ると互いの動きを見合うことができて盛り上がる。

③リズムの捉え方をゆっくり~倍速に変えたり、方向や高さ、手の動きを変えたりして動きの発展方法を知らせる。「見てすぐ真似る」というグループ創作学習の基本的な態度を身に付けさせる。

活動1:先生と一緒に「何でもダンス」

誰でもすぐに…(会員限定)。

活動2:リーダーに続いて「何でもダンス」のりのりパレード

3~4人組で…(会員限定)。

 

ダンス・表現運動の授業の導入では、「恥ずかしい」「どう動いていいかわからない」という子どもたちを短時間で表現の世界に誘うために考案されたダンスウォームアップの有効性が実践実証されています。ダンスウォームアップからヒントを得て、体育の全種目についてもスリーアップを応用することが提案されました。ダンスウォームアップ(スリーアップ)は「明日からトライ!ダンスの授業」4)や「みんなでトライ!表現運動」5)などの指導書にもたくさん提案されていますので参考になさってください。

次回はシリーズ最終回、「水泳」のスリーアップをご紹介します。

 

1) 栗原知子「なりきって動こう!ピタッと止まろう!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

2) 青山慎二「8421魔法のリズム―だんだん早くなるリズムの変化を楽しもう!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

3)熊谷昌子「『ぎゅっと-ぱっと』の感じで遊ぼう―群の課題『集まる-跳び散る』の前に」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

4)中村恭子「『何でもダンス』でのりのりパレード」.『改訂版 明日からトライ!ダンスの授業』大修館書店,2021刊行予定.

5)『みんなでトライ!表現運動の授業』大修館書店,2015.

 

第43回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

「私の芸術は、しぐさや動きによって、私という存在の真実を表現するためのものである」

イサドラ・ダンカン( 20世紀を代表するアメリカのダンサー・モダンダンスの祖/1878-1927)

 

第42回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(5)体つくり運動のアイデア(R3.4.1)

今月は体つくり運動のスリーアップ実践例をご紹介します。【新学期特別号】として、今月は全文を配信します。

 

◎小学校低学年 体つくりの運動遊び(用具を操作する運動遊び:長縄跳び)のスリーアップ実践例1)

新潟県新潟市立沼垂小学校の菅原知昭先生は、長縄跳びの授業の導入に、様々なリズムやタイミングで跳ぶウォームアップで動きの感じ方の違いを体験させています。また、仲間と協力して縄抜けに挑戦させ、走り出しのタイミングを掴ませて縄への恐怖感を減らし、楽しく主運動へとつなげています。

<ポイント>

①音に合わせた運動にすることで、リズムに合わせようと床を踏みつける力を調整したり、走る動作から音に反応して跳ぶ動作への切り替えの感覚を身に付けることができる。

②4人組で協力して活動する。③遊び感覚でリズム感と意思決定力を養える。

活動1:元気アップタイム

タンバリンのリズムに合わせて、ケンケンやスキップで進み、折り返しはダッシュで戻る。

活動2:タイミングジャンプ

不規則に鳴らされる太鼓の音に合わせて、走りながら様々なタイミングでジャンプする。

活動3:かぶり回し長縄の走り抜け

縄に入るタイミングを仲間同士で「ハイ!」など声掛けしあい、協力して走り出すタイミングを考える。例)縄が床に着いた音が走り出しのタイミング。

 

◎小学校中学年 体つくり運動(多様な動きを作る運動)のスリーアップ実践例2)

神奈川県相模原市立田名小学校の新井康平先生は、遊び感覚で運動の力加減や身体操作感覚を身に付けさせるウォームアップを提案しています。仲間と試行錯誤して動きのコツが「わかる」と「できる」につながる楽しさを体験させ、運動意欲の向上につなげられます。

<ポイント>

①自分の身体の状態に気づきやすいように、全員が参加できる簡易的な活動にする。

②4~6人組で「どのような動きをすればいいのか」の視点で考え合う対話的活動とする。

③主運動で必要な技能(力加減、方向、姿勢、体の使い方)と課題解決のための思考力が養われる。

活動1:フレンズキャッチボール

2人組でボールを真上に投げ、互いに相手のボールの真下に移動してキャッチ。互いにキャッチしやすいような投げ方を工夫する。慣れてきたら人数を増やし、隣の人のボールをキャッチ。最後は全員で。

活動2:雑巾ダッシュ

2~3人組で1人が雑巾の上に乗り、仲間が力を合わせて引っ張り、他の組とリレー競争する。雑巾に乗る人の姿勢、力の入れ方、引っ張る時の腕の状態、引っ張る方向などを工夫する。2チーム合体して雑巾に乗る人を横並び、縦並びに増やすなど、発展させて楽しめる。

 

◎中学校 体つくり運動(体ほぐしの運動)のスリーアップ実践例3)

お茶の水女子大学附属中学校の君和田雅子先生は、中学生になって初めて出会う仲間と呼吸やタイミングを「あわせて」動くことで、協働して運動する楽しさに気づき、身体も心も耕すウォーミングアップを提案しています。

<ポイント>

①「時間・空間・力」の感覚を共有することで、他者を通して自分の身体を見つめる。

②「よく見ること、見たらすぐに動くこと」を原則とし、2~4人の少人数グループで集中して相手の動きを聴きあえるようにする。

③シンプルな動きをベースに、互いの身体をどうやって「あわせていく」のかを思考し、動きの聴き合いを通して協働する運動のおもしろさを学べる。

活動1:あわせて進もう(毎時間いろいろな動きで)

グループで縦一列や横一列に並び、移動の速さやコースをあわせて進む。仲間の呼吸や動きを感じあい、伝え合う活動。毎回少しずつ要素を加えて難易度をあげていく。

活動2:力を合わせて窓をつくろう

2人組で両手をつなぎ2人の間に窓(空間)を作る。横向きで引っ張り合い、向かい合って体重をかけ合い、背中向きで相手にぶら下がって、向かい合って引っ張り合いながら交互に立ったりしゃがんだりなど、相手の体重とのバランスを取りながら他力の動きを楽しむ。相手を替えると力加減も変わる。

活動3:あわせてジャンプ、ずらしてジャンプ

まずは黙って、グループでしゃがんだ姿勢からジャンプ。「どうすればリズムやタイミングを合わせられるかな? 目で合図? 声で? 手をつないで?」「交互にタイミングよくジャンプできる?」「連続でできる?」など、動きを合わせる方法を工夫させ、相手の動きを聴きあって動けるようにする。

 

仲間と協力し、体の動きで感じあいながら楽しくウォームアップできるとともに、運動の基本となる身体感覚や技能を育成する活動になっていますね。これらのウォームアップは体つくり運動だけでなく、さまざまな種目の導入としても活用できると思います。子どもたちが試行錯誤を楽しみながらワイワイと意欲的に活動する様子が目に浮かびます。

次回は「表現運動・ダンス」のスリーアップ実践例をご紹介します。スリーアップシリーズもいよいよ終盤です。日々の実践にどうぞお役立て下さい。

 

1) 菅原知昭「いろいろなリズム・タイミングでウォームアップ!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

2) 新井康平「動きの『わかる』が『できる』につながる!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

3)君和田雅子「あなたの隣、あなたの後ろ、みんなで丸くなって、あわせて動く」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

 

第42回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。

「動きはバランスが崩れないと始まらない。しかし、バランスが取れなければ、動きは成り立たない」

野口三千三(野口体操の創始者、東京芸術大学名誉教授/1914-1998)

 

第41回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(4)ゲーム・球技のアイデア(R3.3.1)

今月は小学校のゲームや中学校の球技のスリーアップ実践例をご紹介します。
◎小学校中学年 ゲーム(ベースボール型)のスリーアップ実践例1)
東京都中野区江原小学校の花坂未来先生は、「だるまさんが転んだ」や「六むし」などの伝承あそびを用いたベースボール型ゲームのウォームアップで、ゲーム中に自分がどこまで進めばよいのかの判断力を身に付けさせられると言います。短時間でも効果を高める工夫をご紹介します。
<ポイント>
①自分で走る、止まるを「判断」する。
②負けても繰り返し活動に参加できて楽しめる。
③走るときは思い切り走るのでウォームアップになる。
「だるまさんが転んだ」
チーム単位で行う。鬼に動いたことを指摘された人は、捕まるのではなく、スタート位置から何度でも挑戦できる。誰かが鬼にタッチした時に…(会員専用)。
「六むし」
鬼にボールを当てられずに6往復できれば成功。ボールを当てられたら0むしから再スタート。鬼の動きを見ながら走るタイミングを…(会員専用)。
なるほど、鬼ごっこなどの伝承遊びはどれも子どもが自分で判断して行動を決める活動なのですね。主体性や判断力、協調性を育む活動として、もっと取り組ませたいものです。
 
◎中学校 球技(ゴール型:バスケットボール)のスリーアップ実践例2)
東京都北区桐ヶ丘中学校の細目忠男先生は、バスケットボールの準備運動として音楽とボールを用いた活動を取り入れています。仲間と関わりながら活動してボールに対する恐怖心を減らし、徐々に運動強度を高めて、心技体のアップを図る活動のいろいろをご紹介します。
<ポイント>
①ボールを持つ指先の感覚や体温の変化など、自分自身と対話しながら活動する。
②4人組で仲間と動きで感じあい、互いを理解する。
③ボールの特性を理解し、ボールの扱いに慣れる。
活動1:ボール背中当てラン&ウォーク
バスケットボールをチェストパスの持ち方で持ち、音楽に乗せて縦一列で仲間の背中にボールを当てて離れないように…(会員専用)。
活動2:ボールを使ってやってミラー
2人組で互いに片手でボールを押して保持し、相手の動きに合わせて動く。守備の動きが…(会員専用)。
活動3:ボールを渡そう!
1人1つボールを持ち、グループで背中合わせに円を作り、前後左右に体を…(会員専用)。
活動4:心の中で1・2・3!
グループで内向きで円になり、「1・2・3!」の掛け声とともにボールを右回り左回りに回す。次に3回その場でドリブルを行ってから隣の人に回す。慣れてきたら…(会員専用)。
活動5:輪になって「ドン!1,2」
まず1回ボールを床に突き、「右足、左足」で足踏みを行い、左手でボールを持ち上げる。左右反対も。レイアップシュートの動作へとつなげる。
 仲間と協力し、体の動きで感じあいながら楽しくウォームアップできるとともに、どの活動もバスケットボールの基本的な技能の習得につながるように工夫されていますね。単なる体の準備運動だけではなく、意図的に主運動につながる技能の導入になっているところが素晴らしいと思います。
『体育授業「導入10分」の活動アイデア』にはこのほかにも多数のボール運動や球技のスリーアップの実践例が発達段階別に紹介されていますので、ご興味のある先生は是非ご参照ください。
次回は4月の新年度に取り組みたい「体つくり運動」のスリーアップ実践例をご紹介します。
1)花坂未来「伝承遊びでウォームアップ!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.
2)細目忠男「見て,感じて,やってミラー!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.
第41回担当:K.N.
*:・゜。*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*:・゜。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
山本五十六(新潟県古志郡長出身の海軍軍人、太平洋戦争に反対しながらも
「真珠湾攻撃」や「ミッドウェイ海戦」を指揮した連合艦隊司令長官/1884-1943)

 

第40回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(3)器械運動のアイデア(R3.2.1)

先月は器械運動「鉄棒運動」のスリーアップについてご紹介しました。今月は器械運動「マット運動」のスリーアップをご紹介します。

 

◎中学校 器械運動(マット運動)のスリーアップ実践例

東京都町田市立つくし野中学校の石川安彦先生は、マット運動の集団演技づくりに向けた心と体の準備として、音楽に合わせて仲間とシンクロして動くウォームアップの実践例を紹介しています1)。仲間の動きを感じながらタイミングを合わせて一緒に動くことで、相手や自分の身体と対話できます。シンクロする楽しさを感じながら、課題に向き合うことができるようになります。

<ポイント>

①準備運動の中で、バランス感覚や体幹に力を入れる感覚を養う。

②楽しくマットに身体を接触させる場面を増やすことで恐怖心が軽減される。

③安全面に配慮したうえで仲間との距離をできるだけ近づけることで、互いの息やタイミングを感じて動きを合わせる。

④内容に合わせて適切な速さの音楽を用いると動きやすい。

活動1 真似っこリレー【やや速いテンポの曲】

チームごとに縦に並び、先頭の子どもが自由にコースを決めて走る。教師の笛の合図で先頭の子どもが片足立ちのバランスのポーズを自由に行い…(会員限定)。

活動2 身体と対話【ゆっくりなテンポの曲】

チームで円になって互いを見合いながら身体を動かす。首、手首、股関節等を動かし…(会員限定)。

活動3 せーのでゆりかご・川とび【やや速いテンポの曲】

全員でタイミングを合わせてゆりかごをした後、勢いをつけてその場で立ち上がる。

川とびは2人ずつ…(会員限定)。

活動4 みんなでゴロゴロ【速いテンポの曲】

マットの上にチームで横並びに手足を伸ばして寝転がり、その上に…(会員限定)。

 

このほかにも『体育授業「導入10分」の活動アイデア』には多数の器械運動(マット運動)のスリーアップの実践例が発達段階別に紹介されていますので、ご興味のある先生は是非ご参照ください。

次回は、ボール運動・球技のスリーアップの実践例をご紹介します。

 

1)石川安彦「みんなで動くって楽しい!仲間を感じるシンクロ!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

 

第40回担当:K.N.

 

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「人にできて、きみだけにできないなんてことあるもんか。」

ドラえもん(日本のネコ型ロボット / 2112~)

 

第39回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(2)器械運動のアイデア(R3.1.1)

先月は、陸上運動・陸上競技のスリーアップの実践例をご紹介しました。今月は、器械運動のスリーアップについてご紹介します。新春特別号として、皆様に全文をお届けします。

 

◎小学校中学年 器械運動(鉄棒運動)のスリーアップ実践例

北海道北見市立緑小学校教頭の池田潤先生は、鉄道運動に必要な基礎感覚づくりを、遊びの要素を多く取り入れたウォーミングアップの中で身に付けさせているそうです。鉄棒運動は日常では行わない運動ですから、自分の身体の感覚との対話が重要になります。そして、冷たい、硬い、高い鉄棒への抵抗感を減らすことも必要です。なるべく気軽に、楽しんで鉄棒に触れることから始めたいですね。本稿では、池田先生が実践された鉄棒運動のウォームアップ1)の中からいくつかをご紹介します。

<ポイント>

①鉄棒運動に必要な腕支持感覚、回転感覚、高さ感覚、振り感覚等の基礎感覚を高める。

②回数や秒数を一緒に数える、見合う、一緒に挑戦する等、仲間と関わる場を設定する。

③単元前半は教師の意図したゲーム活動でさまざまな基礎感覚づくりを、後半では、自分の課題等をもとにウォームアップの種目を選択して主体的な活動へとつなげる。

 

【腕支持感覚スリーアップの例(つばめ)】

①つばめ姿勢の静止をどれくらいの長さできるか挑戦(3・5・10秒)

②つばめ姿勢から脚を正座のように縮めて

③自転車こぎやバタ足でバランスをとれるか

④つばめ姿勢のまま横に移動する

⑤2人組で足じゃんけん

【逆さ感覚スリーアップの例(ぶたの丸焼き)】

①静止を3・5・10秒

②片手、片足を離して

③2人で手でじゃんけん

【振り感覚スリーアップの例(つばめ振り)】

①つばめ姿勢から脚を前後に振る

②振りの回数を3・5・10回

③つばめ振りから後方へジャンプ

【回転感覚スリーアップの例(足抜き回り)】

①3回連続を速く

②10秒で何回できるか競争

 

ほかにも【だんごむし】【布団干し】【こうもり】などなどなど、10種目以上の運動が紹介されています。鉄棒運動のウォームアップなら、膝の屈伸から始まる準備体操よりも、これらの運動を仲間と一緒に楽しみながら挑戦するほうが技能もモチベーションもアップすること間違いなしですね。

『体育授業「導入10分」の活動アイデア』にはこのほかにも多数の器械運動のスリーアップの実践例が発達段階別に紹介されていますので、ご興味のある先生は是非ご参照ください。次回は、器械運動「マット運動」のスリーアップの実践例をご紹介します。

 

1)池田潤 「楽しい導入! たくさんの経験から基礎感覚づくり!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

 

第39回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*

「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える」

マルティン・ルター(ドイツの神学者、教授、作家、プロテスタント宗教改革者/1483–1546)

 

第38回 体育授業の導入:スリーアップ実践例(1)陸上運動・陸上競技のアイデア(R2.12.1)

先月まで、体育授業の導入をいわゆる準備運動としてウォームアップを目的とするだけでなく、主運動の技能に近づくためのスキルアップや仲間との協働学習につなげるコミュニケーションアップを目的としたスリーアップの提案について、その理論をご紹介してきました。今月からは、その具体的な実践例の数々を『体育授業「導入10分」の活動アイデア』からご紹介したいと思います。今月は陸上運動・陸上競技のスリーアップについてです。

 

●小学校中学年 走・跳の運動(かけっこ・リレー)のスリーアップ実践例

新潟県新潟市立山田小学校の小林治雄先生は、メインの運動となる短距離走やリレーなどの走運動につなげるため、ゲーム化した運動を授業の導入に取り入れる実践例を紹介しています1)。

<ポイント>

①1対1や仲間と協力して運動するゲームにより、遊び感覚で走運動に対する心の抵抗感を軽くする。

②ちょっとしたルールの工夫で、体力差があっても楽しく運動できる。運動負荷を徐々に高めることができる。

③「どうすればもっと速く走ることができるだろう」という主運動の課題について児童が主体的に思考判断するようになる。

★活動1 2人おに(*以下全6例の活動解説は会員限定)

★活動2 コーナーダッシュジャンケン

 

 

ゲーム感覚で、ペアと一緒に、仲間と連帯意識をもって、夢中になって走り回る児童の姿が想像できます。楽しく遊んで学習効果が上がるのは嬉しいですね。小林先生のアイデアを応用して、ほかにもいろいろな走るゲームでスリーアップができそうですね。

 

●中学校 陸上競技(ハードル走)のスリーアップ実践例

東京都町田市立つくし野中学校の高橋いづみ先生は、音楽に乗って様々な動作を行い、ハードルへの恐怖心や苦手意識を取り除きつつ、ハードル走に必要な動きの技能に触れていくという実践例を紹介しています2)。

<ポイント>

①常に4人組で協力し合って活動することで、仲間意識を高め、互いの気づきを大切にする雰囲気を作る。

②ハードルに触れたり、高さを利用したり、倒したりしてハードルに慣れる。

③音楽に合わせて、仲間と手を繋いで、ハードル走のリズム感覚、運動感覚を養う。

★活動1 ハードルストレッチ【ゆっくりテンポの曲】

★活動2 ダイナミックストレッチ【少し速いテンポの曲】

★活動3 ハードルラダー【少し速いテンポの曲】

★活動4 心をつなぐ123ステップ【速いテンポの曲】

高橋先生のハードルの使い方のアイデアは素晴らしいですね。並べ方もいい!(掲載誌でご確認ください)目から鱗の発想の転換で、ぐっとハードルとの心の距離が縮まりそうです。こういう活動だと生徒は、上に跳んだり、下にもぐったり、多様な運動が引き出され、自分たちで考えながら動けそうですね。動きやすい速さの曲を準備して、是非試してみてください。

 

このほかにも『体育授業「導入10分」の活動アイデア』には多数の陸上運動・陸上競技のスリーアップの実践例が発達段階別に紹介されていますので、ご興味のある先生は是非ご参照ください。

次回は、器械運動のスリーアップの実践例をご紹介します。

 

1)小林治雄 「楽しく走る!」「楽しく競う!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

2)高橋いづみ「3歩のリズムをみんなで感じよう!」.『体育授業「導入10分」の活動アイデア』明治図書,2019.

 

第38号担当:K.N.

 

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一方は「これで十分だ」と考えるが、もう一方は「まだ足りないかもしれない」と考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。

松下幸之助(旧:松下電器産業創業者、日本の実業家・発明家・著述家/1894~1989)

 

第37回 準備運動を授業の導入「スリーアップ」にすることで 「主体的・対話的で深い学び」へと導くポイント その2(R2.11.1)

先月はスリーアップを実現するための場づくり(鈴木,2019)ついてご紹介しました。今月はスリーアップ提案者の中村(2019)による教材づくりのポイントをご紹介します。中村は、「学び」とは「自己との対話、他者との対話、事象との対話である」という佐藤学(2012)の提唱する「学びの三位一体」論を基に、「自己との対話」「他者との対話」「内容との対話」の3つの視点からスリーアップの内容と指導(問いかけ)のポイントを挙げています。

 

〇動きながら「自分との対話」をしよう・・・運動を感じ取る身体の感覚も、それをどう知覚するかも、体格や性格のように一人ひとり異なると言う前提に立ち、子どもたちの「わたくしが動く感じ」という主観的な感じ方にきちんと目を向ける。そのために教師は、子どもたちに「どう動く?」「こう動いてみたらどうなるかな?」という問いの…(会員専用)。

〇動きながら「他者との対話」をしよう・・・自分とは違う他者の身体の都合や状況をきちんと受け止めて、その上で一緒に動くにはどうしたらいいのかな、とお互いの動きを調整しあっていくこと、尊重しあっていくことが大切。全員が同じ方向を向いて整列することをやめて…(会員専用)。

〇動きながら「内容との対話」をしよう・・・単元の学習計画を見通して、導入でグループの仲間と「動く感じ」を共有しあっておく「内容」を吟味することが大切。競技スポーツ選手でもなく、ジュニアチームの子どもでもない、授業でその運動に初めて触れる子どもにとっての「運動文化」の導入で…(会員専用)。

 

いよいよ次号から、これらのポイントを活用した各種目での実践例をご紹介します。

 

第37回担当:K.N.

 

<引用文献>

中村なおみ(2019)主体的・対話的で深い学びをつくる!体育授業「導入10分」の活動のアイデア.明治図書出版、pp.16-31.

佐藤学(2012)『学校を改革する―学びの共同体の構想と実践』岩波書店.

 

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落ちて行く 身と知りながら もみぢ葉の 人なつかしく こがれこそすれ

和宮親子内親王(仁孝天皇の第8皇女/1846~1877)

 

 

 

第36回 準備運動を授業の導入「スリーアップ」にすることで 「主体的・対話的で深い学び」へと導くポイント(R2.10.1)

先月は準備運動を「スリーアップ(中村,2019)」にする提案についてご紹介しました。今月はその実践例をご紹介すると予告しましたが、その前に、「主体的・対話的で深い学び」の導入としての「スリーアップ」の基本となるポイントについてご紹介します。

 

体育の準備運動は何のために行うのでしょうか?

学生に聞くと一様に「体を温め、関節可動域を広げて運動しやすい体にするため」「怪我を予防するため」といった答えが返ってきます。そして我々教師は、授業の安全確保の手段として「安心」のために、安全を配慮していたという「アリバイ」のために準備運動を行わせているのではないでしょうか。

しかし、休み時間に教室から飛び出して遊ぶ子どもたちは準備運動などせずにすぐに運動を始めますが(会員専用)。私たち成人と違って子どもたち、特に小中学生はまだ体が柔らかくて軽いので「怪我予防」のための準備運動は必要ないのではないでしょうか。だとしたら、授業の(会員専用)。そこで「スリーアップ(ウォームアップ、コミュニケーションアップ、スキルアップ)」が有効と考えます。

 

「スリーアップ」の考え方に賛同した鈴木(2019)は、体育の1時間の授業を「準備運動→主運動→整理運動」の流れで考えるのではなく(会員専用)。また、新学習指導要領の改訂で重視されている能力は、コミュニケーション力や創造力、問題解決能力といった非定型的なソフトスキルであるのに対し、伝統的な定型の準備運動は知識、ハードスキルであるとも述べています。「言われるままにやる」定型の準備運動は思考判断を停止させ、主体的な学びにブレーキをかけているかもしれませんね。

鈴木(2019)は、生涯スポーツへとつながる運動の「楽しさ」や「喜び」を中核に据えた体育を実現するためには(会員専用)して、以下のように導入のポイントを整理しています。

〇授業開始後、すぐにスタート・・・(会員専用)

〇運動感覚を大切に・・・(会員専用)

〇音楽や音を利用・・・(会員専用)

〇心と体を一体に・・・(会員専用)

〇子どもが意思決定できる・・・(会員専用)

 

次号は、スリーアップ提案者の中村による「対話的な学びの考え方」について、具体的にご紹介します。

 

第36回担当:K.N

 

<引用文献>

中村なおみ(2019)主体的・対話的で深い学びをつくる!体育授業「導入10分」の活動のアイデア.明治図書出版、pp.16-31.

鈴木直樹(2019)主体的・対話的で深い学びをつくる!体育授業「導入10分」の活動のアイデア.明治図書出版、pp.32-37,44-47.

 

 

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他人のものさし

自分のものさし

それぞれ寸法がちがうんだな 

(相田みつお:日本の詩人・書家/1924〜1991)

 

第35回「準備運動を「スリーアップ」にしよう!」(R2.9.1)

先月まで共同の学びについて継続的にお届けして参りましたが、今月からの数回は、少し雰囲気を変えて「体育授業に活かせる導入」のアイディアをシリーズでご紹介していきます。今月はまず、教材が発案された背景とねらいについて概要をご説明します。

 

皆さんは体育授業のはじめの準備運動で何をされていますか?

大学生を対象とした中学高校の準備運動の実態調査の結果、どの領域・種目でも同じ内容を実施しているという回答が65%を占めていた(中村,2016)とのことです。さらに、「屈伸・伸脚等の体操を号令で行う」が80%程度、「一斉に整列して実施する」が70%程度、「体育係が号令をかけて一斉に整列して実施する」が60%程度であったことを報告しています。これらの結果から、「整列して体育係が前に出て、膝の屈伸から始まる決められた体操を、体育係が1,2,3,4と号令をかけ、全員で5,6,7.8と呼応する形で行う」という定型化した準備運動が多くの現場で実施されている実態が明らかになりました。

この定型化した「体育係1234、全員5678」の準備運動では、体育係を前に出すことで…(会員専用)。

 

一方、ダンスの授業づくりでは、主体的、探究的に学ぶ場を生みだすために「準備運動」も心身のほぐしを重視した「ダンスウォームアップ」として研究されてきています。中村は、このダンスウォームアップの考え方を基に、準備運動を主体的・対話的・協働的な学びに向かう…(会員専用)。

「スリーアップ」の考え方は以下の3点です。

①ウォームアップ(自分との対話):会員専用

②コミュニケーションアップ(他者との対話):会員専用

③スキルアップ(内容との対話): 

「スリーアップ」を取り入れることで、どのような効果があるのでしょうか。

次号から、多様な学校現場、多様な種目での「スリーアップ」の実践例を紹介していきます。

 

第35回担当:K.N.

 

<文献>

中村なおみ・大塚隆・君和田雅子・中塚義実・天利公一・宮本乙女(2016)体育授業における「準備運動」を再考し、「主体的な学びへ向かう導入へと変えていく試み―ウォームアップからスリーアップへ、自立・協働・創造に向けた主体的な学びとしての導入10分間へ―.2016年度笹川スポーツ研究助成報告書.

 

 

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「昨日の思想によって子供を縛るのは教育ではなく訓練である。 明日の思想によって子供を縛るのもまた教育ではなくて訓練である。 教育は訓練ではない。創造である。」(野村芳兵衛:昭和初期の教育者/1896〜1986)

 

第34回「体育科における学びの共同体とは(4)~「聴き合い」としての学び〜」(R2.8.1)

今月も引き続き同じ書籍から、体育における「聴き合い」としての学びについて着目します。話し合いの“話し”の意味を、“相手が聞いていようが聞くまいが関係なく話す”ことではなく、「語ること−聴くこと」の双方が共存する(相互的関係となる)場面としての「聴き合い」として捉え、それをどのようにデザインすれば良いのかについて考えていきます。今回は梅雨明け特別号として、全文をお届けします。

 

これには、二つの視点があります。

一つ目に「運動の中心的な面白さへと向かうペア学習を組織する」こと。

二つ目に「原則として技能が異なる者同士でペアを組む」こと。

 

では、一つ目から、具体的に見ていきましょう。一つ目の例として、リレー、ハードル走、サッカーの「中心的な面白さ」について取り上げます。(○以降が「中心的な面白さ」)

○リレー   ×バトンをつなぐこと→○前走者のスピードをつなぐこと 

○ハードル走 ×障害物を飛び越しながら走ること→○リズミカルに走り越えること

○サッカー  ×点取り合戦である→○(フィールド内の)陣取り合戦である

岡野(2019)は、これらのように捉えて学びを引き出すことで、「協力学習(cooperative learning)」ではなく、文化的価値を共有しようとする「協同的な学び(collaborative learning)になると言及しています。

 

二つ目の異質なペア活動でねらうことは、「問題(擦れ違い)」を発生させることにあり、その問題を「共有(擦り合わせ)」させることにあると言います。換言すると、かかわることに意味があるのではなく、“かかわることによって生じるズレから意味が生まれる(ズレから学ぶ)”ということです。技能が低い児童は技能の高い児童の文化的価値の見方や感じ方を「聴くこと」によって文化的価値へと誘ってもらい、技能が高い児童は技能の低い児童のつまずきを「聴くこと」によって自らが持つ文化的価値のわかり直しを図るという相互的関係を目指します。

 

今日は、概念的な内容となりました。今後も、その時々で実践例も織り交ぜながら、体育科における学びについて追求していきたいと思います。日頃の実践の参考にされてください。

 

<引用>

岡野昇・佐藤学編著(2019)体育における「学びの共同体」の実践と探求.大修館書店.pp. 180-199

 

第34回担当:A.N.

 

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「keep your face to the sunshine and you cannot see the shadow」

夏に咲く大輪の向日葵のように…「顔をいつも太陽の方にむけていて。影なんて見ていることはないわ」

Helen Adams Keller(ヘレンケラー:アメリカ合衆国の教育家/ 1880〜1968)

 

第33回「体育科における学びの共同体とは(3)~児童・生徒の学びを支える教師の位置取り〜」(R2.7.1)

今月は先月に引き続き具体的な実践を取り上げます。今月は、小学校6年生ネット型(ソフトバレーボール)の実践です。今回は教材論ではなく、グループ学習をどのように教師が支えるかといった理論展開となります。

 

ネット型のボール運動は、一般的にネットを介した2チームが「連携による攻撃や守備によって攻防する運動」と考えられています。しかし、この授業のデザインは、ネット型の攻防を「陣地にボールを落とす−自分の陣地にボールを落とさせない」という落下地点の奪い合いと捉えていました。そして、以下の二つの課題(注)を設定しました。

◆課題1:共有の学び【自分の陣地にボールを落とされずにいられるかな】

◆課題2:ジャンプの学び【条件が変わって(人数が減る、陣地が広くなる、ネットが低くなる)も自分の陣地にボールを落とされずにいられるかな】

 

A教諭は、試合の合間に「初めの陣形がラリー中に崩れたとき、どのようにカバーするのか」について考えているあるグループへかかわっていきます。このようないわゆる作戦タイムに教師が介入していくことは多々ありますが、この時、A教諭はどのようにかかわった(位置取りをした)のでしょうか。「○○したら良い」と助言したり誰が何を発言しているかに着目したりするのではなく…(会員専用)。これが、チームを形式的から実質的なものに変えることにつながる手立てになるといいます。

ボール運動でのこのような時間に、重要な手立てがもう一つあります。それは…(会員専用)、自チームの動き方を考えることです。ボール運動の授業では、「Aがここに走ってBがここでパスを受けて…」のように相手を無視した「一方的」な作戦を考えがちです。しかし、そこには常に…(会員専用)、その場に合った対応を即興的に選ぶことが重要になります。

グループ学習における教師の位置取りについて考えてきました。この考え方は、表現運動・ダンスにおけるグループ作品の創作時にも応用が可能ですよね。日頃の実践の参考にされてください。

 

 

<脚注>

学びの機能のデザインとして、次の二つが重視されている(佐藤,2009)。

○「共有の学び」⇒授業の前半に組織し、学習者同士の援助を追求して低学力の子どもの「底上げ」の機能を果たす

○「ジャンプの学び」⇒授業の後半に組織し、高いレベルの追求を協同的に組織して学びの質の向上を図ろうとする

 

<引用>

岡野昇・佐藤学編著(2019)体育における「学びの共同体」の実践と探求.大修館書店. 

佐藤学(2009)ラウンドテーブル5 学びにおける協同(collaboration)の意義−「学びの共同体」の場合−日本教育学会第68回大会p.432

 

第33回担当:A.N.

 

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「Life isn’t about waiting for the storm to pass. It’s about learning how to dance in the rain.

(人生とは嵐が過ぎ去るのを待つことではない。雨の中でどんな風にダンスするかを学ぶことだ。)」

Vivian Green(アメリカのシンガーソングライター/1979〜)

 

第32回「体育科における学びの共同体とは(2)~子どもが自ら発見する力を支える〜」(R2.6.1)

今月からは具体的な実践を取り上げてまいります。今月は、小学校5年生37名陸上運動(リレー)の実践です。

 

リレーと言えば一般的に、数人でチームを組み一定の距離を「バトンをつなぎ」ながらチームとチームが勝敗を競ったり、記録に挑戦したりすることを目指した「競争・達成型のスポーツ」と認識されることが多い(岡野ら,2019)ですが…。この授業では、中心的な面白さを<一定の距離を複数人で「速さをつなぐ」運動>であるととらえ、以下の二つの課題(注)を設定しました。

◆課題1:共有の学び【ペアの基準タイムを縮めることができるかな】*基準タイム=ペアそれぞれの15mの合計タイム

◆課題2:ジャンプの学び【走順を入れ替えてもペアの基準タイムを縮めることができるかな】

そして、課題1・2ともに、「二人で基準タイムを縮めること」を課題として探求活動を行いました。なお単元を通して、12m地点から18m地点の間をテークオーバーゾーンと位置づけています。

 

サトシとチカのペアが登場します。この二人…(会員限定)。その結果…0.7秒も速くなりました。

この時、授業者はどう反応したのでしょうか。

教 師:何か気を付けたの?

サトシ:(会員限定)

そして、

教師「すごいな、前のやり方で走ったんや」

サトシは自信ありげな表情を見せた−。(登場人物は全て仮名)

 

さあ、この場面。もし教師が「テイクオーバーゾーンでは前の人のスピードを落とさずにリードしながらバトンをもらいましょう」と伝えていたらどうでしょうか。また、(会員限定)と答えさせるのもこれに同じです。こういったアプローチでは、きっとサトシとチカの試行錯誤や二人にとっての「必要感のある学び」は起こらなかったのではないでしょうか。

 

その運動の中心的な面白さの考え方一つで、授業のあり方が変わります。子どもたちが目を輝かせて、「そうか!」と発見できる材料を授業にちりばめていきたいですね。来月も、実践の続きをご紹介します。日頃の実践の参考にされてください。

 

 

<脚注>

学びの機能のデザインとして、次の二つが重視されている(佐藤,2009)。

○「共有の学び」⇒授業の前半に組織し、学習者同士の援助を追求して低学力の子どもの「底上げ」の機能を果たす

○「ジャンプの学び」⇒授業の後半に組織し、高いレベルの追求を協同的に組織して学びの質の向上を図ろうとする

 

<引用>

岡野昇・佐藤学編著(2019)体育における「学びの共同体」の実践と探求.大修館書店. 

佐藤学(2009)ラウンドテーブル5 学びにおける協同(collaboration)の意義−「学びの共同体」の場合−日本教育学会第68回大会p.432

 

第32回担当:A.N.

 

 

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「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ やがて大きな花が咲く」

高橋尚子(日本の元陸上競技選手/1972年5月6日〜)

 

第31回 「体育科における学びの共同体とは(1)~なぜかかわりが必要なのか〜」(R2.5.1)

今月から新しい書籍による様々な理論や実践をご紹介してまいります。テーマは引き続き“体育科におけるかかわり”ではありますが、様々な著者の考え方から“対話的な学び”を捉えると視野も広がるのではないでしょうか。

 

ところで皆さん、なぜ体育授業で“かかわり”が重要なのかわかりますか?著書の中で、端的に表現していた文章(意訳)をご紹介します。

 

「階段を昇ったり布団を上げたりするのも運動。このとき私たちは楽しかったり面白かったりするだろうか?(中略)ところが…(会員専用)。(松田,2001)」

 

心理学で、ヒトは楽しいことやおもしろいことにはワクワクして、自分から進んでそれに取り組むと言われます(脳科学ならドーパミンの増加による現象でしょうか…)。これは、体育でいう所の(会員専用)。一人で学ぶより格段に学習の“おもしろみ”が深まるのではないでしょうか。

 

本号は、“かかわり”の土台となる考え方を取り上げました。次号は、同じ書籍から、具体的な実践例を紹介する予定です。日々の実践にお役立て下さい。

 

学校の再開が依然として不透明な状況で、心配なニュースが全国を駆け回っております。少しでも前向きな気持ちになれるよう、空を見上げる日々です。会員の皆様におかれましては、どうぞくれぐれもご自愛下さい。

 

<引用>

岡野昇・佐藤学編著(2019)体育における「学びの共同体」の実践と探求.大修館書店. 

松田恵示(2001)「かかわり」を大切にした新しい体育授業.松田恵示・山本俊彦編.かかわりを大切にした小学校体育の365日.教育出版

 

第31回担当:A.N.

 

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You’ll never find a rainbow if you’re looking down. (下を向いていたら、虹を見つけることはできないよ。)

Charlie Chaplin(チャーリー・チャップリン)(英国の俳優、映画監督、コメディアン、脚本家 / 1889~1977) 

 

第30回 「体育科実技におけるグループ学習のコツ(5)~技能差を越えるベールボース型の実践〜」(R2.4.1)

先月は、体育科実技(表現運動)におけるグループ学習のシリーズで、身体的共振が生まれる表現運動の実践をご紹介しました。今月も、同じ書籍からベースボール型の実践をご紹介したいと思います。

 

小学校五年生で、「教える」ことによる学びをより効果的に引き出す実践です。

ボール運動の中でも、ベースボール型は「モノをモノで扱う」という点で小学校の体育においては最もスキル的な難しさを有している内容の一つです(梅澤,2018)。そして、種目特有のルールの難しさ、ボールの小ささ、打球の速さなどから技能の低い児童は恐怖心を抱く一方、少年野球に親しむ児童もいて、学習者のレディネス格差が非常に大きいのが特徴とされます。こういった児童たちが、互いにかかわり合いながら学ぶためにはどうすればよいのでしょうか。

 

以下に具体的なアイディアをご紹介します。

○学習者の走力と投力、ボールの跳び具体などを鑑み、個別に塁間の距離を決める

→ベースボール型の面白さの一つは、ベースを巡る攻防。攻撃では一つでも先に得点する、守備では一つでも進塁を防ぐ面白さがあります。ボールとランナーのどちらが速いかを競う鬼ごっことも言えるでしょう。この特性を味わえるために、児童たちにアウトとセーフのギリギリの面白さを実現させます。塁間の距離は一様でなくてもよいという、斬新なアイディアです。

○バッティング練習はネットに向かって行う

→ボールを拾いに行く無駄な時間をなくす工夫。チームのメンバー同士隣で教え合うこと、つまり近い場所での教え合いにより、教える側も一緒に「からだ」が動いてしまう身体的共振も観られたと梅澤(2018)は述べています。ネットがなければ壁でも良いでしょう。無駄なマネジメント時間も削減できますね。

○チーム内ゲームを単元前半に設ける

→「教え」という行為は、自身の「学び」になり、知識の定着にも重要です。チームとしてのレベルアップという互恵性の存在が、チーム内での学び合いには必要です(梅澤,2018)。そうすることにより、真正なゲーム場面での学び合いが誘発できます。

 

次号は、違う書籍から実践例を紹介する予定です。日々の実践にお役立て下さい。

 

学校の再開が不透明な状況で、心配なニュースが全国を駆け回っております。

会員の皆様におかれましては、どうぞくれぐれもご自愛下さい。

 

 

<引用>

梅澤秋久(2018)体育における「学び合い」の理論と実践.大修館書店.pp.110−117

 

第三十回担当:A.N.

 

 

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「Where flowers bloom so does hope.」(花が咲くところには希望も咲く)

レディ・バード・ジョンソン(アメリカ合衆国第36代大統領リンドン・ジョンソンの妻/1912~2007)

第二十九回 「体育科実技におけるグループ学習のコツ(4)~身体的共振が生まれる表現運動の実践〜」(R2.3.1)

先月は「知識構造型ジグソー法」についてご紹介しましたが、今月は「身体的共振が生まれる表現運動の実践」について取り上げたいと思います。

 

ある小学校の一年生の子どもたち三人が、リズムダンスで「真似っこ(ミラー)」を行っていました。そのグループは、おとなしいA子、B男、C美の三人で構成されていました。B男、C美と進み、A子の番になったとき空気が変わります。A子は、恥ずかしそうに左右に歩いたり手を広げたりと真似される役を小さく演じていました。この場面、教師としては「A子ちゃん、もっと大きく踊ろうね!」と大きな声で「教えたくなる」瞬間ですよね。でも、指導者はここで様子を見ました。そうです。グループ内の「学び合い」を見守ったのです。すると…。B男やC美が、A子の動きを大げさに真似して見せたのです。そして、どんどん三人の距離が近くなり…。距離が近くなるほどA子の動きも大きくなって、ついに笑顔がはじけました。

 

この一連の過程で、言葉は交わされていません。でも、梅澤(2018)は「こうやって大きく動いてごらん」「大きく動くと楽しいよ」というB男やC美の言葉が、二人の「からだ」から聴こえた気がしたと述べています。梅澤(2018)は、このように自己と他者の「からだ」が双方向的に応答し合っている状況のことを「身体的共振」と呼んでいます。

言葉ではなく、身体性を伴った「学び合い」を行うのが、これからの時代に求められる体育の授業ではないでしょうか。教師が教える(教え込む)のではなく、子どもたち同士で学び合える、そんな空間作りをしていきたいものです。

 

次号も、同じ書籍から他の実践を紹介する予定です。日々の実践にお役立て下さい。

 

心配なニュースが全国を駆け回っております。会員の皆様におかれましては、どうぞくれぐれもご自愛下さい。

 

<引用>

梅澤秋久(2018)体育における「学び合い」の理論と実践.大修館書店.pp.110−117

 

第二十九回担当:A.N.

 

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「時を待つ心は、春を待つ桜の姿といえよう。静かに春を待つ桜は、一瞬の休みもなく力をたくわえている。たくわえられた力がなければ時が来ても成就しないであろう」

松下幸之助(日本の実業家/1894~1989)

 

第二十八回 「体育科実技におけるグループ学習のコツ(3)~知識構造型ジグソー法の紹介〜」(R2.2.1)

前回は、豊かな教え合いを引き出す「教師の支援」のあり方についてお届けしました。本号は、前号少しご紹介した「知識構造型ジグソー法」の続きをお届けします。
 この知識構造型ジグソー法は、一般的なグループ学習で行われる「教え合い」や「伝え合い」とは違って「生徒一人一人が自分自身の考えを持ち、自分の考えを洗練させるためにグループで話し合い、一人一人が発問(課題)に対して向き合うことのできる手法」(川端,2018)です。川端(2018)は、以下の手法を紹介しています。
○第1段階→一人で発問(課題)の答えを考える
*始めに授業者が、一人では十分な答えが出ない、または答えが出にくい発問(課題)を提示し、生徒は一人で発問(課題)の答えを考える。
○第2段階→エキスパート活動
*各グループに発問(課題)の答えに関する異なる資料が配られ、各資料を基にグループ内で内容を検討し理解を深め、生徒一人一人が各資料のエキスパートとなる。
○第3段階→ジグソー活動
*各資料のエキスパートとなった生徒同士がグループを組み、情報を説明し合い、それぞれが協力して発問(課題)の答えを創り上げる。
○第4段階→クロストーク
*ジグソー活動で創り上げた答えを各グループが発表する。生徒はその答えを聞いて、自分の考えを吟味し、さらに理解を深める。
○第5段階→もう一度、一人で発問(課題)の答えを考え直す
*エキスパート活動やジグソー活動で得た知識や、クロストークで他のグループが発表した答えを聞くことによって、理解が深まっていく。
 この活動では、ある課題を「自分だけが」知っている状況が生じます。そうすることによって、一人一人に“責任”と“真剣に課題に向かう姿勢”が生まれるのです。重要なのは、教師が予め確固たる課題と期待する解答をしっかり用意しておくことです。
 川端(2018)は検証授業で、保健「喫煙と健康2」の中から「我が国と海外の喫煙対策の違いを理解し、新たな喫煙対策を考える」という学習内容を立案・実践しています。そして、「日本の喫煙対策を考えるエキスパートA」と、「世界の対策を考えるエキスパートB」にわけて思考の広がりと深まりを引き出しています。保健の授業でここまでできるのか…と質の高い実践を紹介していますので、興味のある方は以下のurlをご参照下さい。
 次回は、「なぜ、かかわり合いが必要なのか」というテーマで、「学び合い」についての“根本的な理解”を深める資料をお届けする予定です。
<引用>
川端 健司(2018)「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した保健学習―考えてみたくなる発問による単元を通した知識構造型ジグソー法の活用と通して.平成30年度神奈川県立体育センター長期研修研究報告.
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ui6/6/kenkyu/documents/07_1_kawabata_report.pdf#search=%27主体的・対話的で深い学び」+の実現を目指した保健学習%27
第二十八回担当:A.N.
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「百の欠点を無くしている暇があるなら、一つの長所を伸した方がいい」
オーギュスト・ルノアール
(フランスの画家/1841~1919)

 

第二十七回 「体育科実技におけるグループ学習のコツ(2)~豊かな関わり合いを引き出す教師の支援〜」(R2.1.1)

前回は、技能レベルが様々な子どもたちを構成したほうが豊かな教え合いが生まれることを取り上げました。本号は、これらをどのように引き出せばよいのか「教師の支援」のあり方ついてお届けします。

 

岡出(1993)は、協働学習を展開する際に教師が留意すべき点として以下を述べています。

(1)【協働で学習する意味の明確化】→協働学習の効果が上がる

(2)【学習課題の構造化】→技能下位の子どもたちが一方的に教えられる状況を打開できる

(3)【適切な技術情報の提供】→子どもたち相互の教え合いが活性化される

つまり、“なぜ”協働学習を行い“どのような”効果が期待できるかを教師も子どもたちもしっかりと認識し、教師が提供する系統だった技能学習をもとに子どもたちが学習を展開することにより、豊かなかかわり合いが実現するということです。計画せずに「さあ今日は教え合いをしますからお互いにがんばりましょう」では効果が上がらないということですね。

 さてここで、体育科における教え合い学習で近年注目されている「ジグソー」と呼ばれる手法をご紹介したいと思います(東海林ら,2018)。この手法は、以下の3つの段階を経ていきます。

第1段階→各グループでそれぞれの部分の担当(エキスパート)と決定

第2段階→他のグループと同じエキスパートと担当部分を深く理解する(エキスパート活動)

第3段階→各エキスパートは学習した内容を元のチームに持ち帰り、他のメンバーに教える(ジグソー活動)

この第3段階の活動を、グループの人数分繰り返すことで課題全体の理解が可能になります。器械運動であれば、局面別にエキスパートを決めその人が責任を持ってその知識を深め、チームのメンバーに教えます。すべてのエキスパートが自分のチームにそれぞれ教えることにより、技能構造が完結することになります。

この手法はより具体的にお伝えした方がイメージしやすいと思いますので、続きは次回お届けします。

 

<引用>

岡出美則(1993)学習集団形成過程の事例的研究.スポーツ教育学研究(13);pp.1-13.

東海林 沙貴・友添 秀則・吉永 武史(2018)小学校中学年の体育授業におけるジグソーJPEの成果に関する研究.学習者同士の関わり合いを促すためのプレルボールを基にした易しいゲームの授業実践を通して.スポーツ教育学研究.38(1); p. 1-20

 

第二十七回担当:A.N.

 

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「あきらめからは何も生まれない」

古賀稔彦

(1992年バルセロナオリンピック柔道男子71kg級金メダリスト/1967〜)

 

第二十六回 「体育科実技におけるグループ学習のコツ(1)~構成員の決め方と効果〜」(R1.12.1)

前回まで、新学習指導要領における「指導と評価の一体化」について4回シリーズでご紹介してきました。本号から、新しいトピック「グループ学習」について数回に分けてお届けします。

 

学校では、体育に限らず多くの授業場面で「グループ学習」が行われます。考え抜いて決めたグループでも、児童たち同士で化学反応が起こり、喧嘩が起こったりだんまり続きのグループが生まれたり…。なかなか難しいですよね。“対話的で深い学び”が求められるこれからの時代、どのように児童たちを組織化すれば良いのでしょうか。またそれが成功すると、どのような効果が生まれるのでしょうか。岡出(1993)の文献から紹介したいと思います。

 

この研究は、器械運動「ネックスプリング」(単元11時間)で、小学校6年生33名を5つのグループに分けて検証が行われました。相手の感覚を意識した教え合いを成立させ、感情レベルでのトラブルを回避するため、単元開始時に「言葉での説明が相手に伝わらない可能性」と「自己観察と他者観察の結果がずれる可能性」を児童たちに伝えていました。

教え合いの頻度を学習カードから分析した結果、グループ間で大きな差異が認められました。なぜでしょうか。それは…(会員専用)。

岡出は、下位の児童がいないと教え合う意味が生まれない、下位の児童が豊かな教え合いを可能にする鍵になる、と言及しています。これは、技能下位の児童も活躍できること(存在意義)を証明する興味深い示唆です。

なお、この研究では、下位の児童が…(会員専用)。そして、この背景に教師のきめ細やかな支援があったことが示されています。その内容については、次回詳しく取り上げていこうと思います。

 

次回は、「グループ学習のコツ(2)~豊かな関わり合いを引き出す教師の支援~」についてお届けします。

 

<引用>

岡出美則(1993)学習集団形成過程の事例的研究.スポーツ教育学研究(13);pp.1-13.

 

第二十六回担当:A.N.

 

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「There is always light behind the clouds.」(雲の向こうは、いつも青空。)

ルイーザ・メイ・オルコット

(米国の女性小説家 / 1832~1888)

 

第二十五回 「新学習指導要領における指導と評価の一体化(4)「主体的・対話的で深い学び」に向けた体育指導の具体例 その2」(R1.11.1)

前回は、体育における「主体的・対話的な深い学び」を実現する指導(問いかけ)の具体例をご紹介しました。今回は「みんなが楽しめるルールの工夫の例」についてご紹介します。

 

子どもたちの技能や習熟度に合わせて、ボールなどの道具・器具の大きさや形状を変えたり、ゲームのルールを変えたりすることは小学校の先生方は良くなさっていることと思います。

バレーボールを手で…(会員専用)。

学習指導要領(1)にも、簡略化したゲームの例が掲載されています。

ゴール型ではバスケットボールを簡略化したポートボールやハンドボール、サッカーを簡略化したラインサッカーやミニサッカー、ラグビーやアメリカンフットボールを簡略化したタグラグビー、フラッグフットボールなど、ネット型ではバレーボールを簡略化したソフトバレーボールやプレルボールなど、ベースボール型ではソフトボールやTボールなど、いろいろ紹介されていますよね。

そのように誰かが新しく考案した簡略ルールのゲームを取り上げるのもいいですが、それぞれにルールがあって結構複雑です。そこで、もっとシンプルな方法を試してみませんか?

 

C先生は、あまりサッカーに馴染みのない女子高校生の授業で、とても単純なルールから始めました。手を使わずにボールを…(会員専用)。一方でゴールラインは幅が広く、どこでもゴールを決められるので守りが甘ければすぐに得点されます。生徒たちが走り疲れた頃、「何か一つルールを追加するとしたら何を入れようか?」と問いかけると…(会員専用)授業です。その中で生徒同士でお互いの技能を見極め、みんなが楽しめるルール作りを考案させるのです。

 

上記はほんの一例ですが、他にもいろいろと応用できると思います。指導書に頼らず、どうしたら目の前の子どもたちが楽しくゲームできるか、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」につなげられるかを考えていきたいですね。

 

今回で、「指導と評価の一体化」は一区切りとなります。

次回は、「グループ学習のコツ~構成員の決め方と効果」についてお届けします。

 

<引用>

(1)文部科学省(2017)小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説.

 

 

第二十五回担当:K,N.

 

 

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「ルールは盲目的に従うものではなく、自分たちで創るものである」

イヴォン・シュイナード

(1938~アメリカのアウトドアスポーツブランド「パタゴニア」創立者)

 

第二十四回「新学習指導要領における指導と評価の一体化(3)「主体的・対話的で深い学び」に向けた体育指導の具体例 その1」(R1.10.1)

前回は、体育における「主体的・対話的な深い学び」の考え方についてご説明しました。今回は、その指導(問いかけ)の具体例をご紹介します。まずは、≪基本的な技能のポイントを子どもたちが試行錯誤の中から理解し、身に付けさせる問いかけ≫の例を見てみましょう。

 

例1)ハードル走(中学校A先生)

A先生は「ハードルを上手く跳ぶには、踏切がハードルに近いほうがいいでしょうか? それとも遠いほうがいいでしょうか? 皆さんで試してみてください」と問いかけ、生徒たちはグループで実験的に跳び比べ、自分たちなりの答えを導き出すという授業を展開するそうです。教科書的には「遠くから」が正解ですが…(会員専用)そうです。

 

例2)柔道の固め技(中学校B先生)

 柔道などの武道では「技の型」を1つずつ教える授業が一般的ですが、B先生は柔道の固め技について型を全く教えずに、「どうやったら相手をしっかり押さえ込むことができるかな?」と問いかけ、各グループが見つけた案を発表しあい、出てきた案をみんなで試して一番いい方法を考えるという、これまでにない授業をされました1)。子どもたちはワーワー言い合いながらあれこれ試し、最終的に…(会員専用)ですね。

 

 これらの例は、教師の「問いかけ」て「引き出す」指導により、子どもたちが「思考・判断・表現」を深めた結果として「知識・技能」を身に付ける授業です。指導は…(会員専用)で成り立っています。子どもたちの答えが教師の期待通りにならないかもしれませんが、大切なことは…(会員専用)こと。他にも、様々な種目で「主体的・対話的で深い学び」を導く授業例はたくさんあると思います。初めに基本的な運動技術を教えて練習させる、という従来の実技指導の進め方を振り返り、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」を尊重する指導について大胆な発想で工夫してみてはいかがでしょうか。

 

次回は「みんなが楽しめるルールの工夫の例」についてご紹介します。

 

1)宮本乙女(2010)グループの探究的な活動に重点を置いた柔道の授業.お茶の水女子大学附属中学校紀要39集:1-22.

 

第二十四回担当:K.N.

 

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「何をしようと失敗、成功に関わらず、経験そのものが成功の形」

ジャック・マー(1964〜, 中国の起業家でアリババ社の創業者)

 

 

第二十三回 「新学習指導要領における指導と評価の一体化(2)体育における『主体的・対話的で深い学び』とは何か?」(R1.9.1)

今月は、8月8日実施の講習会で取り上げた理論(中村恭子先生)の一部を

改めて取り上げ、体育における「主体的・対話的で深い学び」についてじっくり

考えたいと思います。

 

「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」とは、教師による一

方的な教授形式ではなく、子どもが自ら課題を見つけ、自分で調査したり仲間と

討議したりして答えを導き出すという創造的な学び方のことです。これにより、

自分の力で…(会員専用)と考えられています。

 

では、これを体育に適応させるとどうなるのでしょうか?

授業に「体験学習」や「グループディスカッション」「ディベート」「グループ

ワーク」を取り入れましょうと言うと、座学中心の教科の学習改革の手法という

イメージですよね。体育実技は球技などに代表されるように、運動体験を通して

…(会員専用)と思います。

しかし、運動技術の習得場面においては…(会員専用)を提供し、練習方法を指

定して一律の成果を期待してはいませんでしょうか? 画一的な技能習得型授業

になっていませんか? 梅沢(2018)は、「おそらく将来使わない技の獲得には、

子どもたちが価値を感じにくいであろう。また、大人の設定した階段を上がって

いるだけでは、持続可能な社会の構成員としての資質・能力の育成にはならない

と考えられる」と述べています3)。技ができるようになることは嬉しいことで

すし、様々な動きを習得することで将来何かの役に立つとは思いますが…(会員

専用)高まるような授業づくりをしたいですね。

 

他方で、「思考力・判断力・表現力等の育成」を体育の中で実現しようとする際

に、「表現力」を育成するためには言語活動を多く取り入れなければならないと

して、話し合いを重視し過ぎて運動学習の時間が保障されていない体育の授業も

見かけます。体力を高めるという目標はそのような授業で十分に…(会員専用)、

他教科ではできない体の動きを通した対話が体育ならではの特性ではないでしょ

うか。

 

また、中村(2016)は体育における「対話的」の意味は「他者との対話」「自分

との対話」「内容との対話」であるとし、「スリーアップ」と称して…(会員専

用)を提唱しています。スリーアップでは「言語的な交流は少なく身体の感覚を

通した関わり合いが多くみられた。生徒が視覚・聴覚・触覚という受信器をきち

んと拓き、近い距離にいる仲間をよく観て感じ取って考えることが本当の意味で

は主体的な取り組みとなるのではないか」2)と述べています。

子どもたちが学ぶべき動きは何か、どのように指導するのがよいのか、その答え

も一つではないでしょう。

 

次回は、体育における「指導と評価」の具体を提案したいと思います。

 

<引用参考文献>

1)中村なおみ(2016)「体育授業における『準備運動』を再考し、『主体的な

学び』へ向かう導入へと変えていく試み~ウォームアップからスリーアップへ,

自立・協働・創造に向けた主体的な学びとしての10分間へ」,2016年度笹川スポ

ーツ研究助成報告書.

2)岡田昇・佐藤学(2015)体育における「学びの共同体」の実践と研究,大修

館書店.

3)梅澤秋久(2018)「体育科における課題は何か いまどのような「体育」が

求められているか」,『これからの時代に求められる資質・能力を育成するため

の体育科学習主導の研究』(公財)日本教材文化研究所. 

 

第二十三回担当:K.N.

 

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「もし、我々が、今日の子どもたちを昨日までの子どもたちと同じように教えて

いるなら、それは彼らの未来を奪うことになるだろう。」

ジョン・デューイ(1859~1952,アメリカ合衆国の哲学者)

 

 

 

第二十二回 「新学習指導要領における指導と評価の一体化(1)改訂の趣旨と全教科共通の概念理解」(R1.8.1)

承知のように,平成29年(2017)に小学校・中学校の,平成30年(2018)に高等学校の新学習指導要領の告知がありました。小学校では来年の令和2年度(2020)から,中学校では令和3年度(2021)から,高等学校では令和4年度(2022)から全面実施となります。すでに先行実施をされている学校もあるかと思いますが,授業をどう改革すればいいのかでお悩みの先生も多いのではないでしょうか。
今改訂の一番のポイントは,「学び方改革」を支える「学習指導と学習評価のあり方」にあると考えます。そこで今回からは,新学習指導要領の改訂のポイントをふまえた「指導と評価の一体化」についてシリーズでお届けしたいと思います。

1.新学習指導要領の改訂の経緯 「主体的・対話的で深い学び」の必要性
新学習指導要領解説では改訂の経緯について、「今の子供たちやこれから誕生する子どもたちが,成人して社会で活躍する頃には,(中略)生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術関心等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている。(中略)我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される」とし,「このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構築するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている」3)としています。
つまり,子供たちが自ら考え,新たな創造に向かわせる「主体的・対話的で深い学び」が必要であるということです。その実現に向けて,これまでも実践してきた「課題解決学習」や「グループ学習」,「創造学習」等を継続しながら,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の視点で授業改善(指導と評価)を進めるよう求めているのです。基礎的・基本的な知識・技能の習得は重要ですが,それらを活用する段階においては先回りして教師が答えを教えるのではなく,子供たちなりの発想で解を導き出す過程こそが「生きる力」を育てると考えられています。教師自身も柔軟な発想力をもち,子供たち一人一人の個性を認め,子供たちの活動を見守る力,活動を支援する力,新しい考えを受容する力を備えることが求められていると言えましょう。

2.目指す資質・能力の三つの柱と評価の観点
従前から学校教育において重視すべき要素として「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」「学習意欲の向上や学習習慣の確立」が掲げられてきました(学校教育法第30条2項)。今改訂では,目指す資質・能力の三つの柱を,
●「知識及び技能の習得」
●「思考力・判断力・表現力等の育成」
●「学びに向かう力・人間性等の涵養」
に再整理(改訂学校教育法第30条2項)するとともに,全教科の目標および内容もこの三つの柱に基づき再整理しました。
他方,学習評価とは、児童生徒の学習状況を目標(何ができるようになるか)に照らして振り返り、成果(何が身についたか)を確かめるとともに課題を明らかにし、児童生徒の学習改善につなげるために行うものです。また、児童生徒の評価から授業を見直し、教育内容(何を学ぶか)や学習・指導(どのように学ぶか、どのように支援するか)の改善につなげることをねらいとしています。そこで,「目標に準拠した評価」「指導と評価の一体化」を実質化するために,観点別学習状況の評価の観点もこの三つの柱に準拠して
◆「知識・技能」
◆「思考・判断・表現」
◆「主体的に取り組む態度」
の3観点に統一されました。
このうち,「学びに向かう力,人間性等」については「主体的に学習に取り組む態度」として観点別学習状況の評価を通じて分析的に見取ることができる部分と,個人のよい点や可能性、進歩の状況について評価する「個人内評価等」を通じて見取る部分があることに留意すること1)が示されました。「主体的に学習に取り組む態度」の評価の観点としては,?知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面と,??の粘り強い取組を行う中で,自らの学習を調整しようとする側面,という2つの側面を評価することが求められる2)としています。粘り強く取り組んでいるのに学習成果が伴わないのは自己調整ができていないためなので,教師は調整の仕方について個別に支援して成果につなげる指導が必要になります。
また,学習評価の方針を事前に児童生徒と共有しておくことは,「評価の妥当性・信頼性を高めるとともに,児童生徒に各教科等において身に付けるべき資質・能力の具体的なイメージを持たせる観点からも不可欠であるとともに児童生徒に自らの学習の見通しをもたせ自己の学習の調整を図るきっかけとなる」2)とし,評価の方針等の児童生徒との共有を奨励しています。
学習評価は評定のために行うのではなく,あくまで児童生徒の学習支援と教師の授業改善のためのものです。目標に照らして内容を選び,学習を進めるための教材や方法を工夫し,問いかけて子供たちに考えさせ,そしてリアルタイムに学習状況を見取り,評価(認知,賞賛,励まし,助言等)をフィードバックして,さらなる学習成果につなげられるよう支援することが教師の大事な役割・指導です。まさに,指導と評価は一体のものなのです。

次回から,保健体育やダンス領域における目標・内容の三つの柱、評価の3観点の具体について考えたいと思います。

<文献>
1)中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」2016
2)中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「児童生徒の学習評価のあり方について(報告)」2019
3)文部科学省「中学校学習指導要領・同解説」(平成29年3月告示)2018

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第二十二回担当:K.N.


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「目の前にある現実だけを見て、幸福だとか不幸だとか判断してはいけない。その時は不幸だと思っていたことが、後で考えてみると、より大きな幸福のために必要だったということがよくあるの」
フジコ・ヘミング(日本とヨーロッパ・アメリカで活躍するピアニスト)

 

第二十一回 「空想の表現を支えるイメージの概念と表現」(R1.7.1)

今月は、指導要領に示されている「空想の表現」を支える「イメージ」の概念と表現について取り上げます。小学校解説の中で「表現」は、「自己の心身を解き放して(中略)イメージ(中略)の世界に没入してなりきって踊ることが楽しい運動」と提示されています。特に、低学年の「動物」や中学年の「空想の世界からの題材」 はこの「イメージ」の考え方に近い題材で、中学年では「〇〇探検」(ジャングル、宇宙、海底など)などの未知の想像が広がる題材や、忍者や戦いなどの二人組で対立する動きを含む題材が提示されています。

 

この「イメージ」の捉え方や授業で取り上げる際の留意点について、G・ディモンドシュタイン(1981)の考え方を元に整理していきます。著者は、以下のように述べています。

「どんな場合にも、ダンスにおけるイメージは、(中略)身振りに変えられるべきものではない。ダンスの中のイメージは、動きのために、動的可能性(action potential)を持たせなければならない。」

 

つまり、ダンスは“パントマイム”のような身振り手振りやセリフを用いた“劇”とは異なるということです。また、その題材を…(会員専用)。著者は動物の題材を例に…(会員専用)。そしてこれを通して、子どもたちに動物の身体における運動を“質的な観点から見る方法”を会得させなければならないとしています。どうやらその題材の“感じ”を…(会員専用)。

 

では、学習内容になぜ「イメージ」の題材が含まれるのでしょうか。著者はそれについても言及しており、子どもの考えの中で想像力を生み出すことは…(会員専用)。

 

子どもたちは、観たり聞いたり、触れたり、においをかいだりといった自分の“経験”から「イメージ」の題材を用意します。そのため…(会員専用)。

 

次回は、「新学習指導要領における指導と評価の一体化~全教科共通の概念理解」と題して、8月8日の理論研修で取り上げる内容のダイジェストをお届けします。

 

<参考文献>

G・ディモンドシュタイン著・加藤橘夫監修(1981)子どものためのダンスの授業.ベースボール・マガジン社

 

第二十一回担当:A.N.

 

 

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「心構えは、声のトーン、顔の表情、体の姿勢に影響し、その人が抱くあらゆる感情の性質を左右するとともに、その人が話す言葉の印象を変える。」

アンドリュー・カーネギー(1835~1919)(スコットランド生まれのアメリカの実業家)

 

第二十回 「表現・創作ダンスにおける“力”の指導の仕方」(R1.6.1)

今月は、表現・創作ダンスの指導でよく用いられる三要素のうちの一つ「力」について取り上げます。この要素…筆者は「時間」・「空間」よりも概念が複雑で難解なのではないかと思っています。今回は、この「力」の概念の整理と、指導に用いる際の留意点について取り上げたいと思います。

加藤(1981)は、G・ディモンドシュタインの訳本「子どものためのダンスの授業」の中で、「ダンスの第三の要素としての『力』は、動きの緊張や圧力の量として経験される」と示しています。そして、この「力」の要素こそ<動きと動きのつなぎの動作に特色を与えたり、表現的な運動をするために、身体各部間に感覚的な調和を持たせたりするのに役立つ>としています。
では、指導する際に、どのようなことに留意すれば良いのでしょうか。子どもたちは言語による比喩に反応して「力」に関連した動きを創り出すことができるため、教師は「~のように静かに、重く、軽く」等の例示を用いると効果的です。そして、「力」の概念の根底にある「ダイナミックス」を子どもたちに体感させるために、<交互に>エネルギーの量を変えるように指導します。つまり、重いー軽い、強いー弱い、速いー遅い、などの反対の表現を交互に体感させるのです。そうすることで、子どもたちはより強い緊張、弱い緊張、重力に対する抵抗や沈黙、重さや軽さの感覚としての「力」の特質をより深く経験することができるのです。

ところで、読者の皆様の中には、対面で相手の表現を真似し合う「鏡(ミラー)」を授業で行ったことがある方もいると思います。観る・表現する、これを交互に体験できる「鏡(ミラー)」は優れた下位教材で、筆者もよく用います。「力」の感覚をよりクローズアップするために、G・ディモンドシュタインが紹介している「上半身のみ→全身」と誘う以下の指導方法を試してみてはいかがでしょうか。
<1>上半身のみ
(1)二人組になって顔を向かい合わせる。一人が人間、もう一人が鏡の中の像。
(2)鏡は胸より上だけ。上半身のみを使う。(額縁の中にいるイメージ)
(3)互いに相手を見つめることができるように、いつも鏡の中を観ているようにする。
(4)人間が動き始める。鏡の中の像がついていけるように、一定の「時間」と「空間」を使う。
(5)互いに相手の運動を探求する。
(6)近くの二人組を観る。どちらの人間がリードしているかを見つける。
(7)教師による発問:「二人で一緒にどんな性質の動きを使いましたか?」求める答え:速い、遅い、大きな、小さな、軽い、重いなどの「力」に関する性質。
(8)非常に小さい(遅い)動きをする:鏡の中の相手のために、ゆっくりした動作で動く。
*指導の力点→限られた範囲で行うことで「空間」の感覚が、相手がついてこられるようなテンポで行わせることで「時間」の感覚が身に付く。また、ゆっくりしたテンポはエネルギーのコントロールが要求されるため、より「力」の要素を実感できる。
<2>全身
(1)今度は鏡が頭から床まであります。全身運動をして、お互いに遅れないようにパートナーに注目しなさい。

「鏡(ミラー)」という教材も、こういったことを指導者が意識するだけで深みが生まれますね。
次回は、指導要領に示されている「空想の表現」を支える「イメージの概念と表現」について取り上げます。

<参考文献>
G・ディモンドシュタイン著・加藤橘夫監修(1981)子どものためのダンスの授業.ベースボール・マガジン社

第二十回担当:A.N.

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「想像力とは相手の気持ちを思いやる心です。相手が言葉に出さなくても、表情をみるだけで気持ちがわかる。」
瀬戸内寂聴(1922~)(日本の小説家、天台宗の尼僧)

 

第十九回 「運動会!見応えのある隊形変化のアイディア例(2)」(R1.4.1)

今月は、引き続き運動会の効果的な隊形変化の例をご紹介します。学年全体で魅せるダンス、ぜひ隊形も工夫して見応えのある作品にしたいですね。参考にされてください。

(1)全員が見える配置で迫力も欲しい(大きな一重円からV字隊形)*1
クラスごとのまとまりで運動場の外側のラインに沿って大きな一重円を作り、外を向いて踊ります。子どもたちの活き活きとした表情が見えて感動を呼ぶでしょう。この後、各まとまりの先頭の子どもに、予め決めておいたV字の位置に移動させます。V字は(会員専用)、しっかりと決めておくことが要。全員が揃ったV字で一斉に前進すると…(会員専用)。

(2)作品の開始が印象的になる(トラックからの入場)*2
入場門から行進しながらの入場ではなく、グランドのトラックを使ってダイナミックに一斉に入場します。この時、「ヤー!」や「オー!」などの子どもたちのかけ声で入場するとさらによいでしょう。
○Aパターン:
トラックのロープ上に立ち、合図(太鼓・かけ声)などで(会員専用)。
○Bパターン:
横列の奇数・偶数列別に左右に分かれ、合図で(会員専用)。

いかがでしたか。次回は、「表現・創作ダンスにおける“力”の指導の仕方」についてお届けします。
(バックナンバーは公式HP https://chiba-jyotairen.jimdo.comにて掲載中)

<引用参考文献>
*1:青木由利子(2016)見応え有る隊形変化のアイディア.楽しい体育の授業 特集踊る♪魅せる★運動会「ダンス」セレクション.明治図書.p.31
*2:小川史子(2016)前掲書.p.28

第十九回担当:A.N.

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「自己開発とは、スキルを修得するだけでなく、人間として大きくなることである。」
ピーター・ドラッカー(1909年~2005年)(オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人経営学者)

 

第十八回 「運動会!見応えのある隊形変化のアイディア例」(H31.4.1)

5月が運動会という学校も多いと思いますが、効果的な隊形変化の例をご紹介しますので、一つのアイディアとして参考にして頂ければと思います。

 

(1)見栄えがある(中心の群→X線上)(*1)

一度の移動で作品の見栄えが期待できる隊形。中心に全員が集合した状態からX線上に移動します。中心では個々が見えにくくなる恐れがありますが、移動する際は…(会員専用)が良い所。移動した後のユニゾンでも…(会員専用)。

 

(2)時間差を魅せたい(縦列→横列)(*2)

各縦列から、先頭の子どもがリードして駆け足などで移動します。7~8人の列を作っておけば…(会員専用)。横列になったら両隣で手をつなぎ、波のようにウェービングするのがお薦め。両手を開いてつなぐと…(会員専用)。

 

いかがでしたか。次回も、「隊形変化について」お届けします。

(バックナンバーは公式HP https://chiba-jyotairen.jimdo.comにて掲載中)

 

<引用参考文献>

*1:池田和代(2016)見応え有る隊形変化のアイディア.楽しい体育の授業 特集踊る♪魅せる★運動会「ダンス」セレクション.明治図書.p.29 

*2:福士久子(2016)前掲書.p.30

 

第十八回担当:A.N.

 

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「少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事」

イチロー(1973~)(日本生まれのメジャーリーガー.数々の記録を打ち出した)

 

 

第十七回 表現・ダンス作品の構成法「表現・創作ダンスにおける“時間”の指導の仕方」(H31.3.1)

先月に引き続き、今月は表現・創作ダンスの授業でよく用いられる「時間」の指導の仕方について、G・ディモンドシュタイン(1981)(以下著者)が示す理論を元にお届けします。

 

まず、概念を整理します。「時間」は身体の中では「リズム」として表され、このパターンを理解するためには、「時間」が以下の2要因から生じてくることを認識する必要があります。

(1)音から生み出されるリズム(拍節的パターン・外部リズム)→テンポ、拍、拍子、フレージング 

指導例:「ドラムに合わせて歩きなさい」で感じられるリズム

(2)動きによって生み出されるリズム(リズムパターン・内部リズム)→体内リズムから引き出される、脈動 

指導例:「気楽に部屋の中を歩きなさい」で感じられるリズム

*以上の(1)がリズムダンスに、(2)が表現に通じる概念なのではないでしょうか。

 

著者は、この両方に反応して動く機会を子どもたちに与えることを薦めています。なぜなら…(会員専用)。

では、どのようにリズムを変化させれば良いのでしょうか。

例えば、

<A>子ども自身が定めたテンポを保ち続ける中で(会員専用)。

<B>拍にアクセント(*1)をつけることでリズムに衝撃を与え、ダンスの中のアクセントは、動きを突然に(会員専用)。

 

著者はさらに、「リズムはダンス経験の中で最も重要なものである」とも示しています。そして、子どもがリズム感覚を高めるための学習の限界は、<教師の持つ感受性に影響される>ところが非常に大きく(会員専用)と指摘しています。しかし、そういった教師も(会員専用)ようになるとしています。

 

ダンスの授業において、教師の働きかけがいかに重要なのか、改めて気付かされる提言ですね。今後の授業作りの参考にして下さい。

 

次回は、「力の指導の仕方について」をお届けします。

 

<引用参考文献と注>

G・ディモンドシュタイン著・加藤橘夫監修・穴迫洋子 林信恵訳(1981)子どものためのダンスの授業.ベースボールマガジン社.東京

(*1):拍にはアクセントのあるものとないものがある。アクセントは、一連の流れの中で、特定の拍に与えられたより大きい音、より小さい音としてきかれる強さの性質のこと。

 

第十七回担当:A.N.

 

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「教育者の最高の技術とは、若者に創造的表現と知識の喜びを発見させることです」

アルベルト・アインシュタイン(1879 - 1955)(ドイツ生まれの理論物理学者)

 

第十六回 表現・ダンス作品の構成法「表現・創作ダンスにおける“空間”の指導の仕方」(H31.2.1)

今月は表現・創作ダンスの授業でよく用いられる「空間」*1の指導の仕方についてお届けします。この「空間」を指導する際に何に気を付ければよいのでしょうか。
まず、概念を整理します。「空間」の知覚の仕方には2種類あります*2。
(1)自分の身体のいろいろな部分を使って形作られる空間(内部空間/inside space)
(2)周囲の空間との関係において身体全体が形作る空間(外部空間/external space)
※(1)が*1の示す「身体のくずし」、(2)が「空間のくずし」となるでしょう。

(1)と(2)の両方の空間認知ができて初めて、“空間を使えた表現”となります。指導する際には以下に留意するとよいでしょう。
<1>「内部空間」に関する感覚を育てる
→具体例(会員専用)。
<2>「外部空間」に関する感覚を育てる
→具体例(会員専用)。

「空間」の学習で重要なのは、<1>でどれだけ自分の身体を開拓できるかです。授業では、<1>で以下のような方法を採りしっかりと自分の身体を開拓させてから、<2>の活動に移行させます。なぜなら<2>は、外部空間にある「もの」を見て動くという<運動の関係にうまく反応する>力が必要だからです。
<1>の感覚を研ぎ澄ますためには、以下の3つのレベルを明確に意識させます。
A:高いレベル
具体例(会員専用)
B:中間のレベル
具体例(会員専用)
C:低いレベル
具体例(会員専用)

授業では、「大きく動こう」等と漠然と声かけするのではなく、<1>と<2>、ABCを用いて感覚を研ぎ澄ますようにします。すると、子どもたちはより豊かに空間を創造することができるのです。今後の授業づくりの参考にして下さい。

次回は、「リズム(時間)の指導の仕方について」をお届けします。

<引用参考文献と注>
*1:動きに変化を起こすポイントとして、「空間・身体・リズム・人間関係(4つのくずし)」が示されています。文献:村田芳子編著(2002)最新楽しいリズムダンス・現代的なリズムのダンス.小学館.東京
*2:G・ディモンドシュタイン著・加藤橘夫監修・穴迫洋子 林信恵訳(1981)子どものためのダンスの授業.ベースボールマガジン社.東京
*3:ジャンプとは「跳ぶ」こと
*4:リープとは力をためて大きく「跳ぶ」こと 

第十六回担当:A.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
「百の欠点を無くしている暇があるなら、一つの長所を伸した方がいい」
オーギュスト・ルノアール(1841~1919)(フランスの画家)

 

第十五回 表現・ダンス作品の構成法「シンメトリーとアシンメトリー」(H31.1.1)

今月は表現・ダンス作品の指導に必要不可欠な「シンメトリーとアシンメトリー」についてお届けします。

表現・ダンスの授業をしている時に、身体を「アシンメトリー」に使っている児童・生徒には目がいきます。これは作品創作にも欠かせない要素であり、指導する際の重要な<技能ポイント>です。
ではなぜ、「アシンメトリー」が大事なのでしょうか。対義の「シンメトリー」から考えていくとイメージしやすいです。皆さんが座っている椅子、乗っている自転車、使っているメガネ…これらは皆シンメトリーにできていますよね。私たちに「安定・安心・安全」を与えてくれます。しかし、表現・ダンスのようないわゆる<芸術の世界>に入ると、私たちはこの「シンメトリー」を一気に退屈なものと感じるようになります。なぜなら、そこには元来、刺激・興奮・冒険が隠されているからです。「感覚を刺激するアシンメトリーこそ、舞踊のために大いに利用し、理解しなければならない。(ドリス・ハンフリー,1968)」と言われるほどです。
でも、注意しなければならないのは、ただ「アシンメトリー」を指導すればよいというわけではないことです。相性の良い時間・空間の考え方(以下の★)があることを抑えておきたいです。以下に、それぞれの要素を整理してみます。

○「シンメトリー」
・作品の初めに用いるのには、それなりに意味がある。
・平和的な大団円などを示そうとする場合、連結部にシンメトリーを置くと良い。
・邪魔のない線的な形は、心よく流れて目に対しても抵抗を感じさせない。
・最も心をなだめ、和やかにする図柄。
・継続的な意味をもった対照的なものを表現する。
○「アシンメトリー」
・苦悩を表現するとき、動きは非対称にすると良い。
・エネルギーと活力という観念自体を劇化し強調する時には、対立的な図柄を用いる。
・対立が直角へと近づけば近づくほど、いっそう強い力が案じされる。
・溢れるような喜びや昴揚的な希望など、エネルギーの幸福な表現にも有用である。
★留意点:対立の角度が浅くなればなるほど弱くなる(空間的)。対立的図柄も、ゆっくりとしたゆるやかな表現では、本来の力がほとんど消え失せてしまう(時間的)。強く見せよう、怒りや戦闘的な様子を見せようと動きや対立的図柄(作品構成)を用いても、平行な位置関係(空間的)やゆっくりとした動き(時間的)では説得力がなくなってしまう。

児童・生徒の個々の動きを開拓したいとき、創作作品を工夫したいとき、ぜひ上記の★に留意して「アシンメトリー」を活用してみて下さいね。

次回も引き続き、「表現・ダンス作品の構成法」をお届けします。授業づくりの参考にして下さい。
(バックナンバーは公式HP https://chiba-jyotairen.jimdo.comにて掲載中)

<引用参考文献>
ドリス・ハンフリー著・戸倉ハル・後藤ツヤ共訳(1968)創作ダンスの技法.世界書院.東京

第十五回担当:A.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
「人と比較をして劣っていると言っても、決して恥ずることではない。けれども、去年の自分と今年の自分とを比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことである。」
松下幸之助(実業家)

 

第十四回 歴史を紐解く―外国のフォークダンスが踊られるようになった背景(4)(H30.12.1)

シリーズ最終回は、日本で良く知られている「マイム・マイム」の普及の経緯と踊り方の変遷についてご紹介します。

「マイム・マイム」も「オクラホマ・ミキサー」と同様,戦後GHQが日本に紹介した踊りで,文部省やYMCAなどが普及に力を入れたと言われています。国内の団体では1956年に発足した社団法人日本フォークダンス連盟が普及の中核を担ってきたと考えられます。その踊り方は1951年に…(会員専用)。

しかし,現地の踊りは日本で踊られている曲の速さと異なります。すなわち,日本フォークダンス連盟等が出している国内CDの曲(*1)のような歩く速さ(120bpm)のテンポではなく、駈足のテンポ(140~160bpm)で勇壮な男性の歌声に合わせて踊られているのです。つまり、アメリカ経由のマイム・マイムと現地の踊りは少し違うのです。教えるのが難しいチェーケシア・ステップ…(会員専用)も、現地の踊り方(*2)では普通の…(会員専用)、他国を回って変形して伝えられていたんですね。曲のピッチ(テンポ)を速くできる再生装置をお持ちの先生は現地の踊り方を是非お試しください。

ところで「マイム・マイム」はイスラエルのユダヤ人の踊りで,不毛の砂漠地帯に淡水湖から水を引いて農地を開拓したギブツ(集産主義的協同組合)(*3)の人々が水源発見の喜びを歌い踊ったものと言われています。ユダヤ人の差別と迫害の歴史は数千年に及び,宗教的・人種的・政治的な様々な背景があります。差別や迫害に屈せず,自分たちのアイデンティティを愛し,結束を高めるために踊った「マイム・マイム」の…(会員専用)。
次回は、ダンス作品の構成法(舞台構成)について取り上げます。


参考文献・出典:
*1:マイム・マイム:決定盤 これがフォーク・ダンス ~マイム・マイム,日本コロンビア
*2:マイムマイムの正しい踊り方 Mayim Mayim teach and dance YouTube 
 https://courrier.jp/news/archives/103956/
*3:キブツ:『Wikipedia』https://ja.wikipedia.org/wiki/

第十四回担当:K.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
The only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking. Don’t settle.
すばらしい仕事をするたった一つの方法は、自分のやっていることを好きになること。まだそれを見つけていないのなら、探し続けなさい。安住してはいけない。
Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)(1955~2011)アメリカ合衆国の実業家・技術者・作家・教育者

 

第十三回 「歴史を紐解く―外国のフォークダンスが踊られるようになった背景(3)」(H30.11.1)

本号では、現在、外国のフォークダンスとして例示されている「オクラホマ・ミクサー」が踊られるようになった目的と背景について紐解いていきます。

 

第2次世界大戦後に遡ります。GHQの占領政策により、教育内容の全面改訂が求められました。日本の軍国主義の担い手であった「体育」が、GHQの標的になったことは想像に難くありませんね。昭和22年の学校体育指導要綱(文部省,1947)では…(以下会員専用)。

一方で、植民地時代にヨーロッパ諸国がこぞって入植した多民族国家アメリカでは、互いの文化を理解し合い、民主主義を浸透させるために各国のダンスを奨励して国家統一の成果をあげてきました。GHQと文部省はそれを参考に、フォークダンスを【日本社会に民主主義を広める道具として普及に努めた】と言われます(*1)。いずれにせよ、戦後GHQから紹介された曲目は、当時のアメリカで民族交流のために踊られていた諸外国伝来の、あるいはアメリカで作られたフォークダンスだったのです。

さて、「オクラホマ・ミキサー」のオクラホマとは地名やそこに住んでいたネイティブアメリカンとは関係ないようです。このダンスの男女の組み方であるバルソビアナ・ポジションはポーランドの首都ワルシャワが語源でポーランド発祥の踊りという説、また…(以下会員専用)。

次の最終号は、「マイムマイム」について紐解いていきます。

 

*1:他に「男女平等の理念を教えるため」「戦後の疲弊した国民に娯楽を与えるため」という説もある。

 

参考文献:

松本千代栄・安村清美(1983)大正・昭和初期の舞踊教育―「遊戯」から「ダンス」へ―.舞踊学6,

文部省(1981)学制百年史 資料編.帝国地方行政学会.

庄内拓郎(2011.9.29)「オクラホマ・ミキサー」 のミステリーを巡る冒険.庄内拓郎の知のヴァリトゥード,http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2011/09/twitt.html

Yahoo知恵袋(2009.7.19)オクラホマ・ミキサーとオクラホマ州って関連性ありますか?,

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1428397354

 

第十三回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*

嫌な話になったとしても、顔だけは笑うようにしているのよ。井戸のポンプでも、動かしていれば、そのうち水が出てくるでしょう。同じように、面白くなくても、にっこり笑っていると、だんだん嬉しい感情が湧いてくる。

樹木希林(1943-2018)日本の女優

 

第十二回 「歴史を紐解く―外国のフォークダンスが踊られるようになった背景(2)」(H30.10.1)

今回は、シリーズ第二回、明治時代に女学校で踊られていた具体的なダンスの種類等について紐解いていきます。

第一回では、明治時代が欧米の文明開化の習得が目標だったことを取り上げましたが、同20年代にはフランスやドイツの体操とともにダンスが多数紹介されました。「カドリール」(*1)や「コチロン」など宮廷舞踊の流れを汲んだSquare dance(スクエア・ダンス)(*2)や、「タンツライゲン」「スケーティングダンス」など8呼間を基本とした動きのフレーズを繰り返すフォークダンス系のCircle danceやRound danceが取り入れられるようになりました。

また、明治36年(1903)には井口阿くり(*3)が…(続きは会員専用)。

★次号では現在学校で踊られている外国のフォークダンスの背景について紐解いていきます。

 

*1:https://www.youtube.com/watch?v=6TD9DV7qjEA

*2:Square dance歩行動作を基本とする隊形変化中心のダンス

*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/井口阿くり

 

第十二回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*

最大のピンチの後には、必ず最高のチャンスが来る

東野圭吾(1958~)日本生まれの小説家

 

第十一回 「歴史を紐解く―外国のフォークダンスが踊られるようになった背景(1)」(H30.9.1)

皆さん、NHK大河ドラマ『せごどん』を観ていらっしゃいますか?今回のテーマにはこの世界観がぴったりです。

嘉永6年(1853)の黒船来航で開国を迫られた幕府は、権威を失墜させ明治維新へと発展しました。明治政府にとって一番の課題は、欧米諸国に負けないように近代化を進めて経済力、軍事力を強化する「富国強兵」。「体育」はまさにこの「富国強兵」の役割を担って始まりました。当時の兵役の担い手は男子でしたから、子どもや女子の体育とは区別されました。明治14年(1881)の中学校教則で、男子に普通体操・兵式体操・教練・遊戯(*1)が課せられていました。また同年の小学校教則大綱(抄)で「遊戯(表現)」が初等科1、2年生に配置、明治28年(1895)の高等女学校規定では、普通体操・行進遊戯・唱歌遊戯(*2)が課せられました。これらをみてわかるように、日本の学校体育は…(続きは会員専用)。

日本の近代教育は欧米の文明文化の習得が目標であり、体育においても欧米の運動文化が導入されました。明治16年(1883)には舞踏会が開かれ、森有礼による…(続きは会員専用)。現在のフォークダンスとは、目的が大きく異なるのがわかりますね。

★次回は、当時踊られた具体的なダンスの種類等について紐解いていきます。

 

*1:普通体操とは徒手体操、兵式体操や教練とは軍隊式の集団訓練、遊戯とは鬼ごっこや徒競走、ボールゲームなどのこと。

*2:行進遊戯とは現在のフォークダンス、唱歌遊戯とは歌詞に当てぶりを振付けたダンス既成作品のこと。

 

参考文献:

松本千代栄・香山知子(1981a)明治期の舞踏的遊戯―その精神と技術の様相―.舞踊学4、1-9.

文部省(1981)学制百年史 資料編.帝国地方行政学会.

大塚正美(2011)体育の歴史と役割.城西国際大学紀要 19(1)、 137-145.

 

第十一回担当:K.N.

 

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*

学べば学ぶほど、自分が何も知らなかった事に気づく、気づけば気づくほどまた学びたくなる。

アルベルト・アインシュタイン(1879-1955)ドイツ生まれの理論物理学者

 

第十回 「児童・生徒の思考力を高める“発問のコツ”」(H30.8.1)

今回は授業でよく用いられる「発問」について迫ってみたいと思います。毎日の授業で子どもたちに問いかけるこの「発問」、実はとても奥が深い教授技術なのです。

「発問」は、全部で4種類あります。(具体的な教師の問いかけ「実例」は会員専用)

(1)回顧的発問 記憶レベルの回答を要求する発問「実例」

(2)分散的発問 未知の題材についての解決を要求する発問「実例」

(3)集中的発問 既知の題材の分析と統合を要求する発問「実例」

(4)価値的発問 選択、態度、意見の用言を要求する発問「実例」

これらを授業中で考えると…(続きは会員専用)。表現運動・ダンスの授業では、ぜひ、分散的発問を活用し、想像力を刺激したいものです。子どもたちとのやりとりの質が変わってくるかもしれませんね。

 

★次回は、「歴史を紐解く-外国のフォークダンスが踊られるようになった背景」をテーマにお届けします。

 

第十回担当:A.N.

 

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*

「教育の流れ」には、石ころがいっぱいころがっており、至る所でさざ波が立ち、水しぶきがあがっている。水面には、花が映るかと思えば、茂みが映り、ふわふわと空に浮かぶ雲も映し出される。

ヘレン・ケラー(1880〜1968)アメリカ合衆国の教育家、社会福祉活動家、著作家

 

第九回 「表現・創作ダンスの授業で使えるお薦めの音源」(H30 7.1)

表現・創作ダンスの作品創りに欠かせない音源について取り上げます。表現・創作ダンスにおいて、音源は作品のテーマ(題材)を支える【BGMとしての役割】となります。過去に実施した連盟の実技講習会や授業等で使用したお薦めの音源の一部を以下にご紹介します。選曲の留意点もご参照下さい。

<お薦め音源>*『』は曲名、「」はアルバム名
◎小学校:
・探検系→『大草原』 劇団四季「ライオンキング」サウンドトラック
・忍者系→(続きは会員専用)
・深海系→(続きは会員専用)
◎中高:
・シリアス系→『呪われた力』 久石譲「もののけ姫」サウンドトラック
・流れる動き系→(続きは会員専用)
(以上全曲 iTunesストアーで視聴可能。曲名で検索して下さい。)

<選曲の留意点>
ビートの強い曲は「いち・に・さん・し」とカウントを取って踊ってしまい、イントロが長い曲も集中力が弱まり題材に対する「なりきり」が薄くなってしまいますので注意が必要です。さらに、特徴が強すぎる曲は…(続きは会員専用)。

連盟で8月に開催する実技講習会では、他にも授業で活用できる音源を多く紹介します。ぜひ参考にして頂き、9月からの授業にお役立て頂ければと思います。詳細は連盟HP(https://chiba-jyotairen.jimdo.com)をご参照下さい。

★次回は、「児童・生徒の思考力を高める“発問のコツ”」をテーマにお届けします。

第九回担当:A.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
自分と向き合う方法は、主に2つある。ひとつは孤独な時間を作り、ひとりでじっくりと考えを深めていくこと。そしてもうひとつは、尊敬できる人や仲間に会い、話をすることで自分の立ち位置を客観的に見ること。
長谷部 誠(日本代表サッカー選手・FIFAワールドカップ3大会連続キャプテンを務める)

 

第八回 「リズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業で使う曲選びのコツ」(H.30.6.1)

リズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業で使いやすい定番曲は確かにありますが、今は新しい楽曲が次々と発表され流行は常に変化しています。そこで今月は、先生方が向き合っている目の前の子どもたちに合った「リズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業で使う曲選びのコツ」についてご紹介します。

【リズムと動きの関係】
現代的なリズムの曲は、1小節が8拍でできている8ビートが主流です。リズムの捉え方を学習するためには…(*続きは連盟HPに掲載)

【気分アップのために】
楽しい雰囲気を盛り上げるためには、曲調や歌詞も重要です。心も弾むような明るく楽しい曲調や歌詞の曲を選ぶとよいでしょう。ロックやヒップホップでは重たく暗い感じの曲も多いのですが…(*)

【曲探し、曲入手の方法】
子どもたちへのリサーチが一番。子どもたちに「どんな曲を聴いているの?」と直接訊くのもいいですし、放送部が使っている曲を押さえておくのも有効です。曲名やアーティスト名がわかれば、それを手掛かりに…(*)

【気分アップのお薦め曲】
◎サンバ調:「サンバ・デ・ジャネイロ/Bellini」他
◎ロック調:「ultra soul/B’z」他
◎ヒップホップ調:「ハピネス/AI」他
*会員専用MLでは、お薦めの全曲を紹介しています。

★次回は、「表現・創作ダンスの授業で使えるお薦めの音源」をテーマにお届けします。


第八回担当:K.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
Only those who dare to fail greatly can ever achieve greatly.
訳:大きな失敗を恐れない者だけが、偉大なことを成し遂げる。
John F. Kennedy (ジョン・F・ケネディ)
(米国の第35代大統領/ 1917~1963)

 

第七回 リズムダンス・現代的なリズムのダンスの「発達段階」と「授業で使いやすい楽曲」(H.30.5.1)

好評だった先月に引き続き、今月も全文でお届けします。

今月は、「リズムダンス・現代的なリズムのダンス」における「発達段階」と、「授業で使いやすい楽曲」についてご紹介します。

リズムダンス・現代的なリズムのダンスは、軽快なロックやサンバ(小学校)、ロックやヒップホップ(中学校・高等学校)などの曲の「リズムに乗って全身で踊ること」が学習内容です。ですから、学習の手掛かりとなる曲(リズム)はとても重要です。発達段階や学習のねらいにより【適したリズムや速さ】があります。基本的に曲の1拍毎を捉えて踊る場合、ピッチ(テンポ)が速い曲は軽く弾んで(跳ねて)踊るのに適しており、遅い曲は膝や体幹を曲げたり伸ばしたりして全身で大きく上下動してうねるように弾んで踊るのに適しています。

【発達段階】
小学校低中学年→筋力が未発達でゆっくりした曲に合わせて上下動するのは難しい。駈け足やスキップなど、軽く弾む動きに合うテンポの曲、軽快なロックやサンバが適している。小学生は体が小さいため速い動きが得意。教師が試しに動いて速すぎると思う曲でも乗りこなすことも。
中学校1年生→まだ筋力が十分ではないが体は軽い。軽快なテンポのロックに乗って弾んで踊る動きが適している。歩くテンポのゆっくり目のロックで踊る場合は、1拍毎のビートを捉えてひとつひとつの動きを止めるようにキレ良く踊ることに挑戦するのもよい。
中学校2・3年生→個人差はあるが、やや速めのヒップホップに乗って上下に弾んで踊れるようになる。
高校生→重たいヒップホップのビートに乗って全身で大きく弾んで踊るには体力が必要だが、この頃になるとそれが可能になってくる。

※どの発達段階においても、単元の中では様々なリズムの曲を扱って、毎時の気分を変えてあげるとよい。特に単元初めはサンバに乗って楽しく弾んで踊る導入で、モチベーションアップを図るのがお薦め。

【使いやすい楽曲】
(1)「We Will Rock You / QUEENやBillie Jean / Michael Jacksonなど」→1、3、5、7拍目のビート、強拍がはっきりしている
(2)「火の玉ジャイブ / 東京スカイパラダイス」→シンコペーション(拍子の強弱を逆転させて、2、4、6、8拍目のいずれかを強調する演奏が含まれている
(3)「Beat It / Michael Jackson」→アフタービート(後拍を強調した弱起のリズム)が強めでリズムのメリハリを感じやすい

★次回は、「リズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業で使う曲選びのコツ」をテーマにお届けします。

第七回担当:K.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
The flower that blooms in adversity is the rarest and most beautiful of all.
訳:逆境の中で咲く花は、どの花よりも貴重で美しい。
Walt Disney (ウォルト・ディズニー)
(米国のアニメーター、映画監督、脚本家、エンターテイナー / 1901~1966)

 

第六回「学習カードの意義と効果的なコメント方法」(H30.4.1)

<新年度特別号:全文掲載>

 

我が国の小中学生で、「話す・聞く・読む」ことに比べて「書く」ことが相対的に不十分であり、特に自分の考えを「理由」や「根拠」を明確にして書くことに課題があるという調査結果が公表されました(*1)。最近のSNSの普及で、スマホを介した単文による対話が増えていることも影響しているように思えますが、子どもたちが理論的に「書く」機会を学校現場ではしっかりと保障したいものです。

学校では、多くの「書く」学習があります。国語科はその代表的な例ですが、体育科でも学習カードが小学校では90.9%、中学校では100%使われており(*2)、重要視されていることがわかります。では、なぜ学習カードを書くことが重要なのでしょうか。その意義として、
(1)子どもの立場から→めあての設定と振り返りを繰り返すことで思考の整理が行われる(*2)
(2)教師の立場から→授業時間内に指導・支援しきれなかった児童生徒一人一人の思いや活動の様子を児童生徒の記述から読み取り、次の手だてに活かしていくことができる(*3)
などが挙げられています。

(1)の効果を高めるために、教師はどのように添削すれば良いでしょうか。多忙の中で時間を見付けて日々添削するのはなかなか大変…。でも、「質問する」「提案する」「承認する」「事実をフィードバックする」「できない原因を考えさせる」この5点を意識して学習カードにコメントすると、体育における「できる」「わかる」の実現に近づくことが研究的に明らかになっています(*4)。
学習カードを日々添削する時に、以上の観点を少し意識して線を引いたりコメントをしたりすると、授業での子どもたちの学びがより深いものになるかもしれませんね。

*1:OECDによるPISA調査及び文部科学省による全国学力・学習状況調査
*2:日景奈美・福岡雄二・田村光司・後藤健人(2014)主体的な学習活動を促す体育・保健体育科の授業改善―自己評価活動を生かした学習カード・ノートの活用を通してー川崎市教育センター研究紀要第18号pp.95-110
*3:野田義勝・堤公一・福本敏雄(2012)体育学習における学習カードの効果とその活用法 : 中学校2年保健体育科「器械体操」の授業を通して.佐賀大学教育実践研究29.pp.237-246
*4:佐藤知穂(2012)「わかる」 と「できるJ の統ーを目指した授業づくり -コーチングを活用 した保健体育科の実践ー.山形大学大学院教育実践研究科年報.pp.100-107

★次回は、「リズムダンス・現代的なリズムのダンスの授業で使える!お薦め音源集」をテーマにお届けします。

第六回担当:A.N.

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
私は他の誰かよりうまく踊ろうとはしない。ただ自分自身よりうまく踊ろうとしているだけだ。ミハイル・バリシニコフ(旧ソ連出身のバレエダンサー・振付家・俳優)

 

第五回「ダンス授業におけるリズム太鼓の力」(H30.3.1)

「リズム太鼓」を授業で使ったことがある先生、いらっしゃいませんか?リズム太鼓を使うことの効果、実は研究的に明らかになっているのです。

 

2014年に小学校2年生を対象に実施した研究を紹介します。体育館の自由な空間内で、

A組:スキップ・ケンケン・ケングー(※)等を行っている最中、リズム太鼓を継続的に鳴らし運動のリズムを支援する

B組:運動中にリズムを全く打たない

この2組を

(1)決められた時間の最後まで運動を継続する力

(2)外的なリズム刺激が無くても運動に適した一定のリズムを自身の体で取れる力

この2観点で分析した結果、 会員HP

 

 

第四回「ヒップホップのリズムとノリ」(H30.2.1)

先月号の"ロックのリズムと乗り"に引き続き、今月号はヒップホップのリズムとノリについてお届けします。

 

ヒップホップのリズムとノリ方は、ヒップホップダンサーを参考にすると良さそうです。ヒップホップダンサーは、微妙に音楽のリズムを遅れて取る「遅取り」を好み、その微妙な遅れを含む「大きな体の動きのうねり」でリズムを捉えて踊っています。ノリの良さを表す「グルーヴ(groove)」についてピアニストの小松(2014)は、「確なテンポ(時間)の拍打ち(刻み)の中で微妙にタイミングがずれている打点を含むことに特徴が認められるノリ」と報告しています。どうやらグルーヴとは、実に"微妙で感覚的"なもののようです。

このグルーヴ感をダンスで捉えるために、踊る時は会員HP

 

 

第三回「「リズムに乗って踊る」ってどういうこと?」(H30 .1.1)

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、新年初めは、実は奥が深い…このテーマでお送りします。

「リズムに乗るってどういうことですか?」と、ある先生からきかれました。現代的なリズムのダンスに示されている「全身でリズムに乗って踊る」とは?という疑問です。「例えば8拍子の曲に合わせて、1拍毎にひざを屈伸して上下動すること」などと、音楽のリズムと動きの関係を数字で割り切って説明すると納得されましたが…、実は非常に感覚的な言葉であり、正確に説明することが難しいことに気づきます。

この「音楽のリズムに乗って踊る」とは、会員HP

 

CJT定期便(第3号から会員のみ閲覧可となります)              第二回「日本の踊り“ナンバ”の古今」(H29 .12.1)

 日本には、“ナンバ”という手と足の運び方があります。右手と右足、左手と左足を同時に出す運び方です。指導要領で定められている日本の民踊にも、この“ナンバ”が多く登場します。では、なぜ日本の踊りに多く登場するのでしょうか?そう、それは私たちが農耕民族だからです。畑を耕すときには鍬を持ちます。鍬を振り下ろしたときに、手と足はどうなっていますか?もし手足がクロスしていたら鍬が足に刺さってしまいます。相撲を見てみましょう。横綱が四股(しこ)を踏む時の手と足は…?やはり“ナンバ”で、すり足をするときも同じですね。これは最も体に力を蓄えることができるからなのです。

実は、江戸時代1603年(慶長8 年以降)の浮世絵に登場する人物や、1980年代(昭和55年以降)に流行した日本発祥の “パラパラ”も“ナンバ”。この“パラパラ”は盆踊りと同じで、みんなが同じ方向を向いて同じ足運びと手振りで踊っていました。
このように考えていくと、時代が変わっても私たちの生活様式が日本の踊りと密接に関連していることを実感します。授業で触れていくと、踊りがいかに古い文化を持っていて私たちに身近なものか子どもたちも実感すると思います。
*例:相撲すり足↓
https://www.youtube.com/watch?v=pkPbsPcQidI

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
「誰にでも才能はあります。問われるのはどう才能を伸ばすかです。」
マイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤより(ロシアのバレエダンサー)

 

 

・:*:・・:*:. CJT定期便開通記念 ・:*:・・:*:.(H29 .11.1)   第一回「身体表現って何?」

みなさん、初めまして。
千葉県女子体育連盟から、このたび「CJT定期便」をお届けする運びとなりました。
(講習会等のアンケートにメールアドレスとお名前を頂き、ML入会の許可を頂い
た先生方にお届けしております)

毎月一回、授業や研究に活用できそうな”ひとくちメモ”をお届けしますのでどう
ぞご活用下さい。
この定期便のモットーは「忙しい毎日の隙間時間に読めること」ですので、
お昼休み、出勤途中、帰宅途中、家事の間など…その隙間にどうぞご活用下さい。
(次回から400字程度でお届けしていきます)

さて、記念すべき第一号のテーマは「身体表現って何?」です。
「身体表現」は、小学校の「表現運動」や中高の「ダンス」でなくてはならないものです。
でも、自己表現が苦手な児童・生徒も身近に少なからずいるのではないでしょうか。
劇作家/演出家の鴻上尚史氏はこういいます。
「表情や声、体などを使った『表現』を鍛えることで、魅力的な人間になれる。
表現は技術であり、磨けば自分自身も光るようになる。」
そして同時に、これらを持っている人を真の意味での「教養のある人」と言及しています。

この「表現」という技術を磨く方法は…?
それらが、表現運動・ダンスの授業の中にちりばめられているのです。
表現運動・ダンスの授業は、授業という枠組みを超えて、
私たちの生活や人となりの形成にとっても大切なのですね。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/associe/expression/060502_4th/

さて、欧米では小学校低学年から「演劇」を科目として学びますが、日本にはないですよね。
教科のあり方にもその国の身体表現に対する考え方が垣間見えますが、
国際化が浸透する現在、日本人でも豊かな身体表現ができる人材を育てたいところです。
この身体表現は実はとても身近なやり方で認識・トレーニングが可能なのです。
例:好きな食べ物について二人組(Aさん、Bさん)で話す
(1)Aさんは、好きな食べ物を相手に向かって話す
(2)Bさんは、相づちや笑顔など全く反応を示さずその話をただ聞く
(3)Aさんは、もう一度好きな食べ物を相手に向かって話す
(4)Bさんは、相づちや笑顔など反応を示しながら話を聞く
これを行うと、(2)と(4)の違いに気づくはずです。
そう、(4)は身体表現が伴う会話なのです。
それが豊かなほど、会話が弾むことが確認できます。
HRなどで、ためしに(1)~(4)を実践してみてはいかがでしょうか。
児童・生徒たちが、身体表現がいかに身近であり、対話に必要不可欠なものかを実感してくれるでしょう。
さらに応用的に考えて…先生方も個人面談等でご自分の身体表現を意識してみるといいかもしれません。

*:・゜。*:・゜*:・゜。*今日のひと言*:・゜。*:・゜。*:・゜。*
「身体は言葉にできないことを伝えることができます。ダンスは身体を使った魂の言葉です。」
「Brainy Quote」 Martha Graham(マーサ・グラハム、モダンダンスの開拓者)より